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防災インタビューVol.209

物流と防災 ~3PL物流を活用した循環型備蓄の構築~

放送月:2023年1月
公開月:2023年3月

森兼 優佳 氏

株式会社丸和運輸機関
BCP物流支援企画部

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

私は株式会社丸和運輸機関 BCP物流支援企画部の森兼優佳と申します。丸和運輸機関は埼玉県吉川市に本社を構える物流会社です。2017年に新卒で丸和運輸機関に入社し、2020年にBCP物流支援企画部へ異動いたしまして、現在は共同研究員として東京大学の目黒教授の元で学ばせていただいております。

BCP物流支援企画部というところですが、まずこの部署ができた背景について少しお話しさせていただきます。まずBCPとは事業継続計画のことで、大規模自然災害や感染症の流行などといった事業継続リスクが発生した場合に、業務の中断などの被害を最小限に留め、素早い復旧を実現し事業を継続する方法について定めた計画のことを言います。

過去に丸和運輸機関は、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの大地震や集中豪雨等の災害によって被害を受けた地域に対して、救援物資の調達や物資輸送などの支援を無償で行っておりました。しかし、企業や人の善意による社会貢献だけでは、いざ災害が発生したら支援するといった「待ちの姿勢」になってしまう、近年の頻発し激甚化する災害に対応するためには、事前に事態を想定して対応しなければならない、持続的な活動をする為にも「事業化型の社会貢献」が考えられないかという、丸和運輸機関社長の和佐見の強い思いからこのBCP物流支援企画部という1つの部署が発足いたしました。

「事業化型の社会貢献」のご相談を防災の専門家である東京大学の目黒教授にさせていただいたところ、「協力して事業化を一緒に考えましょう」というお返事をいただくことができ、東京大学の研究室へ共同研究員を3名受け入れていただいております。私は入社後、物流現場に近いところで事務員をしていましたが、 共同研究員派遣に伴い「若手」を募集すると聞き、また、入社した動機が「社会インフラである物流業で社会貢献を持続的に行う仕組みを創りたい」という思いでしたので「私にやらせてください」と手を挙げて共同研究員に選んでいただきました。

防災やBCPの知識としては、私自身が兵庫県伊丹市の出身で、ちょうど阪神・淡路大震災が発生した年に生まれた学年ということで、小学校や中学校での震災伝承のイベントに参加する機会が多くあったり、高校生の時に東日本大震災のボランティアに参加したことがあるといった程度で、ほとんどゼロに等しいものでしたが、目黒教授にご指導いただきながら、東京大学 生産技術研究所の特別研究会であるRC77という「防災ビジネス市場の体系化に関する研究会」に所属させていただき、他の企業で防災に関わられている方々と意見交換をしたり、日本自然災害学会で研究内容の学術発表を行うなど学びを深めています。

過去の災害における物流の問題点

東京大学で学びを深め色々学ばせていただいて、また、物流会社という立場で、 防災の業界に関わり学びを深めていくと、現段階でどこかで災害が起きた時に、物資の輸送や仕分け、配給、人の派遣などの総合的な対応ができるインフラがあるかといえば、まだまだ考えなくてはいけないことがたくさんあることが見えてきました。

大規模地震発生後のニュースで、「被災地に送られた大量の支援物資が廃棄される」といったニュースや、 逆に「避難所に支援物資が届いていない」というようなニュースを覚えていますでしょうか。

過去の災害を振り返ると「必要なモノが必要な時に必要な場所にない」という問題が、毎回のように発生しているものの、いまだ解決されていません。東日本大震災や熊本地震などの大規模災害の経験を経て、検討され改善され続けて来ているのですが、まだ解決はされていない問題だと言えると思います。私たちは物流のプロである物流会社が、災害の時だけでなく、平常時からこの問題に取り組むことで解決すると考えています。

「必要なモノが必要な時に必要な場所にない」という問題が発生する要因は様々挙げられます。大規模自然災害が発生すると、被災地に向けて国から県、県から市町村、市町村から各避難所へ物資の輸送が計画されています。いわゆるプッシュ型支援というものが行われるのですが、市町村が担当する被災地域に近い輸送拠点で物資の保管場所の確保であったり、次の物資拠点や避難所にむけての物資の仕分けであったり、また輸送するトラックがスムーズに荷物を運び入れたり、運び出したりする受け入れ態勢や、トラックが接車する場所の確保ができておらず、大量に支援物資は集まるのですが、それが避難所にいる避難者の元へ届かない問題が発生しています。いわゆるラストワンマイルの課題と言われるものです。

計画上、物資輸送拠点として設定されている場所の多くは役所や運動場など、普段から大量の物資を扱う場所ではないので、大量の物資が持ち込まれてしまうと屋内で保管する事が困難になってしまい、一部の物資については外にあふれ出してしまう状況が発生します。また、施設の耐荷重が足りず、水などの重い物資を大量に運び入れたために床が沈んでしまったり、台車やフォークリフトといった様な物流業務に必要な機器が使用できなかったりと、多くの時間と人員を割くことになってしまいます。

また、地震直後は避難所へ向けて輸送する配送車両を確保することが非常に困難です。物資を集積する拠点から避難所までを配送するトラックが少なかったことや、遠方から支援に来た方々に土地勘がなかったりすることも、物資の滞留の要因を招いたと考えられます。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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