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防災インタビューVol.191

被災後のより良い生活再建のために

放送月:2021年8月
公開月:2021年11月

田村 圭子 氏

新潟大学 危機管理室 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

調査から罹災証明書発行まで

災害後の生活再建を考えたときに、まず最初は建物の被害調査が必要だということをお話ししましたが、非常に時間もかかりますので、被災者自身も掃除や修繕を始める方もいると思います。その際には、家の手当を始める前に、まず被災箇所の写真を撮っておいてください。水害であれば水がどこまで来たかという高さが分かる写真を撮ってほしいのですが、水が来た所をアップにして撮るのではなく、家の何割がやられたかを知ることが大事なので引き気味で撮ること、出来るならば定規などを当てて水が来た所の高さが分かる写真を撮ってください。そして、地震によってヒビが入った所をパテで固める前に、ヒビが入った所を家全体の壁のどの部分なのかが分かるように撮っていただき、写真から家の何割が被災したかがおもんぱかれる写真を撮っていただきたいと思います。調査の内容を理解していれば、皆さんの家がどの程度被災したかの自己判断もできますので、ぜひ皆さんにはこの調査についての知識を事前につけていただければと思います。

このように、写真などを撮っていただき、片付けや修繕を始めながら、調査後の罹災証明書の発行を待っていただくことになります。国からは、調査を始めてから発行までは1カ月くらいで出来るようにという指示が出ていますので、行政の職員は頑張っているはずですが、待つ身としては、長く感じると思います。

この調査後に行政が何をしているかというと、調査結果のデジタルデータ化をしています。この調査は出かけて行って調査をしますので、それをデータ化して、記録を残す作業にある程度時間がかかります。このデータが行政のいろいろな場所に共有されることによって、「何々さんのお家は何割ぐらいやられているな、じゃあお家を建て直すためにはこういった支援ができる」とか、「ここはお家が大変な状況だな、だったらお子さんが保育所に行っているのであれば、保育所に行っている費用の何割かを割引減免しよう」というような、いろいろな課で施策を展開するための基礎データになっていきます。この調査をデータ化するのに1カ月かかるということですので、ここは被災者の皆さんもぜひ忍の一字で耐えていただく時期かなというふうに思うところです。

罹災証明書の発行手順

罹災証明書の発行については、今、国の方でコンビニなどの窓口で簡単に発行できるように整備を進めています。マイナンバーカードもできましたので、そういった物を持って行っていただくと発行できるようにいずれは整えられる見込みですが、まだそういった仕組みは出来ておりませんので、行政の皆さんが直接発行することになります。

ですので、調査結果をデータ化した後、そのデータを罹災証明書の発行の仕組みに入れて、その仕組みから発行するということになります。行政の皆さんは、調査から発行までの1カ月の間にもう一つしなければいけないことがあって、会場確保や一気にたくさんの方が罹災証明書を取りに来たときに、安全に証明書を持って帰ってもらうための準備もしなければいけません。罹災証明書は、被災者が次のステップに進むための大事なものであり、避難所にいる方が、自宅の再建はすぐには難しいので仮設住宅に入りたいという場合、罹災証明書の罹災判定がないと入れないため、ある一定の期間でこの罹災証明書を発行しなければならず、行政も大急ぎで準備をしなければなりません。

熊本地震の時、大きな被害があった益城町という小さな町では、15台のパソコンを使って罹災証明書発行を実施しましたが、発行する場所がなかったため、コンベンションセンターの駐車場にテントを張って発行するという、初めて屋外での発行に踏み切りました。このように、いち早く被災者に罹災証明書をお届けするために、役場の規模がそれほど大きくない自治体では、大変な思いをして発行することになります。

ここで、皆さんにひとつ気にしていただきたいのは、「こういった準備をうちの自治体やってくれているのかな?」ということを事前に考えておくことです。自分が被災したら罹災証明書はどこで発行されるのか、自分の住んでいる自治体では決めているのだろうかということが心配になってくると思いますが、残念ながら、自治体の中では、まだこういったところを細かく考えていないところが多くあります。応急期の避難所運営については、事前に準備している自治体が多いのですが、生活再建についてはまだ進んでいないところも多くあります。皆さんも生活再建ということに関心を持って、みんなで機運を盛り上げながら自治体の準備を進めるように促していく必要があるのではないかと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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