労働施策総合推進法の改正とは?2026年の企業対応を解説
目次
2026年施行の労働施策総合推進法等の改正では、企業のハラスメント対策や人事労務体制の見直しが求められます。既存の社内規程や相談窓口をそのまま使うだけでは、改正後の相談対応や現場運用に不足が生じる可能性があります。
今回の改正では、制度内容を把握するだけでなく、現場で使えるルールや対応体制に落とし込むことが求められます。対応範囲を曖昧にしたまま準備を始めると、担当部署や社内周知の進め方が整理しにくくなります。
本記事では、「労働施策総合推進法 改正」で企業が押さえるべき内容を整理し、2026年施行に向けて確認したい社内体制や対応手順を解説します。
労働施策総合推進法の改正で押さえる全体像

まずは、今回の改正で企業対応が必要になる項目を整理します。対象となる法律や関係部門を確認し、後続の章で具体的な対応内容を見ていきます。
2026年4月と10月の施行項目を確認する
労働施策総合推進法等の改正では、2026年4月施行分と2026年10月施行分があります。
4月施行分では、治療と仕事の両立支援が事業主の努力義務として位置づけられています。10月施行分では、カスタマーハラスメント対策と、求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置が義務化されます。
厚生労働省も、カスタマーハラスメントと求職者等セクハラの防止措置が令和8年10月1日から事業主の義務になると公表しています。
| 施行日 | 対象法律 | 主な内容 | 対応区分 |
|---|---|---|---|
| 2026年4月1日 | 労働施策総合推進法 | 治療と仕事の両立支援 | 努力義務 |
| 2026年4月1日 | 女性活躍推進法 | 男女間賃金差異・女性管理職比率等の情報公表 | 101人以上の企業は義務、100人以下は努力義務 |
| 2026年10月1日 | 労働施策総合推進法 | カスタマーハラスメント防止措置 | 義務 |
| 2026年10月1日 | 男女雇用機会均等法 | 求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置 | 義務 |
(参考:厚生労働省『職場におけるハラスメントの防止のために』)
(参考:厚生労働省『令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について』)
対応項目ごとに関係部門を整理する
改正項目によって、関係する部門は異なります。人事・労務部門だけで対応するのではなく、顧客対応部門、採用担当部門、現場管理職、産業保健スタッフなど、関係者を早い段階で洗い出しておく必要があります。
| 対応項目 | 主な関係部門 |
|---|---|
| カスタマーハラスメント対策 | 顧客対応部門、現場管理職、人事・労務部門、法務部門 |
| 求職者等セクハラ防止措置 | 採用担当部門、面接官、リクルーター、人事・労務部門 |
| 治療と仕事の両立支援 | 人事・労務部門、産業医、上長、産業保健スタッフ |
| 女性活躍推進法の改正 | 人事・労務部門、経営企画部門、広報・IR部門 |
担当部門が曖昧なままだと、社内調整の段階で対応が止まりやすくなります。最初に関係部門を整理しておくと、社内体制の整備やスケジュール作成に移りやすくなります。
カスタマーハラスメント対策の義務化

カスタマーハラスメント対策では、従業員の就業環境を守る視点が欠かせません。ここでは、社内で決めておくべき範囲と対応方針を整理します。
カスハラに当たる行為の範囲を決める
カスタマーハラスメントに当たるかどうかは、顧客などの言動が社会通念上許容される範囲を超えているかで判断します。
社内で整理したいのは、要求内容と手段・態様を分けて見る考え方です。例えば、契約内容を大きく超える要求、不当な金銭要求、長時間の拘束、威圧的な言動、SNSでの拡散をほのめかす行為などは、対応方針を決めておきたい場面です。
判断基準が曖昧なままだと、現場担当者によって対応が分かれます。自社の商品・サービス、顧客接点、問い合わせ経路に照らして、どのような行為をカスハラとして扱うのかを明文化します。
現場担当者を守る対応方針を作る
カスハラ対策では、顧客対応を現場任せにしない体制が必要です。対応を続ける範囲、上長へ引き継ぐ基準、録音や記録の扱い、出入り禁止や取引停止を検討する場面などを社内方針として定めます。
現場担当者が「顧客対応だから断れない」と受け止めると、被害が見過ごされやすくなります。会社として対応範囲を明確にしておくことで、担当者が過度な負担を抱え込まない運用につなげられます。
(参考:厚生労働省『事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』)
求職者等セクハラ防止措置の義務化

求職者等セクハラ防止措置では、採用活動のどこにリスクがあるかを把握することが出発点です。ここでは、接点の洗い出しと社内ルール化の進め方を確認します。
採用活動中の接点を洗い出す
求職者等へのセクシュアルハラスメントは、すでに雇用している従業員だけを前提にした対策では足りません。採用応募者、インターンシップ参加者、OB・OG訪問を行う学生など、採用活動で関わる相手も対象になります。
まず、自社が求職者等と接する場面を洗い出します。採用面接、会社説明会、インターンシップ、リクルーター面談、OB・OG訪問、内定者向けイベントなど、接点は複数あります。
| 接点の場面 | 関係する従業員の例 | リスクの特徴 |
|---|---|---|
| 採用面接 | 人事担当者・役員・現場管理職 | 評価権限を持つ立場からの言動 |
| 会社説明会 | 人事・広報担当者 | 多人数で発生が見えにくい |
| インターンシップ | 現場従業員・指導担当者 | 業務指導の延長として接触が生じやすい |
| OB/OG訪問 | OB/OG従業員 | 1対1・社外での接触が多くなりやすい |
| リクルーター面談 | リクルーター従業員 | 非公式な場で個別接触が起きやすい |
| 内定者懇親会 | 人事・現場従業員 | 労働契約成立の有無で適用指針の整理が変わる |
この整理を行うと、研修対象者やルール整備の範囲が見えやすくなります。採用担当者だけでなく、現場従業員や若手従業員が求職者等と接する場面も確認しておきます。
面接官・リクルーターの禁止行為を明確にする
採用活動では、企業が評価する立場にあるため、求職者等は不快な言動があっても拒否しにくい状況に置かれます。面接官やリクルーターの個人判断に任せるのではなく、避けるべき言動を社内ルールとして示す必要があります。
問題になり得るのは、交際経験、外見や体形、結婚・出産の予定、性的な冗談、業務と関係のない食事や飲み会への誘いなどです。連絡先の交換やSNSでの接触も、業務上必要な範囲を超えるとリスクになります。
採用に関わる従業員へは、「悪意がなければ問題ない」という理解ではなく、相手が断りにくい立場にあることを前提に行動するよう周知します。
(参考:厚生労働省『事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』)
治療と仕事の両立支援と関連改正

2026年4月施行分は、10月施行のハラスメント対策と分けて確認します。ここでは、治療と仕事の両立支援と女性活躍推進法の改正を扱います。
治療と仕事の両立支援は努力義務として確認する
治療と仕事の両立支援は、2026年4月1日から事業主の努力義務となっています。対象となるのは、病気の治療を受けながら働き続ける従業員への支援です。厚生労働省は、2026年度から事業主の努力義務になることを公表しています。
確認したいのは、相談窓口、勤務時間への配慮、休暇制度、産業医や主治医との連携方法です。10月施行のハラスメント対策とは準備内容が異なるため、既存制度に不足がないかを別枠で確認します。
女性活躍推進法の改正は対象企業を確認する
女性活躍推進法の改正では、情報公表や認定制度に関する変更があります。労働施策総合推進法の改正とは根拠法が異なるため、関連改正として切り分けて確認します。
主な確認項目は、男女間賃金差異、女性管理職比率、えるぼし認定制度などです。厚生労働省は、令和8年4月1日施行の改正により、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主についても、男女間賃金差異と女性管理職比率が情報公表の必須項目になると案内しています。
| 改正項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 男女間賃金差異 | 対象企業、算出方法、公表方法 |
| 女性管理職比率 | 公表対象、集計範囲、更新時期 |
| えるぼし認定制度 | 認定要件の見直し、社内制度との関係 |
企業が見直す社内体制

ここでは、2026年10月施行のハラスメント対策を中心に、社内で整える項目を整理します。制度ごとに分けるのではなく、実務で使う体制として見直します。
規程・方針に追加する内容を整理する
改正対応では、就業規則やハラスメント防止規程だけに全てを書き込むのではなく、社内文書ごとの役割を分けて整理します。規程は基本方針を示す文書、各種マニュアルは現場運用を支える文書、相談窓口の運用資料は相談対応をそろえる文書として位置づけます。
| 社内文書 | 位置づけ |
|---|---|
| 就業規則・ハラスメント防止規程 | 改正対応の基本方針を示す文書 |
| 採用ガイドライン・面接マニュアル | 採用活動に関する実務ルールを整理する文書 |
| 顧客対応マニュアル | 顧客対応に関する実務ルールを整理する文書 |
| 相談窓口の運用資料 | 相談対応の進め方をそろえる文書 |
このように文書ごとの役割を分けると、同じ内容を複数の資料に重複して書くのではなく、各文書の目的に応じて反映範囲を判断しやすくなります。
相談窓口と対応フローを整える
相談窓口を機能させるには、受付担当、事実確認の担当部署、対応方針を決める部署をあらかじめ定めておきます。
相談者の立場は、事案によって異なります。社内からの相談だけでなく、採用活動に関する相談も受け付けられるよう、受付方法、担当部署、情報管理のルールを決めておきます。
対応フローは、受付、事実確認、対応方針の決定、措置の実施、再発防止の順で整理します。相談内容や対応経緯は、アクセス権限を絞って保管します。記録の残し方を決めておくと、類似案件の予防や後日の確認にも対応しやすくなります。
研修対象を分けて周知する
研修は、全員に同じ内容を伝えるだけでは不十分です。管理職、採用担当者、顧客対応部門、全従業員では、知っておくべき内容が異なります。
| 対象 | 研修・周知の主な内容 |
|---|---|
| 管理職 | 相談を受けた際の初期対応、部下への配慮、社内窓口への引き継ぎ |
| 採用担当者・面接官・リクルーター | 求職者等セクハラの禁止行為、面接時の質問、個別接触時の注意点 |
| 顧客対応部門 | カスハラの判断基準、報告ルート、上長・関係部署への引き継ぎ |
| 全従業員 | 改正内容、社内方針、相談窓口、相談者保護の考え方 |
研修後は、イントラネット、社内掲示、採用担当者向け資料、顧客対応マニュアルなどにも内容を反映します。一度周知して終わらせず、採用活動や顧客対応の場面で確認できる状態にしておきます。
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施行前に進める対応手順

施行前の対応は、現状把握から始めると整理しやすくなります。ここでは、社内で進める順番を確認します。
既存規程と相談体制を棚卸しする
最初に行うのは、現状把握です。前章で整理した規程・相談窓口・研修体制について、すでに運用できている部分と不足している部分を分けます。
この段階では、新しい制度をすぐに作るのではなく、現場で起こり得る相談やトラブルを集めます。顧客対応部門や採用担当部門も含めて確認すると、机上の整理だけでは見えない課題を拾いやすくなります。
規程改定・窓口整備・研修の順で進める
社内体制の見直しは、規程改定、相談窓口、研修の順で進めると整理しやすくなります。規程や方針が固まっていないまま研修を行うと、現場に伝える内容が曖昧になります。
| 対応時期 | 主な対応 |
|---|---|
| 早期に着手 | 現状把握、関係部門の洗い出し |
| 施行前の前半 | 社内方針、相談窓口、対応フローの決定 |
| 施行前の後半 | 対象者別研修、社内周知 |
| 施行直前 | 運用開始前の最終確認 |
| 施行後 | 相談件数と運用状況の見直し |
未対応時のリスクを社内で共有する
ハラスメント対策を整えないまま施行日を迎えると、行政対応だけでなく、従業員の離職、休職、採用イメージの悪化といったリスクも生じます。カスハラでは、現場担当者が守られていないと感じることで、職場への不信感につながります。求職者等セクハラでは、採用活動そのものの信用を損なう可能性があります。
対応スケジュールは、人事・労務部門だけで抱えるものではありません。管理職、採用担当者、顧客対応部門、経営層が同じ優先順位で動けるよう、未対応時のリスクと施行日までの作業を共有しておきます。
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まとめ

労働施策総合推進法等の改正では、企業のハラスメント対策や人事労務体制に関わる見直しが求められます。制度内容を把握した上で、実際の相談対応や社内周知につなげることが重要です。
既存の仕組みで対応できる部分と、不足している部分を分けて整理し、規程、相談窓口、研修の内容を見直しましょう。担当部署や対応フローをあらかじめ決めておくことで、施行後の相談対応や社内周知も進めやすくなります。