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防災インタビューVol.209

物流と防災 ~3PL物流を活用した循環型備蓄の構築~

放送月:2023年1月
公開月:2023年3月

森兼 優佳 氏

株式会社丸和運輸機関
BCP物流支援企画部

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

循環型備蓄の構築

丸和運輸機関では私を含め東京大学に3名、東北大学に4名の共同研究員を受け入れていただいていますが、それぞれがテーマを持って研究を行っています。

私が東京大学の目黒教授のもとで勉強させていただきながら、将来的に実現したいものに「循環型備蓄」の構想があります。循環型備蓄とは簡単にいうと企業が普段から保有している在庫を備蓄として活用し、普段の連携を保ちながら調達・管理・配送をトータルで計画する備蓄方式のことです。

一般的に、災害時の生活に必要な物資を確保するための備蓄方法として、家庭や職場など個人や法人による備蓄、市町村や都道府県などの自治体が物資を事前に調達して、防災倉庫や避難所などに保管して災害に備える公的備蓄、そして事前に地域内の製造・卸・小売などの事業者と協定などを締結して、在庫の食料や日用品などを災害用の備蓄として活用する流通在庫備蓄があります。流通在庫備蓄においては、自治体が事前に物資を購入しなくても良いとするものや、自治体が一度備蓄品を購入し、企業の流通ルートにのせるなど企業の在庫を活用する備蓄の方法ですが、まだまだ具体的に導入している事例は少ないです。

企業の在庫を備蓄として活用するという点は循環型備蓄も同じですが、循環型備蓄というのはこの流通在庫備蓄をさらに強化させた考え方です。流通在庫備蓄は企業と自治体の協定によって物資を確保するという役割が大きいのですが、循環型備蓄は普段から在庫管理に携わっている物流業者を協定や取り組みの間に入れていただくことで、普段の物流システムや倉庫、配送のトラックを使用して被災地に届けることができるというふうに考えています。

現状の災害備蓄管理においては、訓練等で一部使用されることもありますが、基本的には賞味期限が切れる以外の出し入れがなくて、備蓄倉庫にずっと置きっぱなしという状態が多いです。災害用備蓄ですから、有事に備えて保有しておくことで、そこに必要数あるということが重要だとすれば、わざわざ普段から使用していないものを別途確保しておくよりも、普段から大量にものがあり、しかも普段から商品の循環があって新しいものに常に入れ替わっている企業の在庫を活用した方が良いと私は思っています。企業は通常のビジネスの中で、適正な在庫管理を行っています。企業により異なりますが、商品が店舗からなくならないように、1週間や2週間分の在庫を保有している企業もあります。一部の商品ですが、この基準で物量を保てば、常に必要数を確保できるといった検証も進めています。

まだまだ構築し始めたばかりの内容なので、検討事項はたくさんありますが、循環型備蓄のモデルが完成すれば、行政は平常時の賞味期限ごとの入替や、数量の管理などの手間が減りますし、よりバラエティーのある商品の確保、例えばアレルギー対応食や、地域特性によってはハラル対応の食料、夏にはいらないけれど、冬には欲しいカイロなどを確保したいと思ったときに、現状の方法で確保し保管するよりも、もっと簡単に確保することが可能になります。加えて、循環型備蓄は普段から物の出し入れがある倉庫を使用することが大前提なので、耐荷重やトラックバースなどの設備的な面や、輸送手配をスムーズに行うことができ、現状災害時物流で課題となっている問題を解決することができると思っています。

また、この循環型備蓄の機能をもつ倉庫が全国の各拠点にあれば、普段から業務のために管理されている倉庫ですので、被災地に向けての支援の物量把握や輸送手配もスムージになると思っています。

この取り組みは、民間企業だけでも行政だけでも構築できません。行政や多くの企業の協力・理解が必要です。興味を持っていただいた方がいれば、丸和運輸機関まで、ぜひご連絡いただければと思います。

災害に強い企業づくり

AZ-COM丸和グループでは全国170拠点以上で、事業所長を中心に各拠点の立地条件や従業員数、使用可能なリソースを洗い出し、さらにハザード毎にわけて被害状況を想定して、BCPの策定を行いました。自社の事業継続力を見直す全社的な訓練の実施などもあり、事業継続推進機構が開催しているBCAOアワード2020で特別賞・優秀実践賞という素晴らしい賞をいただきました。

BCPとは、以前も申し上げましたが、事業継続計画のことで、大規模自然災害や感染症の流行といった事業継続リスクが発生した場合に、業務の中断などの被害を最小限に留め、素早い復旧を実現し事業を継続する方法について定めた計画のことです丸和グループは過去、地震や風水害に対応してきましたが、それはその時、その時の判断で対応してきました。うまくいったこともたくさんありますが、それはあの時たまたまあの人があの場所にいたからできたというようなファインプレーです。この素晴らしいファインプレーをいつでもスタンダードにできるように、あらかじめ計画しておくことが重要だと考え、全拠点での策定を実施しました。

また、他にも年間を通じて、災害を想定したワークショップの実施や経営層を巻き込んだ災害対応訓練などを行っており、BCP策定で終わるのではなく、訓練を通じて策定されたBCPの実行性の確認を行い、評価・修正することでより災害対応能力の高い企業の構築を目指しています。

最近の訓練をひとつ紹介させていただきますと、経営層まで巻き込んで本社に出勤している社員を中心に100名以上の社員が参画した訓練が挙げられます。この訓練では、首都圏で最も被害が大きいとされる都心南部直下型地震を想定し、ロールプレイング形式で訓練を実施しました。策定されたBCPを基に、埼玉県吉川市にある本社に災害対策室本部を立ち上げ、各災害対応班が与えられた条件に対して対応し、結果や考えを災害対策室長に報告し、判断する、情報伝達、連携の訓練を実施いたしました。

訓練設計の段階で物流現場や総務・情報システム・広報など様々な部署にヒアリングを行い、実際に発生しそうな問題や課題の洗い出しを行い、また東北大学の丸谷教授にも訓練前からご相談させていただいた上で、訓練設計をしたので、リアルな想定の訓練ができたと考えています。丸谷教授には、訓練会場である吉川市の本社に直接お越しいただき、訓練の評価をしていただきました。丸谷教授から課題や問題点を洗い出していただくことで、より正確かつ迅速に災害対応できる体制を構築しています。

他にも、安否確認システムの整備や全国に広がる支社に対してのワークショップや勉強会の実施を行い、水平展開していくことで、本社の機能だけでなく現場の災害対応能力も向上させて、いつ・どこで災害が発生しても、各現場で主体的に動くことができる体制を構築しております。

これからも訓練や専門家の方々からご指導をいただき、災害に強い企業づくりを行っていこうと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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