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固定IPアドレスとは?活用シーン・契約方法・設定時の注意点を解説

社内でWebサーバやVPNサーバを運用するなど、インターネットから継続的にアクセスが必要な場合、機器に固定グローバルIPアドレスを設定する必要があります。固定グローバルIPアドレスの払い出しができるのは、アドレスを保有するプロバイダです。

この記事では、固定グローバルIPアドレスの活用シーンや契約方法、契約・設定時の注意点を解説します。コストを抑えて固定IPアドレスプランを契約できる、プロバイダ・光回線一体型の法人向けサービスにも着目しましょう。

プロバイダで契約する固定IPアドレスとは?

Google検索などインターネットを利用する際、PCやスマホにはグローバルIPアドレスが割り当てられています。グローバルIPアドレスの割り当ては、インターネットサービスプロバイダ(ISP)の基本的なサービスに含まれています。通常、IPアドレスは動的に割り当てられますが、特定の用途では固定のグローバルIPアドレスが必要になる場合もあります。

IPアドレスの基礎知識

IPアドレス(Internet Protocol Address)は、ルーターやサーバ、PCなどの機器に割り当てられる識別番号です。インターネット接続に使用される「グローバルIPアドレス」と、社内LANや家庭内ネットワークで使われる「プライベートIPアドレス」の2種類があります。

どちらも、ネットワークに参加する機器がどこにあるかを特定する住所のようなものです。通信時にはアクセス元とアクセス先のIPアドレスを指定してデータをやりとりするため、ネットワーク内で重複がないように厳密に管理されます。それぞれ、「動的IPアドレス」と「固定IPアドレス」という2種類の割り当て方式があります。

接続のたびに再割り当てされる動的IPアドレス

動的IPアドレスとは、機器を再起動したりネットワークに再接続したりするたびに、新たに割り当てられるIPアドレスを指します。接続時には空いているアドレスが自動で割り当てられ、切断時にはそのアドレスが解除されます。次回接続時には、再びその時点で空いている別のアドレスが割り当てられる仕組みです。

グローバルIPアドレスの場合、動的IPアドレスの割り当ては契約しているプロバイダが行います。プロバイダが保有するグローバルIPアドレスには限りがあるため、通常は再利用が容易な動的IPアドレスを利用します。

インターネットの利用では、アクセス元のグローバルIPアドレスが変わっても問題がない場合がほとんどです。そのため、Webサイトの閲覧など一般的な用途では、動的IPアドレスが広く使われています。

【関連記事:プロバイダとは?契約形態・確認方法・選び方を分かりやすく解説

再接続時にも常に一定の固定IPアドレス

固定IPアドレスとは、機器を再起動したりネットワークを切断したりしても変わらず、常に同じ状態を保つIPアドレスです。特にビジネス用途では、固定グローバルIPアドレスが必要になる場面が多く見られます。

例えば、社内LANで運用するWebサーバやファイルサーバのIPアドレスが変わると、外部からのアクセス時に宛先不明となり、Webサイトや共有フォルダに接続できなくなります。このようなトラブルを防ぐため、プロバイダから固定グローバルIPアドレスを取得し、ルーターやサーバに設定します。

固定グローバルIPアドレスは契約者専用のため、契約が解除されない限り再配布されることは通常ありません。このため、主に法人向けの有料サービスとして提供されるのが一般的です。

固定IPアドレスの契約で解決できるネットワーク課題

プロバイダから固定IPアドレスの払い出しを受けると、ビジネスシーンのさまざまなネットワーク課題の解決に役立ちます。例えば、アクセス先の変わらないWebサイトを運用できるようになることや、リモートアクセス・拠点間通信の安全性を高められることです。クラウドサービス利用時の端末制限や、IPカメラでの安定した遠隔監視にも活用できます。

アクセス先の変わらないWebサイトを運用できる

自社の公式Webサイトを公開したい場合、社内LAN内にWebサーバを設置する方法や、外部のレンタルサーバを利用する方法などがあります。レンタルサーバは利用料金やカスタマイズ性が問題になることもあり、Webサーバを自社運用したい場合もあるでしょう。

この場合、Webサーバに動的IPアドレスを割り当てると、一定期間でIPアドレスが変更され外部からアクセスできなくなってしまいます。固定グローバルIPアドレスを割り当てることで、アクセス先の変わらないWebサイトを運用できるようになります。

リモートアクセスや拠点間通信の安全性を高められる

社外から社内ファイルサーバ内の共有フォルダにアクセスしたり、PC・サーバの遠隔操作を行ったりする場合、アクセス先の機器を特定するために固定グローバルIPアドレスが必要です。ネットワークプリンターやNAS(ネットワークHDD)は、固定グローバルIPアドレスを前提とした製品もあります。

また、VPNサーバも自社運用できるようになります。VPNは公衆回線網の中に仮想的な直結回線を構築する技術です。固定グローバルIPアドレスを割り当てることで本社や支社のLAN内にVPNサーバを構築でき、リモートアクセスや拠点間通信の安全性を高められます。

【関連記事:VPN接続とは?いまさら聞けない基本を仕組みから接続方法まで解説

クラウドサービスの端末制限でセキュリティリスクを低減できる

クラウドサービスを利用する際はインターネット経由でログインをするため、流出したID・パスワードによるなりすましなどが懸念されます。こういったセキュリティリスクを低減するセキュリティ機能として、クラウドサービスは接続元IPアドレスによるアクセス制限(端末制限)を設定できる場合があります。

ホワイトリストに登録されたグローバルIPアドレスがユーザーの端末と一致することを前提に、特定の接続元IPアドレスのみアクセスを許可する機能です。これは社内ネットワークやIoT機器へのアクセスにも活用される機能ですが、動的IPアドレスだと端末を特定できないため、接続元となるPCやスマホに固定グローバルIPアドレスを設定することが必要です。

ネットワークカメラで安定した遠隔監視ができる

ネットワークカメラ(IPカメラ)をインターネット経由で遠隔操作する際、固定グローバルIPアドレスが役立ちます。ネットワークカメラはWebブラウザから映像・音声の確認やズーム操作ができ、異常検知時のメール通知もできるなど、現地の状況確認や防犯に活躍するIoT機器です。

動的IPアドレスでも外部とデータを送受信することはできますが、再起動や再接続に伴いIPアドレスが変更されると、外部からはアクセスできなくなってしまいます。固定グローバルIPアドレスを割り当てることで、インターネット経由で安定してモニタリングできるようになります。

固定IPアドレスの契約方法は主に3パターン

ユーザーに固定グローバルIPアドレスを割り当てるのはアドレスを保有するプロバイダですが、アドレスの提供方法には複数のパターンがあります。最も一般的な方法は、光回線の法人向けプロバイダサービスを契約することです。他に、固定IPアドレス対応のデータSIMを契約する方法や、固定IPアドレス付与に特化したサービスを契約する方法もあります。

光回線の法人向けプロバイダサービスを契約する

固定グローバルIPアドレスを利用するには、まず光回線の法人向けプロバイダサービスを契約するのがおすすめです。多くのプロバイダでは、個人向けとは異なる法人向けサービスを提供しており、固定グローバルIPアドレスの割り当ては主に法人向けのプランで利用できます。

提供プランはプロバイダごとに異なり、基本プランで固定グローバルIPアドレスが1つ付与される場合や、オプションで最大8個や16個を追加できる場合もあります。動的IPアドレスのみの一般的なプランと比べると料金は高めですが、法人専用のサポート窓口や高度なセキュリティ機能が含まれるため、セキュリティを重視する企業に適しています。

一部のプロバイダでは、個人向けサービスでもオプション契約で固定グローバルIPアドレスを利用可能です。ただし、付与されるIPアドレスは1つに限られることが多く、初期費用や月額料金が追加で発生する点には注意が必要です。

固定IPアドレス対応のデータSIMを契約する

データSIM(データ通信専用SIMカード)に固定グローバルIPアドレスを割り当てるサービスを提供しているプロバイダもあります。データSIMは音声通話機能を持たず、インターネット通信に特化したSIMカードです。

このタイプのデータSIMは、光回線を導入しにくい場所に設置するネットワークカメラや、SIMカード対応ノートPCからのリモートアクセスなどに活用できます。

ただし割り当てアドレス数は1つのみです。複数端末に固定グローバルIPアドレスが必要な場合、同じ枚数のデータSIMを契約することになります。またモバイル通信によるインターネット接続となるため、通信速度の安定性なども懸念点です。

固定IPアドレス付与に特化したサービスを契約する

現在のインターネットプロバイダ契約を維持したまま、固定グローバルIPアドレスを安価に利用できる特化型サービスを提供するプロバイダもあります。このサービスでは、必要な固定グローバルIPアドレスを契約できるため、柔軟かつコスト効率の良い選択肢として利用されています。導入も比較的簡単ですが、通信の安定性に課題がある場合があります。

このタイプのサービスは、インターネット経由で事業者が提供するVPNサーバに接続し、その接続元のPCや端末に固定グローバルIPアドレスを付与する仕組みです。ただし、通信は必ず外部のVPNサーバを経由するため、サーバの混雑状況などによって通信速度が低下する可能性があります。また、社内で独自にVPNサーバを運用している場合は、複数のVPNを経由することになり、さらに通信の安定性に影響が及ぶことがあります。

プロバイダで固定IPアドレスを契約する際の注意点

払い出しを受けた固定IPアドレスをどのように活用するかはユーザー次第です。技術的な仕様を理解した上で、活用方法を検討する必要があります。まず、一般的な固定IPアドレスはIPv4 PPPoE接続が前提です。複数の固定IPアドレスを契約する場合は対応ルーターが必要になり、契約アドレス数のうち複数を自由に設定できない場合もあります。

一般的な固定IPアドレスはIPv4 PPPoE接続が前提

IPアドレスは従来の「IPv4アドレス」と、新しい「IPv6アドレス」があります。これらは仕様が異なるため互換性はありません。IPv4アドレスは主に「IPv4 PPPoE接続」で利用され、現在多くのプロバイダがこの形式で固定グローバルIPアドレスを提供しています。

一方、IPv6アドレスは、LAN内の機器が直接インターネットに接続する「IPv6 IPoE接続」で使用されます。IPv6 IPoE接続は、割り当て可能なIPアドレス数の多さや通信構造の簡素さが特徴で、世界的にIPv4 PPPoE接続からの移行が進んでいます。

なお、一部のプロバイダでは半固定のIPv6アドレスを提供していますが、回線事業者によるメンテナンスや変更作業などでアドレスが変更される可能性がある点に留意が必要です。

【関連記事:Wi-Fi6とIPv6の違いとは?メリットや利用方法をわかりやすく解説

複数の固定IPアドレスを契約する場合は対応ルーターが必要

契約する固定グローバルIPアドレスが1つの場合、接続時に自動で割り当てられるIPアドレスが固定となるため、一般的なルーターで問題なく設定できます。複数の固定グローバルIPアドレスを契約する場合、社内の各機器に割り当てるには、複数アドレスの割り当てに対応したルーター製品が必要です。

一般的に、2個や4個の場合は「ポートフォワーディング」や「静的NAT登録」、8個や16個の場合は「IP Unnumbered接続」を設定します。これらの機能はルーター製品によって対応・非対応が異なります。契約する固定グローバルIPアドレスの個数や使用方法によっては、ルーターの買い替えが必要です。

契約アドレス数のうち複数を自由に設定できない場合がある

複数の固定グローバルIPアドレスを契約する場合、契約した全てのアドレスを自由に使用できるわけではありません。特に、契約するアドレス数が増えるほど制約が生じるため、この点を十分に理解しておくことが重要です。

例えば、2個や4個の固定IPアドレスを契約した場合、対応するルーターがあれば全てのアドレスを利用することができます。しかし、8個や16個といった数が多い場合、いくつかのアドレスは特定の用途に予約されます。最初のアドレスはネットワークアドレス、最後のアドレスはブロードキャストアドレスとしてシステムに使用され、ユーザーが自由に設定することはできません。

さらに、残りのアドレスのうち1つはルーターに割り当てられるため、例えば8個の固定IPアドレスを契約した場合、実際にサーバやPCに割り当てて使用できるのは5個となります。以上から、必要な固定IPアドレスの個数は慎重に検討しましょう。

固定IPアドレスを高コスパで契約するならイッツコム!

オフィスで固定グローバルIPアドレスが必要な場合、光回線の法人向けプロバイダサービスを契約するのが有利です。動的IPアドレスのみ使用する場合よりコストはかさみますが、プロバイダ・光回線一体型のサービスなら契約を一本化でき、トータルコストを抑えられます。

「イッツコム光接続サービス」は、イッツコム自前の光回線網を使用する、プロバイダ・光回線一体型の法人向けサービスです。下り最大2Gbpsの高速回線である上、夜間や休日のトラフィック集中を回避しやすいIPv6 IPoEに標準対応し、通信速度の安定性にも優れます

「固定IPアドレスプラン」は標準で固定グローバルIPアドレスを1個付与し、オプション契約で4個や8個の払い出しも可能です。契約もサポートも窓口は1つのため、設定や通信などのトラブルの際もスピーディに問題を解決できます。

まとめ

固定グローバルIPアドレスは、Webサーバ・VPNサーバ・ファイルサーバといった各種サーバの自社運用、IPカメラによる遠隔監視やクラウドサービス利用時の端末制限などに活用できます。複数アドレスを契約する場合、システム予約用やルーター割り当て用の固定IPアドレスを除いて、自由に割り当てられるアドレス数を計算することが必要です。

契約アドレス数が多いほどコスト増となりますが、プロバイダ・光回線一体型サービスなら、比較的低コストで固定IPアドレスプランを契約できます。固定IPアドレスの契約をお考えなら、コストパフォーマンスの高い契約・運用方法を提案できるイッツコムにご相談ください。