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防災インタビューVol.212

メディアと防災

放送月:2023年4月
公開月:2023年7月

入江 さやか 氏

松本大学
地域防災科学研究所 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

東日本大震災がメディアを変えた ―放送メディア

東日本大震災が発生した当時、私はNHKの報道局に在籍していました。地震が発生し、NHKでは緊急地震速報をテレビ・ラジオの全7チャンネルで伝え、その約2分後には、東京の放送センターのスタジオから緊急ニュースを開始しました。地震発生から大津波が押し寄せるまで、アナウンサーが懸命かつ冷静に避難を呼びかけ続けましたが、多くの尊い命が失われてしまいました。放送を通じて、リアルタイムに避難の必要性や危機感を伝えられなかったのではないかという反省と教訓に立ち、NHKではすぐに津波警報・注意報の伝え方の見直しに着手しました。

最も大きく変えたのは、アナウンサーの避難を呼びかける時の言葉・コメントです。東日本大震災の時には従来の放送と同様に冷静かつ客観的に「大津波の恐れがあります」と伝えていました。しかし、このような表現では、視聴者に「危機感」が伝わらないと考え、3つの点について変更しました。1つは「大津波が来ます」と断定的に伝えること。続いて、「直ちに逃げること」のような命令調の表現。3つめは「東日本大震災を思い出してください」といった災害の情景がイメージできるような表現を取り入れること。この3点に加えて、アナウンサーは、感情を込めて強い口調で呼びかけることにしました。こうした強い避難の呼びかけは、津波だけではなく現在では台風や豪雨などの気象災害の際にも用いられるようになりました。

東日本大震災が日本のメディアを変えた ―スマホアプリ・SNS

東日本大震災をきっかけに、スマートフォンのアプリやSNSによる防災情報の流通が急速に発展・拡大しました。それまでは防災情報や気象情報は、テレビ・ラジオを通じて大勢の人に同じ内容を一斉に伝えるものでした。それを、一人ひとりの情報ニーズに合わせて発信するパーソナルなものに変えたのは、インターネットやスマートフォンの力でした。

その代表とも言えるのが、(株)ヤフーが2011年にサービスを提供開始した「Yahoo!防災速報」というサービスです。この「Yahoo!防災速報」では、自宅や勤務先などユーザーが登録した最大3つの地点と、現在いる場所について、地震・津波の情報や気象災害などの防災情報をプッシュ通知するアプリで、ユーザーは2000万人を超えているそうです。

NHKも、「NHK ニュース・防災」アプリを提供していますが、緊急地震速報や気象情報に特化した様々な防災アプリが登場し、個人で入手できる情報の速度と量はこの10年間で一気に増大しました。皆さんが日常的に使っている「LINE」も、東日本大震災の時に家族や友人と連絡がつかなくなったことを教訓に生まれたサービスです。

東日本大震災以降のメディアやネット、スマートフォン・SNSのこのような動きを見ていると、災害はメディアを進化させるものであると感じます。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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