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防災インタビューVol.191

被災後のより良い生活再建のために

放送月:2021年8月
公開月:2021年11月

田村 圭子 氏

新潟大学 危機管理室 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

罹災証明書の受取り、その後

罹災証明書をもらって安心してしまいがちですが、その後、どうすれば良いかを考えていない方が多くいます。地震や水害が発生して1カ月後程度で罹災証明書を受け取りますが、その後、自治体が用意した生活再建相談窓口に行き、相談する必要があります。証明書を見ながら支援策を紹介してくれますが、支援策の中身は自分で申し込まなければいけないものと、行政側がある程度やってくれるものの2つがあるということをぜひ頭に置いていただきたいと思います。

自分でやらなければならないものは、生活再建支援金の申請です。お家の被害程度によって上限で100万、200万といった費用をみてもらえるようなものがありますが、自分で申込書を書く必要があります。その他に「減免」といって、普段支払っている税金や費用を割り引いてくれるものがありますが、これは行政によっては申し込まなくても行政側でやってくれるものもあります。

この2つについての注意事項として、自分で申し込まなければいけないものは、相談窓口ですぐ申し込むこと、行政側にお任せになっているものも本当に割り引きになっているのかどうか、自分で確認しないと分からないことも多いので、しっかり確認してください。「自分はなんの支援もしてもらっていない」と思われる方もよくいますが、実際には、結構いろいろなものが割り引かれているのに気付いていないということもあります。本当はこういうメニューについても、事前にどういうものが用意されているのかということを知っておく必要があると思いますが、災害の規模によっても支援策は変わってきます。東日本大震災では、過去最大の数えきれないくらいの支援メニューが出ていましたが、自分がそれに申し込めるかどうかをしっかりと判断する必要があります。規模の小さい災害ですと、自治体からのお見舞い金のみということもあります。災害規模によって支援の数も、量も、金額も違いますので、その都度調べることが必要ですが、基本的にいつもある支援もありますので、事前にしっかりと調べて知っておくことが重要です。

住宅の再建策について、新しく家を建てる、これを機に賃貸に引っ越す、親戚の家に行く、最終的に施設に入るというように、人生にはいろいろなチョイスがあります。その一つ一つに対して支援策が出たり、出なかったり、被災者にとってはメリット、デメリットも生まれてきます。ですので、やはりこの支援策全体を見回していただいて、自分がどうすべきかを窓口で相談しながら、自己決定していただくことが実は重要になってくるというのが実態です。

より良い生活再建のために

生活再建の一番の目標は、「1人の取り残しのない生活再建」と言われています。つまりこれは裏を返すと「これまでは取り残されてきた」ということになります。どんな人たちが取り残されてきたのかというと、まずは非常に忙しい方、仕事や子育てが忙しい方たちが全部の支援策に目配りができなくて、支援策にアクセスしないままその期限を迎えてしまうといったことがあります。ただそういった人たちは、自立した生活を送ることができていますので、さほど問題はないのかもしれません。

一方で、高齢の方やいろいろな理由があって自分ではなかなか調べることができない方たちは、アクセスができずに、本当は支援が必要なのに行き届かないといったこともあります。高齢者などの取り残しをなくすために行政側も今いろいろと準備をして、データを整えようとしているところですが、地域の皆さんの中にそういった心配がある方がいれば、一緒に相談窓口に行ってあげていただきたいですし、遠くで暮らしている高齢のご両親が被災した場合には、一緒に相談窓口に行って相談していただくことが必要になります。支援を受け得るべき人たちにサービスが届かないということは、行政側にとっても、被災者にとっても不幸なことですので、1人の取り残しのない生活再建の実現に向けて、皆さんに協力していただくことが非常に重要だと認識しているところです。

それともう一つ、このようにいろいろ準備をしていても、災害ごとに困り事というのは違います。例えば、先ほどもお話しした熊本地震の際には、お城のように盛り土をして石で固めた擁壁が崩れてしまった家がたくさんありました。しかしながら、全国的には擁壁のある家というのはあまりありませんので、そういったことに対する支援策はありませんでした。そこで、行政側が自分の地域にある特異な被災例について、その数を取りまとめて新しい支援策を出してくれるように県と話し合ったり、国に要求を上げて、新しい支援が生まれたケースもあります。

このように新しい支援が実現するためには、被災者が諦めてしまわず、小まめに相談窓口に足を運んでいただいて、「この支援策ではうちは無理なんです」ということを伝えることが必要です。その結果、新しい支援策が生まれ、それが次の災害に生かされるという良いループが回ります。関心がなく窓口にも行かなければ、行政も実態が分からず新しい支援策もできず、次の災害にも生かされない状況になってしまいます。それでは負の遺産がどんどんたまっていきます。そうならないためにも、ご自身のため、次の被災者のために、ぜひこの枠組みを知っていただいて、皆さん方で積極的に平時から取り組んでいただき、もしものときは黙っていないできちんと意見を伝えていただければというのが私の願いです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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