パートの社会保険加入条件とは?2026年改正と企業対応
目次
パート・アルバイトの社会保険加入は、勤務時間だけでなく、雇用期間や学生区分、事業所の規模などを踏まえて判断します。2026年以降は加入対象の拡大も予定されているため、企業側では対象者の把握や従業員への説明を早めに進めることが求められます。
本記事では、企業が押さえておきたいパートの社会保険加入条件と、制度改正に備えた対応のポイントを整理します。
パート・アルバイトの社会保険加入基準

パートやアルバイトの社会保険加入は、正社員かどうかではなく、実際の働き方によって判断します。企業がまず確認するのは、自社が社会保険の適用事業所に該当するかどうかです。その上で、対象となる従業員の所定労働時間と所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上に当たるかを見ます。
同じ事業所で同様の業務に従事する通常の労働者と比べて、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数がいずれも4分の3以上であれば、社会保険の加入対象です。この場合、短時間労働者向けの細かな要件を確認する前に、4分の3基準で被保険者に該当します。
なお、4分の3基準を満たさないパート・アルバイトでも、短時間労働者として社会保険の加入対象になることがあります。次の観点を順番に確認し、加入漏れが起きないように管理してください。
- 労働時間
- 雇用見込みと学生要件
- 賃金と勤務先の規模
(参考:日本年金機構『適用事業所と被保険者』)
(参考:日本年金機構『短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大』)
週20時間以上は所定労働時間で判断する
週20時間以上かどうかは、実際に働いた時間ではなく、雇用契約書や就業規則で定められた所定労働時間を基準に判断します。突発的な残業によって一時的に20時間を超えても、原則としてこの要件には含まれません。
ただし、実労働時間が恒常的に週20時間以上となっている場合は、契約内容の見直しや加入判断が必要になることがあります。企業側では、契約上の所定労働時間と実際の勤務実態にずれがないかを定期的に確認し、週20時間前後で働く従業員を把握しておきましょう。
雇用見込みと学生要件も加入判断に関わる
短時間労働者として加入対象になるかを判断する際は、2か月を超えて使用される見込みがあるかどうかも確認します。企業は、雇用契約書に記載された契約期間、更新の有無、過去の更新実績などをもとに判断します。
学生区分も確認が必要です。昼間の学生は、原則として短時間労働者の適用対象から外れます。ただし、休学中や定時制、通信制などに在籍している場合は対象になることがあるため、採用時や契約更新時に就学状況を確認しておくと判断ミスを避けられます。
月額8万8,000円以上と勤務先の規模も条件になる
現行制度では、所定内賃金が月額8万8,000円以上かどうかも加入条件の1つです。年収に換算するとおよそ106万円に相当するため、「106万円の壁」として扱われることがあります。所定内賃金には、残業代や賞与、臨時的に支払われる賃金、通勤手当などは含めません。
他に、事業所が特定適用事業所や任意特定適用事業所、国や地方公共団体の事業所などに該当するかどうかも確認します。対象となる企業では、短時間労働者の加入判定を定期的に行い、該当者が出た場合に速やかに手続きできる体制を整えておく必要があります。
2026年以降の改正で企業対応はどう変わるのか

現行の加入条件は、2025年6月に成立した年金制度改正法により、今後段階的に見直されます。企業側では、どの要件がいつ変わるのかを把握し、自社のパート・アルバイトが新たに加入対象になる時期を確認しておくことが重要です。
月額8万8,000円の賃金要件は2026年10月に撤廃予定
最低賃金の上昇により、週20時間以上働けば自動的に月額8万8,000円を満たすようになることから、2026年10月には、短時間労働者の加入要件のうち、所定内賃金が月額8万8,000円以上という賃金要件が撤廃される予定です。撤廃後は、月額8万8,000円に届かないことを理由に、加入対象外と判断することはできなくなります。
これまで賃金要件によって対象外だったパートも、労働時間や雇用見込み、学生要件、勤務先の規模といった他の条件を満たせば加入対象になり得ます。
企業規模要件は2027年10月以降に段階的に縮小される
企業規模要件についても見直しが予定されています。ただし、2026年10月に一括で撤廃されるわけではありません。厚生労働省の公表資料によると、2027年10月から従業員数36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上、2035年10月から10人以下の企業へと、段階的に対象が広がっていきます。
ここでいう従業員数は、単純な在籍者数ではなく、フルタイムの従業員および4分の3基準を満たすパート・アルバイトを合わせた厚生年金保険の被保険者数で数えます。多店舗展開している企業では、店舗ごとではなく法人全体で対象規模を確認する点に注意が必要です。
| 施行時期 | 対象となる企業規模(厚生年金保険の被保険者数) |
|---|---|
| 2027年9月まで | 51人以上 |
| 2027年10月以降 | 36人以上 |
| 2029年10月以降 | 21人以上 |
| 2032年10月以降 | 11人以上 |
| 2035年10月以降 | 10人以下(企業規模要件が実質撤廃) |
(参考:厚生労働省『短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント』)
自社の適用時期と対象者を確認する
賃金要件の撤廃と企業規模要件の縮小が重なることで、これまで対象外だったパート・アルバイトにも加入の可能性が広がります。
企業側では、自社が厚生年金保険の被保険者数で何人規模に当たり、どの施行時期から対象に入るのかを早めに確認しておきましょう。労働条件が変わっていなくても、制度改正によって途中から加入判定が変わることがあります。
【関連記事:働き方改革関連法を分かりやすく!改正点を理解し対策の仕組み作りを】
扶養内で働きたい従業員に説明すべき106万円と130万円の違い

扶養内で働くことを希望するパート・アルバイトからは、106万円と130万円の違いについて質問を受けることがあります。どちらも「壁」と呼ばれますが、関わる制度は異なります。
企業側では、社会保険加入の判定と扶養認定を混同しないよう、従業員に分けて説明するとよいでしょう。
106万円の壁と130万円の壁は制度上の位置づけが異なる
前章で触れたように、106万円の壁は、勤務先で社会保険の被保険者になるかどうかを考える際に意識されてきた基準です。月額8万8,000円以上という賃金要件を年収に換算すると、およそ106万円になるため、このように呼ばれています。
130万円の壁は、配偶者などの健康保険における被扶養者として認定されるかどうかに関わる基準です。勤務先で社会保険に加入するかどうかの判定とは、別の枠組みで扱われます。
130万円の壁については、年収の見込みだけでなく、配偶者との生計維持関係なども確認の対象になります。金額だけを見て単純に判断できるものではなく、扶養している側の状況も含めて確認される点を説明しておくと、従業員の誤解を防ぎやすくなります。
扶養内のつもりでも勤務先の加入判定が優先される場合がある
年収が130万円未満であっても、従業員が勤務先で4分の3基準や短時間労働者の要件を満たす場合は、健康保険・厚生年金保険への加入対象になります。企業は、配偶者などの扶養に入れるかどうかより先に、勤務先で本人が被保険者に該当するかを判定します。
従業員が「年収を130万円未満に抑えれば扶養内で働ける」と考えていると、実際には勤務先の加入要件に該当していた、という認識のずれが生じます。企業側では、106万円の壁と130万円の壁が別の基準であることを説明し、思い込みによる判断ミスを防ぐことが大切です。
(参考:日本年金機構『健康保険の被扶養者として認定されるための要件の一つに、年収が130万円未満であることという収入要件がありますが、この要件に変更はありますか。』)
社会保険加入を従業員に説明するときのポイント

パート・アルバイトが社会保険に加入すると、給与から健康保険料と厚生年金保険料が控除されます。扶養内で働くことを希望している従業員にとって、手取りの変化は特に気になりやすい点です。
ただし、社会保険への加入は負担だけでなく、将来の年金や休業時の保障にも関わります。企業が従業員へ説明する際は、保険料の控除額だけで判断させるのではなく、加入によって変わる保障内容も含めて伝える必要があります。
手取りの変化は具体的な金額で伝える
社会保険に加入すると、健康保険料と厚生年金保険料が給与から差し引かれます。同じ勤務時間・給与額のまま加入した場合、控除額が増える分、従業員の手取りは下がります。
従業員からは「結局いくら減るのか」「扶養内のまま働いたほうがよいのか」といった質問が出ることがあります。そのため、説明時には制度の概要だけでなく、現在の給与額をもとにした手取りの目安を示すと、従業員が働き方を考えやすくなります。
勤務時間を抑えて扶養内にとどまる場合と、勤務時間を増やして社会保険に加入する場合では、月々の手取りだけでなく、将来受けられる保障も変わります。企業は、従業員が比較できるように、複数の働き方を並べて説明するとよいでしょう。
保障が増える点も生活場面に置き換えて説明する
社会保険に加入すると、従業員が受けられる保障も変わります。厚生年金保険に加入すれば、将来受け取る年金に老齢厚生年金が上乗せされます。国民年金だけの場合と比べて、老後の給付に違いが出る点は説明しておきたいところです。
健康保険の被保険者になると、業務外の病気やけがで仕事を休んだときの傷病手当金、出産で休業するときの出産手当金なども対象になります。これらは、扶養に入っている家族として健康保険を使う場合とは異なる保障です。
従業員が「保険料が引かれるから損」と受け止めている場合でも、病気で働けないとき、出産で休むとき、将来の年金を考えるときには、加入によって得られるものがあります。手取りの減少と保障の増加を切り分けて伝えることで、制度への誤解を減らせます。
(参考:日本年金機構『パート・アルバイトの皆さまへ、配偶者の扶養の範囲内でお勤めの皆さまへ』)
扶養内で働くか加入して働くかを整理する
扶養内で働きたい従業員には、勤務時間を抑える選択肢があります。ただし、勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合は、年収130万円未満であっても被保険者になることがあります。
そのため、説明時には「扶養内に収めるにはいくらまで働けるか」だけでなく、「勤務時間や契約条件によっては社会保険の加入対象になる」ことも伝える必要があります。106万円、130万円、週20時間といった基準を混同したまま働き方を決めると、従業員と企業の認識にずれが生じかねません。
企業は、従業員の希望を聞いた上で、現在の契約条件、今後の勤務時間、加入要件への該当可能性を確認します。扶養内に抑える場合も、社会保険に加入して働く場合も、本人が納得して選べるように情報を整理しておくことが求められます。
【関連記事:アルバイト採用単価の目安や計算方法|3つのアプローチでコスト削減】
企業が判断に迷いやすいパートの社会保険加入ケース

パート・アルバイトの社会保険加入では、基本条件を押さえていても判断に迷う場面があります。特に、学生、短期契約、ダブルワークは、従業員本人も誤解しやすい論点です。
ここでは、企業が確認すべきポイントをケース別に整理します。
学生パートは4分の3基準に該当するかも確認する
学生パートを確認する際に注意したいのは、短時間労働者の学生要件だけで判断しないことです。短時間労働者の要件では学生が原則対象外とされますが、通常の労働者の4分の3以上働いている場合は、学生であることだけを理由に社会保険の対象外とはいえません。
例えば、授業日数が少ない学生や、長期休暇中に多く働く学生などは、契約上の所定労働時間や所定労働日数が大きくなることがあります。その場合は、 「学生かどうか」ではなく、まず4分の3基準に該当するかを確認します。
採用時やシフト変更時には、学生区分だけでなく、所定労働時間・所定労働日数が通常の労働者と比べてどの程度あるかも確認しておきましょう。学生パートを一律に対象外と扱わず、4分の3基準と短時間労働者の要件を分けて見ることが、加入漏れの防止につながります。
(参考:日本年金機構『学生は、4分の3基準に該当していても、学生という理由のみをもって健康保険・厚生年金保険の被保険者とならないのですか。』)
短期契約は更新の見込みや実績も確認する
契約期間が2か月以内であっても、それだけで社会保険の対象外と判断するのは避ける必要があります。契約書に更新される旨や、更新される場合がある旨の記載がある場合は、契約当初から2か月を超える雇用見込みがあるものとして扱われることがあります。
同じ事業所で同様の契約が過去に更新された実績がある場合も、判断材料になります。形式上は短期契約でも、実態として継続雇用が見込まれるなら、加入対象として扱う可能性があります。
確認時は、契約期間だけでなく、更新条項、過去の更新実績、実際の勤務予定を合わせて見ます。2か月を超えて使用しないことを書面で合意している場合は扱いが変わるため、契約書や説明記録を保管し、後から判断根拠を示せる状態にしておきましょう。
(参考:日本年金機構『短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A』)
ダブルワークは自社での勤務条件と届出要否を分けて確認する
副業や兼業をしている従業員については、他社での勤務時間をそのまま自社の労働時間に足して、週20時間以上かどうかを判定するわけではありません。社会保険の加入要件は、勤務先ごとに所定労働時間、雇用見込み、賃金、事業所規模などを確認します。
そのため、従業員から「別の勤務先と合わせると週20時間を超える」と相談された場合でも、まず見るべきなのは自社での契約内容と勤務実態です。自社だけでは加入要件を満たさない場合、短時間労働者としての加入対象にはならないケースがあります。
ただし、複数の適用事業所でそれぞれ被保険者に該当する場合は、二以上事業所勤務の手続きが必要です。この手続きは従業員本人が行いますが、会社にも報酬額や資格取得に関する確認が発生します。ダブルワークの従業員には、加入判定は勤務先ごとに行うこと、複数の勤務先で被保険者になる場合は別途手続きが必要になることを説明しておきましょう。
(参考:日本年金機構『複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き』)
まとめ

パート・アルバイトの社会保険加入は、4分の3基準と短時間労働者の要件を順番に確認して判断します。2026年以降は賃金要件の撤廃や企業規模要件の縮小により、これまで対象外だった従業員にも加入対象が広がる見込みです。
企業は、雇用契約書や勤怠実績をもとに対象者を洗い出し、加入要件に該当する従業員へ早めに説明できるよう準備します。扶養内で働きたい従業員には、106万円と130万円の違い、勤務先での加入判定、加入後の手取りと保障の変化を分けて伝えましょう。
学生、短期契約、ダブルワークなどのケースでは、形式的な属性や契約期間だけで判断せず、勤務実態や更新見込みまで確認することが欠かせません。制度改正に備えて対象者の把握と説明体制を整えておくことが、加入漏れや現場での混乱を防ぐことにつながります。