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働き方改革関連法を分かりやすく!改正点を理解し対策の仕組み作りを

働き方改革関連法は、労働者にとっては同一労働同一賃金の実現やワークライフバランスの向上、企業にとっては魅力ある職場作りによる人材不足解消などを後押しする法律です。

ほとんどの改正点はすでに施行済みで、一部事業・業務に限って経過措置が取られていた時間外労働の上限規制も、2024年4月1日から施行されます。

本記事では、働き方改革関連法についてより理解を深めるために、基礎知識や改正点のポイント、必要な仕組み作りに焦点を当てて紹介します。

働き方改革関連法とは?

「働き方改革」は、働き手が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できる社会の実現を目指しています。「働き方改革関連法」は働き方改革推進の骨子となる法律です。働き方改革のビジョンに沿って複数の労働関連法を改正するもので、2018年7月6日に公布され、2019年4月1日から順次施行されています。

働き方改革推進に影響する労働関連法を改正・整備する法律

働き方改革関連法とは、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現、つまり働き方改革を総合的に推進するための法律を指します。正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」です。

労働基準法・労働安全衛生法・パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法など、働き方改革の推進に影響する多数の労働関連法を改正・整備し、主に以下3点の実現を目指す骨子とします。

・長時間労働の是正
・多様で柔軟な働き方の実現
・雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

働き方改革関連法が施行される背景

働き方改革関連法は、日本が直面するさまざまな課題を解決するために必要な法律です。主な課題には以下のようなものがあります。

・少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少
・企業におけるダイバーシティの実現の必要性
・共働きや介護との両立など働き手のニーズの多様化
・正規社員と非正規社員の間の不合理な待遇差
・長時間労働の慢性化や健康被害
・有給取得率の低迷

これらを解決するには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる健全な労働環境作りが必要です。そこで法整備により、ワークライフバランスの向上や同一労働同一賃金の実現、魅力ある職場作りによる人手不足解消などを後押しします。

働き方改革関連法は一部業種以外は施行済み

働き方改革関連法の主な改正点は以下8つです。

(1) 時間外労働の上限規制
(2) 「勤務間インターバル制度」の導入促進
(3) 年次有給休暇の確実な取得
(4) 労働時間状況の客観的な把握
(5) 「フレックスタイム制」の拡充
(6) 「高度プロフェッショナル制度」の導入
(7) 月60時間超残業に対する割増賃金率引き上げ
(8) 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

各改正点の施行スケジュールは以下の通りです。

(1):大企業は2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日、自動車運転業務や建設事業などは2024年4月1日に施行
(2)~(6):2019年4月1日に施行
(7):大企業は実施済み。中小企業は2023年4月1日に施行
(8):大企業は2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日に施行

つまり、(1)についての自動車運転業務や建設事業などに対する例外的な経過措置を除き、(1)~(8)は大企業・中小企業ともにすでに施行されています。

働き方改革関連法の改正点8つのポイント

働き方改革関連法の主な改正点は8つです。労働者の権利や健康を守り、また働き方の柔軟な選択を促すために、企業側にはさまざまな義務が定められています。「時間外労働の上限規制」や「年次有給休暇の取得義務化」については、明確に罰則規定も定められていることに注意が必要です。

時間外労働の上限規制(罰則あり)

労働基準法で定められた労働時間の限度は1日8時間・1週40時間ですが、この限度を超えるには36協定の締結・届出が必要です。働き方改革関連法の施行前は、残業時間については大臣告示による上限(行政指導)があるのみで、法律上は上限がありませんでした。施行後は、以下のように法律で残業時間の上限が定められています。

1.残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間。臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない
2.臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下の時間を超えることはできない
・時間外労働:年720時間以内
・時間外労働+休日労働:月100時間未満、2~6か月平均80時間以内
3.月45時間を超えられるのは年6か月まで

これらに違反した場合、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)を科される恐れがあります。

年次有給休暇の取得義務化(罰則あり)

働き方改革関連法の施行前は、労働者が自ら申し出なければ有給を取得できませんでした。現在は全ての企業において、使用者が労働者に希望を聞き、希望を踏まえて取得時季を指定することが義務付けられています。

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の有給休暇を取得させることが必要です。取得時期の決定権は労働者にあるため、単に5日取得させるのではなく、労働者の意思を尊重することが求められます。フルタイム労働者でも特定パートタイム労働者でも、年10日以上の有給休暇の権利があれば、有給休暇取得義務の対象者です。

取得させる義務のある労働者に年5日の有給休暇を取得させなかった場合、または希望する時期に有給休暇を与えなかった場合、1人当たり30万円以下の罰金が科せられます。

雇用形態に関われない公正な待遇の確保

正社員と非正規社員の間で、あらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されています。裁判の際に判断基準となる「均衡待遇規定」「均等待遇規定」を法律に整備し、同一労働同一賃金を実現するための法改正です。

・均衡待遇規定:個々の待遇(基本給・賞与・役職手当・食事手当・福利厚生・教育訓練など)ごとに、性質や目的を考慮して不合理な待遇差を禁止する旨を明確化
・均等待遇規定:差別的取り扱いの禁止について、パートタイム労働者に加えて有期雇用労働者も対象とする

「勤務間インターバル制度」の導入促進

働き方改革関連法は「勤務間インターバル制度」の導入を努力義務としています。勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後から翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。この仕組みを努力義務とすることで、働き手の十分な生活時間や睡眠時間を確保します。

制度を導入した働き方の例は、インターバルを11時間と設定し、残業時間が多い日は翌日の始業時刻を後ろ倒しにするなどです。

労働時間状況の客観的な把握

働き方改革関連法により、企業は労働時間の状況を客観的に把握することも義務付けられています。以前は「割増賃金を適正に支払うため」という観点から、裁量労働制が適用される方や管理監督者は、労働時間状況の客観的な把握の対象外でした。

施行後は健康管理の観点から、全ての労働者の労働時間状況について、客観的な把握が義務付けられています。具体的な方法はタイムカードによる記録、PCの使用時間の記録などです。残業が一定時間を超えた労働者から申し出を受けた場合、使用者は産業医による面接指導を実施する義務があります。

「フレックスタイム制」の拡充

フレックスタイム制における労働時間の清算期間の上限も変更されています。以前は最長1か月でしたが、改正後は最長3か月まで延長できるようになりました。

以前の制度で清算期間が1か月の場合、法定労働時間を超えた月は割増賃金を支払う必要があり、逆に下回る月は所定労働時間働いていないとして欠勤扱いになります。

改正後の制度で清算期間を3か月とすると、長く働いた月の時間分を休んだ月に振り替えできる仕組みです。3か月の平均で法定時間内までなら長時間働いた月でも割増賃金を支払う必要はなく、振り替え分により休んだ月にも欠勤扱いになりません。働き手が3か月内で働く時間を調整でき、子育てや介護にも対応しやすくなります。

「高度プロフェッショナル制度」の導入

働き方改革関連法により「高度プロフェッショナル制度」が新設されました。高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門的知識や技能を持ち年収要件などを満たす人材に対し、労働基準法に定められた労働時間・休憩・休日および深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

対象となる人材は、確実に支払われると見込まれる年収が1,075万円以上で、特定の業務(金融商品の開発や資産運用など)に従事していることなどを前提とします。年間104日以上の休日確保措置、健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置などにより、高度人材の健康を守りつつ柔軟な働き方を実現する制度です。

月60時間超残業に対する割増賃金率引き上げ

働き方改革関連法の施行前は、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について、大企業は50%以上・中小企業は25%以上という格差がありました。

改正後は中小企業も大企業と同じ50%以上となっており、使用者は月60時間超残業について50%以上の率で計算した割増賃金を支払う必要があります。

働き方改革関連法の対応に必要な仕組み作り


時間外労働の上限規制は、「建設事業」「自動車運転の業務」「医師」などに限り、2024年3月31日までは適用しないという特例が設けられていました。しかし2024年4月1日以降、これらの事業・業務にも時間外労働の上限規制が適用されます。罰則規定もあるため、ICTツールを活用した対応が必要です。

公正な勤怠管理や労務申請の仕組みを整備・運用する

働き方改革関連法に対応するには、就業規則を変更し、労使協定に反映しなければなりません。その上でWeb打刻ツールや勤怠管理ツールなどを用い、出退勤・休憩・残業時間・有給取得などを客観的に把握するとともに、労働者の権利を守ることが求められます。

病院や建設現場、運送業に資するタクシー・トラックなど、就業場所によらず公正に適用可能な勤怠管理や労務申請の仕組みを整備・運用することが必要です。

【関連記事:テレワークの労務管理はどうすべき?課題解決のコツやツールを解説】

労働時間だけでなく業務のプロセスや成果も把握する

労働時間状況だけでなく、仕事のプロセスや成果も把握できる仕組み作りが必要です。誰がどのような業務に従事したかを、現場レベルでなるべく正確に把握し、給与計算に反映します。

これは同一労働同一賃金の原則を守るため、また高度プロフェッショナル制度を導入するために重要な措置です。

例えばタスク管理ツール・プロジェクト管理ツール・グループウェアなどを導入し、業務を可視化します。建設現場で働く社員やタクシー・トラックのドライバーなどの勤務実態も把握しやすいように、スマホやタブレットでも活用できるクラウド型のツールを導入するのがおすすめです。

【関連記事:テレワークのマネジメント課題を解決!成功に必要な環境整備や手法を徹底解説】

柔軟な働き方に対応できるファイル共有システムを整備する

働き方改革関連法は、テレワーク・フレックスタイム制・勤務間インターバル制度など、労働者が働く場所や時間を柔軟に選択できる働き方を想定しています。柔軟な働き方を実現するには、働く場所や時間が違っても業務遂行に支障を出さないために、ファイル共有システムの整備も大切です。

クラウドストレージならインターネット経由で利用でき、スマホやタブレットからも簡単にアクセスできます。スムーズに導入できる上、オンプレミス型ファイルサーバのような保守管理の手間もかかりません。建設現場と本社・支社、タクシー・トラックのドライバーと事務所など、離れた拠点同士の情報共有もしやすくなります。

【関連記事:法人向けファイル共有サービスの選定ポイントは?「Box」が選ばれる理由を解説】

「Box」によるコンテンツ管理で働き方改革関連法に対応

働き方改革関連法に対応して柔軟な働き方を実現するには、勤怠管理ツール・グループウェア・クラウドストレージなど、複数のツールを整備しなければなりません。しかし、複数ツールの導入や使い分けは悩ましい問題でしょう。

クラウド型コンテンツマネジメントシステム「Box」は、働き方改革推進の基盤となり得るツールです。全ての有料プランは容量無制限で、あらゆるファイルを一元管理できる上、オンライン共同編集にも対応します。

「Box Notes」などBox上の機能により、タスク管理ツール・プロジェクト管理ツール・グループウェアのような使い方も可能です。ファイルのアクセス履歴やバージョン履歴は自動的に保存され、70種類以上の監査ログも取得でき、労働時間や従事した業務の客観的な把握にも対応します。

さらに1,500以上のアプリと連携できるため、外部の勤怠管理ツールなどとも併用しやすく、機能拡張を求める際にも柔軟な運用が可能です。

まとめ


働き方改革関連法は、労働者にとっては働き方の柔軟な選択やワークライフバランスの向上、企業にとっては魅力ある職場作りによる人材不足解消などを後押しする法律です。ほとんどの改正点は大企業・中小企業ともに施行済みですが、2024年4月1日以降は建設事業や運送事業などに対する時間外労働の上限規制も適用されます。

法改正に対応するには、公正な勤怠管理や労務申請の仕組みを整備・運用することが必要です。イッツコムなら法改正に柔軟に対応できる「Box」の導入・運用をきめ細やかにサポートできます。働き方改革関連法への対応をお求めなら、必要なツール整備と充実したサポートを提供できるイッツコムにご相談ください。