プロフィール
金藤純子と申します。現在、株式会社EnPalの代表取締役でございます。神戸大学を卒業した後、JTBに入社、その後岡山県のシステム会社へ転職。パートから入社し、専務取締役として流通小売業や商業施設のポイントカードの分析、商業施設のCRM、出退店の動向を分析するなどの仕事をしておりました。2018年7月に西日本豪雨で被災した経験をきっかけに一念発起し、2020年6月防災の啓蒙活動を行うEnPalという会社を起業しました。
西日本豪雨被災が、自分自身変わっていく大きな気付きを得るきっかけとなりました。実家と自宅の2軒が全壊し、自らもボランティア活動を始めました。地域にある様々な問題あるいは私の家族に起きたことなどから、災害が日常の中にもともと存在していた課題を浮き上がらせてしまうと気づきました。私自身が災害も防災のこともまるで知らなかったので、この「知らない」ということにこだわり、みんなに気付いていただきたいという思いから会社を立ち上げました。
株式会社EnPalでは防災の啓蒙活動として、ショッピングセンターでの防災イベント企画運営、自治体と一緒に 防災の街歩きや地図づくり、住民の皆さんへの啓蒙活動。また、ショッピングセンターのショップ向けの店長研修などを行っています。
西日本豪雨での被災について
2018年7月6日、広島の商業施設と商談予定があり、東京から倉敷の家に戻っていました。ところが、長引く大雨で新幹線が広島から岡山間を除いて運行休止になってしまい自宅待機となりました。その後、家が全壊することは全く想像もせず家で仕事をしていましたが、だんだん用水路の水かさが増し始め、実家の両親と飼い犬のトイプードルを私の住まいに呼び寄せました。NHKの地域情報では避難所に行くことを推奨されていましたが、雨も降っているし避難所では犬が迷惑になるからと、そのまま自宅にいる状態が続いてしまいました。
夜中の2時頃になって、友人から「避難所の小学校がもういっぱいだよ」と電話が入り、まさか2階まで水は来ないのではないかと、自分たちの判断で一旦そのまま寝てしまいました。朝4時になってスマートフォンから避難指示のアラームが大音量で鳴り響き、高台にある真備総合公園に向かおうと車を出発させました。途中小さな小川（末政川）の土手の前に熊本県警の警察車両が停まっていて「この先は冠水しているから行けません。引き返してください。」と指示されました。田舎なので周りの建物は2階建てばかりです。どこに逃げよう、避難所は入れないし…という慌てた状況の中で、4階建ての病院が目に入りそこに身を寄せました。
避難したタイミングではまだ水は上がってきていなかったのですが、朝6時を過ぎてから駐車場に水が上がってきたため、2階の会議室に上がらせていただきました。すでに近隣の住民が30人ほど会議室の中に避難されていました。そこから1時間おきぐらいに、外の様子を写真に撮っていましたが、水がゆっくりゆっくり上がっていきました。
水害というと、川が決壊して水が大量に流れ込んでくるような映像を見ることがありますが、そうではなく、本当にゆっくりゆっくりと水が上がっていき、2階を超えていく感じで、3階近くまで水が上がりました。病院の3階と4階は病室で入院患者がいるので、廊下にマットを敷いていただき、そこで夜を過ごしました。しかし、停電していて病院は真っ暗で電話も繋がらなくなってしまい、ほとんどの人が音信不通というような状態になっていきました。
病院の方から犬の散歩をしても良いと屋上を開放していただいたのですが、上がってみたら周り一帯が海のようになっていました。逃げ遅れた人もたくさんいて、救助を求めて手を振っている様子も見受けられました。しかし、遠くに見える土手では普通に車が走っていました。私たちだけが大きな湖の中に浮かんでいるような感じで、目の前では日常なのに自分たちだけが異常な感じがしました。
300人ほど病院に取り残された患者、住民たちは、30時間ほど病院の中で過ごしました。翌朝から自衛隊のボートで10人ずつくらいに分けてピストン搬送で救助されました。
