1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 災害に強い社会をつくる
  6. 被災後のより良い生活再建のために
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.191

被災後のより良い生活再建のために

放送月:2021年8月
公開月:2021年11月

田村 圭子 氏

新潟大学 危機管理室 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

被災後の行政の調査について

被災をすると行政が皆さま方の自宅を調査することになっています。どのぐらいの建物が、どのぐらいの程度壊れていて、それを支援するためには行政はどんなものを準備すればいいのかということを知るために調査をすることが必要です。被災者の皆さんからすると、避難所暮らしで不自由な暮らしをしているのに、行政はなにをゆっくりと調査をしているのかとお腹立ちになるというのが被災地でよく起こっていることですが、行政の調査には、ある程度時間を許してあげて、丁寧に調査してもらうことが実は被災者のためになることなのです。そのためにも、この調査の内容を皆さんにも知っていただき、行政の皆さんの頑張りに理解を深めていただきたいと思います。そうすることが、結局は自分たちの生活を守ることにもつながります。

まず最初に行うのが、建物被害認定調査というもので、国の機関である内閣府が出している手順と基準に基づいて実施されます。被災市町村の職員が行いますので、皆さんの町が被災をすれば皆さんがお住まいの区市町村の職員の方たちが調査をするということになります。しかしながら、被災地では行政職員の人たちだけでは、その他の仕事もあって大変なので、全国の自治体から応援が来ます。考えもしないような遠くの町からも支援がやって来ますので、非常に心強いと思います。この建物被害認定調査は、非常に複雑で、お住まいの建物が木造建てなのか、コンクリート建てなのかによっても調査のやり方が違いますし、地震の場合、水害の場合もそれぞれやり方が細分化されて、いろいろな決まりがあります。そのことを頭の端に置いていただければと思います。

この調査の全部が同じ哲学に基づいて行われており、1つ目はそのお家に住み続けられるかどうかを客観的に評価します。例えば、お家がペチャンコになってしまっていれば、誰が見ても住み続けられないということは分かりますが、半分壊れたり、少し傾いているというときにはどうしていいか分かりません。この場合も、行政の方たちがいろいろとチェックすることによって、その建物に住み続けられるかどうかをざっくり調査することができるということになります。

次は、お家の何割が被災をしているのかということを調査することになります。例えば水害で床下浸水ならば、お家の1割か2割が被災していることになりますが、床上浸水ということになれば、水の高さが高くなるに従って、やられている割合が高くなるので、その割合を調査していくというのが2番目の調査です。

まずは、その家に住み続けられるかどうか、住み続けられるとして何割やられていて、どのぐらいの支援があればこのお家を元に戻すことができるのかというのを調査するのがこの建物調査の基本的な考え方になります。

外観からの建物被害調査

この建物被害認定調査は、家の外側から被害を調査するものとなっています。被災者から見ると非常に分かりづらく、調査結果も一定の準備が進まないと公開しないことになっているため、その場では、全壊なのか、大規模半壊なのか、半壊なのかということも、被災者には伝えないことになっており、時間がかかるので、いら立つ気持ちも理解できます。家の外側から調査を行う理由については、実際に被災者のお家の中まで入って調査をするとなると、勝手に入ることはできないので、アポを取って調査しなければならなくなり、被災地は混乱しているため、アポがなかなか取れないという実情もあります。外観調査であれば、一気にたくさんの家を調査することができるので、時間を短縮することができます。そのため基本的には外観調査をしていきます。

例えば、外の壁に大きく傷が入っていて、壁の2割に傷が入っているとすると、家の中のありとあらゆる壁に2割の傷が入っていると判断します。実際に家の中に入って調査すると、この壁は0.5、この壁は1割、この壁は1.5というふうに足し合わせていくので、実は2割より低くなることが普通です。そのため、外の壁にある程度の被害が出ていれば、外観調査の方が、実は被災者寄りに被害は重めに出てきます。外観調査はこれまでのいろいろなノウハウによって、外から調査した方が早いということと、外から調査した方が被災者の皆さんの被災程度を見誤らない可能性が高いということで定められているものですので、ぜひこれについてご理解をいただければと思います。

しかしながら、建物の中だけに被害が出ている場合もありますし、調査員もパーフェクトではありませんので、大きな被害を見逃すこともあります。現在は、調査をした所を全部写真に撮っておき、その写真を確認して、もし見ていない所があれば、もう一度見に行くというような形になっているので、心配せずに、行政を信じて調査を任せていただくことが迅速に調査を進めるためには、非常に重要だと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針