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防災インタビューVol.191

被災後のより良い生活再建のために

放送月:2021年8月
公開月:2021年11月

田村 圭子 氏

新潟大学 危機管理室 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

罹災証明書に書かれていること

罹災証明書を見たことがない方も多いかと思いますが、罹災証明書にはまず3つのことが書かれています。1つ目がどこで被災をしたのか、つまり自宅の場所です。それから誰が被災をしたのか、その時にそこで暮らしていた家族のメンバーはどういった人たちなのか。そしていよいよ調査結果のどの程度被災をしたのかという被災程度を判定します。そしてこの3つに対して市町村長の名前で証明書が出されるのが罹災証明書ということになります。

この「どこで被災したか」というのは、自宅ということになりますが、建物がある場所を確定しないといけません。1軒の住宅をお持ちの方でしたら割と簡単なのですが、複数の建物を所有されている方、例えば、自分の家のほかに別の建物として登記されている離れがあり、その他の場所で自分でお店もやっているというような方は3軒のお家があることになります。そうなるとその中でどこが自宅かを特定する必要があります。これは、ちょっと分かりにくいのですが、生活再建支援の対象というのは、1世帯に対してほとんどの時間、特に夜の時間を過ごしている場所を1つ定めて自宅とする、主たる居宅に対する支援ということになりますので、それを被災者に「ここだ」と特定していただく必要があります。また、行政側は「あなたの被災された自宅というのはこれでいいんですね」ということを確認する必要があります。それが「どこで被災をしたか」ということです。

次に、誰が被災をしたかということについてですが、家族の人数は住民基本台帳で分かっているだろうと思われるかもしれませんが、例えば娘は今北海道の大学に行っているが、娘の住民票を移しておらず、自分のところに入っている場合は、実態としては被災していないので、被災者は1人だということを言っていただく必要があります。なぜこんなに面倒なことが必要なのかというと、支援策の中には単身世帯なのか複数で住んでいる世帯なのかによって、支援策が異なる場合があるので特定する必要があるということです。

そして、ようやくどの程度被災をしたかという調査結果を示して、どの程度住宅に被害が及んでいるのかということを判定することになります。判定結果について、行政が半壊と判定しても、自分自身は全壊だと思う場合は、写真を見ながら、調査について確認してもらい、それでも納得がいかない場合は、再調査を依頼することができます。その場合は、家の中にも入ってもらうことは可能ですが、アポも必要ですし、1軒の調査には半日かかることになるので、時間がかかることを了解して再調査を依頼していただくことが必要です。

このような仕組みで罹災証明書が出されるということを皆さんも事前に知っておいていただくことが、実際に非常に役に立つと思います。

罹災証明書の発行訓練

この被災後の調査や罹災証明書の内容、その発行に関して行政がどんな作業をしているのかを、実は行政の職員も被災者になるかもしれない皆さんも実際にはよく分かっていないかもしれません。それを打破することが必要ですので、地域のキーパーソンに事前にその流れを分かっていただくために、罹災証明書の発行訓練をしている自治体もあります。

例えば東京都では、今はコロナで大変になっていますが、以前は総合防災訓練という場がありました。この会場にまずテントを建てて、そこで参加した都民に壊れた家の写真を渡します。これを自分の家だと思っていただいて、ブースに進んでもらいます。そこで、「調査を自分でやってみましょう」ということで、自治体職員の方が、被害調査のやり方を説明してくれます。自分で調査をしてみると、全壊だと思っていたのが半壊だったということもあります。そういった調査の内容を体験するブースがあります。それが終わった後、その結果を持って次のブースに行くと模擬的に罹災証明書を発行してもらえます。この訓練では、被災した場合には、どういった手順で物事が進むのかということを体験していただけますし、行政の職員も市民の皆さま相手に実地でやってみることができるので、実は訓練の効果も上がります。このような訓練が今後全国に広がってほしいと思っているところです。

もう一つ、知っておいていただきたいのは、災害が発生した際は、生活再建より、まず人の命が大事です。行政で命を守るための準備をしているのは、自治体の防災担当の方だと思いますが、同時に建物調査の準備や罹災証明書の発行の準備も任されているのが防災担当です。命のことを考えて、やりとりをしながら、その一方で調査の準備も進めていくというのは実際には不可能ですので、その辺りの仕事を分担して進めていく必要があると思っています。しかしながら、建物調査をする人、罹災証明書の発行のためにデータを作る人、罹災証明書発行会場を準備する人、罹災証明書を渡す人、その担当すら決まっていない自治体がまだまだたくさんあります。避難所運営については、少しずつ準備が進んでいますが、生活再建については、まだまだ難しい状況ですので、ぜひ早めに準備をしていってほしいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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