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防災インタビューVol.191

被災後のより良い生活再建のために

放送月:2021年8月
公開月:2021年11月

田村 圭子 氏

新潟大学 危機管理室 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

私の専門は危機管理、災害福祉ですが、社会科学の分野から災害、防災を研究しています。防災を研究している研究者は、大きく分けて3つあります。地震がどうやったら起こるか、雨はいつどのくらい降るかということを研究している理学の分野、地震が大きく揺れた場合は建物はどうなるか、雨がたくさん降って浸水すると家はどのように悪くなってしまうかということを研究する工学分野、そのような中で被災者はどういうふうに過ごしているのか、被災者を助けるために行政などの社会の仕組みはどうあるべきなのかということを研究する人たちが社会科学分野で、私はこの社会科学の分野を研究しています。

私が今、関心を持っているのが、「被災者の生活再建」というテーマです。例えば震災の被災者の方たちは、揺れが起こって大変な目に遭われた後、自分たちの生活を取り戻していくためのゴールまでは、かなり時間がかかると思っています。そのゴールまでの道のりを私たちは「被災者の生活再建」と呼んで、どのようにしていけば良いのかということをテーマに研究を重ねています。

「被災者になる」ということ

地震であっても、大雨であっても被災者になると、まず日常生活が送れなくなってしまいます。危険な状況から、まずは難を避けるために避難をして、その後避難生活が始まります。つまり、今まで暮らしていた家に戻れなくなってしまったり、家に戻れたとしても近所の店がなくなっていたり、電気、水道、ガスが止まってしまって、普段の生活が送れないといったような困難な事態に直面するかと思います。

避難生活が終わり、自分の家を建て直して住み始められればいいのですが、もし無理だということになれば、仮設住宅などでの生活が始まります。その後自分たちの生活を取り戻すために自宅を元通りに、あるいは新しい形に再建をして、自分たちの仕事や学校生活や普段の社会生活を取り戻していくためには、非常に長い道のりが続きます。

例えば、東日本大震災であれば、まだその最後の段階まで到達していない方もたくさんおられるかと思います。災害が大きくなると、自宅の再建まで10年かかるとも言われていますし、規模が小さく局地的な水害などであっても、1カ月~3カ月はかかります。2021年に起こった熱海の土砂災害は皆さん記憶に新しいかと思いますが、再建までの時間は非常に長くなるかと思います。

生活再建への道筋

熱海の土砂災害も非常に厳しい災害でしたので、きっとたくさんの被災者の方たちは、今も家に戻れず、コロナ禍でなかなか厳しい状況の中、行政やボランティアの皆さんの支援を受けて、避難生活を送っておられるのではないかと思います。

避難所生活の後に、元の生活を取り戻すために重要なのは、主体となって災害対応をしていく行政の働きです。行政がどのように生活再建を進めていくのか、その段取りを事前に知っておくことで、先が見えない不安が少し解消されるのではないかと思いますので、その流れをお伝えします。

まず、被災者が避難所に行っている間に、行政は皆さんの生活再建を考えるために、いろいろな準備をしていきます。まず第一に、どのような人たちが、どのくらいの被害に遭われたのかを調べる必要があります。どのくらいの方が被災したかというのは、ニュースなどにも出ていますが、実際に生活支障の出ている被災者は、その数の何倍にもなっていると思います。例えば電気、水道、ガスが止まってしまっている、道路が通れないことによって他の場所に行くことができない、お家に被害が出たというような方たちも大勢いるので、このような被害について行政は、皆さんが住んでいる住宅がどれくらいの被害を受けたのかという調査を始めます。その調査が始まる様子を頭に置いていただくことが必要です。この調査は、目に見えて被災しているお宅よりも、もっと多くの家が被災しているので、全体を調査するには、実はかなりの時間を要します。そこは、根気よく待っていただく必要があります。その調査が終わった後に、罹災証明書が発行されます。この罹災証明書は、生活再建支援のためのパスポートになります。その頃には、生活再建のための相談窓口が出来ていますので、まずこの罹災証明書を生活再建支援の相談窓口に持って行って、相談をしてください。その後この証明書をいろいろな所でお見せいただくことによって、さまざまな生活再建支援が進んでいきますので、まずは罹災証明書を手にしていただくことが生活再建の第一歩となります。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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