民泊のデメリットはどう解消する?トラブルや管理業務等の課題を解決
目次
民泊は、居住用物件の空き家や空き室を有効活用して提供できる宿泊サービスです。住宅宿泊事業法に基づく届出制により運営することが一般的です。インバウンド需要の回復と拡大を背景に、訪日外国人旅行客の観光ニーズに対応する宿泊サービスとして再び注目されています。
しかし、民泊には管理上のトラブルなどが問題視されており、デメリットを解消する方策を模索している方もいるでしょう。そこでこの記事では、民泊の規制緩和やニーズの変化の動向、メリット・デメリットとその対策について紹介します。
民泊における規制緩和やニーズ変化の動向
民泊には法令上の定義はありませんが、一般的に戸建住宅、マンション、別荘などの住宅の全部または一部を活用して、旅行者などに宿泊サービスを提供することを指します。民泊は住宅宿泊事業法などにより規制緩和が進んでおり、昨今のインバウンド需要回復を受け全国の民泊数は増加傾向にあります。
規制緩和が進んでいる
民泊は2014年に日本法人を設立したAirbnb(エアビー)などの仲介サイトにより活用が広がりましたが、当時は法整備が十分ではなく、無許可の違法民泊が増加するなどの問題も発生しました。2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)などにより、民泊サービスの法的な位置付けの明確化や規制緩和が進んでいます。
民泊数はインバウンド需要回復を受け増加傾向
住宅宿泊事業法に基づく民泊の届出件数は、法律が施行された2018年6月から増え続けています。しかしコロナ禍で事業廃止件数が急増し、届出住宅数(民泊数)は2020年4月の2万1,385件をピークに頭打ちとなっていました。
2023年にはインバウンド需要の急回復に伴い民泊の届出件数は増加傾向となり、2024年3月の届出住宅数は2万3,142件に達しています。ただし、これらのデータは47都道府県の総計です。民泊管理業者は東京・大阪といった都市部に集中するなど、民泊サービスの充実度には地域差もあります。
(参考:『住宅宿泊事業法の施行状況|民泊制度ポータルサイト』)
民泊のデメリットや注意点!対策するには?
民泊は無許可・無届で運営すると違法です。通常、民泊の運営には住宅宿泊事業法に基づいた届出が必要ですが、運営上のトラブルや管理の難しさがしばしば問題となります。特に家主不在型の民泊では、管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する必要があります。法令を遵守しない運営を行うと、懲役刑や罰金が科される可能性があることに注意が必要です。
ここでは、主に住宅宿泊事業法に基づく民泊について、デメリット・注意点と対策の考え方を解説します。
管理上のトラブルが発生する恐れ
民泊は外国人旅行客も含め幅広い層が利用しますが、文化や生活習慣の違い、また旅行先での解放感から、次のような管理上のトラブルが発生することがあります。
・施設内に大量のごみが散乱する
・トイレなど水回りが汚損される
・備え付けの家具などが破損・盗難される
・騒音やごみ出しなどで近隣住民とトラブルが起こり、苦情が入る
これらのトラブルを防ぐためには、法律や地方条例に従った厳格な管理が必須です。不特定多数の利用者の出入りは、トラブルの頻発と物件の資産価値の低下を引き起こす可能性があります。
住宅宿泊事業法に基づく民泊の場合、住宅宿泊管理業者に管理業務を委託する仕組みもありますが、いずれにせよリスクを想定した対策が求められるでしょう。
年間営業日数は180日以内に制限される
住宅宿泊事業法に基づく民泊には、年間営業日数が最大180日までという制限が設けられていますが、地方自治体によってはこの日数がさらに短縮されることもあります。開業のハードルは比較的低いものの、1年を通しての運営は許可されていません。
このため、旅行のオンシーズンには民泊事業で最大限に収益を上げ、オフシーズンにはマンスリーマンションとして賃貸を行うなど、効果的な物件運用戦略が必要となります。
なお旅館業法に基づく簡易宿所営業の許可を取得するか、特区民泊の利用を選択することで、年間営業日数の制限を超えて民泊サービスを提供可能です。
家主不在型は管理業務の委託が必要
「家主居住型」と「家主不在型」民泊の違いには注意が必要です。住宅宿泊事業法に基づく民泊で家主が自ら管理を行うことが認められるのは、家主居住型に該当する場合のみです。以下のケースは全て家主不在型とみなされます。
・宿泊客がいる間、家主が1時間以上不在になる場合や他の仕事に従事して管理業務を行えない場合
・届出を行った住宅の宿泊室数が5室を超える場合
・法人が住宅宿泊事業者として登録されている場合
これらの場合は住宅宿泊事業者が法人・個人にかかわらず、管理業務の全部を、国土交通大臣の登録を受けた住宅宿泊管理業者に委託することが必要です。
登録実務講習制度による管理業者登録は考えにくい
住宅宿泊事業法に基づく民泊において、事業者は住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者を兼任することが可能です。2023年7月に施行された法改正により、国が認定した機関が実施する27時間の講習を修了することで、住宅宿泊管理業者として登録することができるようになりました。登録実務講習は以下の2パターンで提供されています。
・対面やオンラインによる27時間の講義
・通信講座20時間相当+対面やオンラインによる講義7時間
登録実務講習制度により地方の管理業者不足を解消することが期待されますが、2024年4月時点で、登録実務講習の実施機関はごく少数です。講習の日程や受講人数も限られるため、住宅宿泊管理業者として登録を受けるなら、他の方法も検討しましょう。
不動産事業を営む事業者なら管理業者登録も考えやすい
登録実務講習制度以外で住宅宿泊管理業者として登録を受ける場合、事業者は以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
・住宅の取引または管理に関する2年以上の事業経歴または実務経験があること
・宅地建物取引業の免許または宅地建物取引士の資格を有すること
・マンション管理業の登録または管理業務主任者の資格を有すること
・賃貸住宅管理業の登録または賃貸不動産経営管理士の資格を有すること
国土交通省は、関東地方や近畿地方など各地方で住宅宿泊管理業者の登録簿を管理しています。例えば関東地方は、2024年4月時点で1,000以上の法人・個人が登録済みです。不動産事業を営む事業者であれば、これらの条件を満たすことで比較的容易に登録を受けられるでしょう。
デメリットを上回る?民泊を開業するメリット
民泊にはいくつかのデメリットと注意点がありますが、所有する居住用物件の空き家や空き室を効率的に収益化できる可能性があります。宿泊施設の不足を補い、地域創生に貢献することもできるでしょう。実績を積むことで、民泊物件や事業そのものを有利に売却することも可能です。
居住用の空き家や空き室で収益化できる
民泊サービスを提供する最大のメリットの一つは、所有する居住用物件の空き家や空き室を有効活用し、収益を得ることです。空き物件は、人が住まないことで劣化が進みやすく、管理費、管理委託料、固定資産税などのランニングコストが発生します。
民泊の許可や届出を行えば、アパート、マンション、古民家、別荘などを旅行者向けの宿泊施設として活用でき、稼働率を高めることが可能です。すでに設備要件を満たしている物件を利用すれば、初期投資を抑えつつ民泊として運用し、効率的に収益化ができます。
宿泊施設の不足を補い地域創生に貢献できる
インバウンド需要が急回復し、コロナ禍前の水準を上回る市場拡大が見込まれる中、民泊は地域創生への貢献が期待されている宿泊サービスです。訪日外国人旅行客の間では、「爆買い」に象徴される「モノ消費」に代わり、体験を重視する「コト消費」の関心が高まっています。
しかし文化・歴史・自然・食事・温泉などの観光資源はあっても、ホテルや旅館といった宿泊施設が不足している地域は珍しくありません。こういった地域で古民家などを活用した民泊を提供することで、供給不足の宿泊サービスを補い、地域経済の活性化や雇用創出に貢献できます。
民泊物件や事業そのものを有利に売却できる
民泊サービスの提供実績があれば、所有物件を民泊物件として売却しやすくなることもメリットです。民泊として運用開始できる物件を持たない個人・法人が、民泊サービスを新たに始めたり拡大したりする場合、民泊物件を取得する必要があります。
しかし民泊の許可や届出を行う際、施設には設備・構造などの要件があるため、どのような物件でも民泊として活用できるわけではありません。民泊として許可や届出を行った物件なら、適法な民泊物件として有利に売却できます。
また民泊としての利用実績を積むと、収益性の高い民泊ビジネスとして、M&Aにより事業ごと売却することも可能です。
民泊運営を成功させるポイント
民泊を開業する際には、主に3つの方法がありますが、それぞれの法令の違いを理解することが必要です。複数の居住用物件を所有している場合は、旅行者にとって魅力的な立地の物件を選びましょう。民泊の開業は施設要件を満たしていれば追加コンテンツなしで可能ですが、フリーWi-Fiやスマートロックのような設備を整えることも、運営の成功には重要です
3種類の開業方法を正しく理解する
民泊サービスを提供するには、大きく分けて3つの方法があります。
【住宅宿泊事業法に基づく届出】
都道府県知事へ届出を行うことで、年間180日まで民泊サービスを提供できます。届出を行う事業者は「住宅宿泊事業者」と呼ばれ、その仲介業者は「住宅宿泊仲介事業者」とされます。住宅宿泊事業者には「家主居住型」と「家主不在型」があり、後者は管理を「住宅宿泊管理業者」に委託する必要があります。
【旅館業法に基づく許可】
旅館業法の「簡易宿所営業」許可を取得すると、年間を通じて営業が可能です。この場合、一定の構造設備基準を満たす必要があり、許可申請は都道府県の保健所で行います。
【国家戦略特区法(特区民泊)の認定】
国家戦略特別区域における外国人滞在施設経営事業(特区民泊) 一部の特区で認定を受けると、最低2泊3日以上の条件はありますが、年間営業日数の制限なく民泊サービスを提供できます。自治体の観光施策と連携できることも特徴です。
それぞれ、届出・許可・認定を行う部署が異なり、営業日数や施設基準など、異なる制限があることに注意を要します。
旅行者目線で魅力的な立地の物件を活用する
民泊サービスの提供において、物件の立地は非常に重要です。居住用物件が持つニーズは、定住者と旅行者で異なります。
例えば、生活の拠点としては、駅近であることや通勤・通学の便が良いことが求められます。一方で、旅行者は観光地へのアクセスが容易な立地を重視することが多いです。
同じ街内であっても、観光資源への近さによって宿泊ニーズが異なるため、旅行者の視点で魅力的な立地かどうかを判断することが重要です。
付加サービスで差別化や顧客満足度向上を目指す
旅行者のニーズに合った住環境を整備することは、民泊運営において重要です。許可や届出を行う際、必要とされる基本的な設備(風呂、洗面台、トイレ)を整備するのはもちろん、旅行者目線での付加サービスも検討すべきでしょう。
例えば外国人旅行客からニーズが高いのは、移動先でフリーWi-Fiが利用できることです。旅行者は滞在中にインターネットから観光情報を検索したりSNSを利用したりするため、フリーWi-Fiの利用可否は民泊を比較する際の重要な条件になり得ます。選ばれる民泊を目指すなら、競合との差別化や顧客満足度の向上につながる環境を整備しましょう。
不正利用防止や管理負担軽減に役立つサービスを導入する
民泊事業者はしばしば、「予約人数と宿泊人数の不一致」や「チェックイン・チェックアウトの時間違反」などの問題に直面します。これに加え、鍵の紛失や複製による不正利用は大きな管理上のリスクです。
こういった問題を回避するなら、スマートロックや入退室管理システムなどの導入も検討しましょう。スマートロックを採用すれば、鍵の受け渡しの手間がなくなり、鍵の紛失によるシリンダー交換のコストも抑えられます。システムによっては予約・決済・入退室なども一括で管理でき、不正利用の防止や管理業務の負担軽減に役立つでしょう。
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「Connected Portal(コネクティッドポータル)」でスマートロックと各種管理システムを一本化
民泊は旅行者との間でさまざまなトラブルが考えられるため、安定して事業を運営するなら、管理を効率化できるシステムを導入しましょう。
イッツコムが提供する「Connected Portal(コネクティッドポータル)」は、民泊運営の効率化に必要なスマートロックと各種管理機能を一本化できるサービスです。
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選ばれる民泊を目指すなら、フリーWi-Fiの提供は重要です。家庭用Wi-FiルーターはフリーWi-Fiの提供に不向きなものも多いため、業務用Wi-Fiアクセスポイント(AP)の導入をおすすめします。
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【関連記事:Wi-Fiのアクセスポイントとは?LANの仕組みや機器の機能も一挙解説】
まとめ
インバウンド需要の回復と拡大を背景に、民泊は空き家や空き室の活用方法として再び注目されています。しかし、民泊には管理業務の難しさや年間営業日数の制限など、いくつかのデメリットもあります。
民泊運営を成功させるためには、不正利用の防止と管理負担の軽減に役立つサービスの導入、および旅行客のニーズに応える付加サービスの提供が重要です。
イッツコムは「Connected Portal(コネクティッドポータル)」や「かんたんWi-Fi」を通じて、安全かつ魅力的な民泊運営をサポートします。民泊のデメリットを克服し、無人運営に最適な環境を整備するために、イッツコムが提供する一括導入サービスをご利用ください。