1. コラム
  2. コラム
  3. 2025年の崖とは?課題・阻害要因や対策のポイントを徹底整理

2025年の崖とは?課題・阻害要因や対策のポイントを徹底整理

日本企業のデジタル競争力の低迷は国として深刻な問題で、経済産業省は「2025年の崖」について警鐘を鳴らしています。「古いシステムがビジネス変革の足かせになっている」などの課題や危機感を抱える企業も多いでしょう。

DX推進やシステム刷新に着手するものの、既存システムのブラックボックス化などの阻害要因に悩まされる企業は多く、国全体としてスピード感のある対応ができているとはいえません。そこでこの記事では、2025年の崖の課題や阻害要因、克服のポイントを解説します。

国全体の重大事「2025年の崖」とは

レガシーシステムを抱える企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが懸念され、この問題を放置すると2025年以降に多大な経済損失を招くと試算されています。レガシーシステムの刷新は大企業だけでなく中小企業にとっても課題であり、「2025年の崖」を克服するには国全体として迅速な対応が必要です。

2025年以降に毎年最大12兆円の経済損失との試算

「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で使われたキーワードです。企業がレガシーシステムの問題を放置した場合、DXを推進できないだけでなく、2025年以降に毎年最大12兆円の経済損失が生じると試算されています。

この放置シナリオに警鐘を鳴らす意味で「崖」と表現しています。背景として、大企業が長年使い続けている基幹システムの更新時期と、その運用保守を担うITエンジニアの人手不足が重なることなどを挙げられます。問題解決のためには、各企業によるDX推進が急務です。

中小企業も直面するレガシーシステム刷新の課題

レガシーシステムは、老朽化や複雑化、ブラックボックス化などの問題を抱え、経営戦略の足かせや高コストの原因となるシステム全般を指します。特にメインフレームと呼ばれる大型コンピュータは、更新作業が大規模になりがちです。大企業ではこうしたレガシーシステムが多く存在し、中小企業でも改修や機能追加を繰り返した古いシステムを使い続けているケースが少なくありません。

一方、Zenkenが2024年9月に実施した中小企業経営者へのアンケート調査によると、2025年の崖を「知らない」「詳しく知らない」と回答した人が8割に達しました。

「2025年の崖」とは、老朽化した基幹システムの更新時期と技術者不足が重なることで、企業の成長停滞や国全体の生産性・競争力の低下を招く恐れがある状況を指します。この問題は大企業だけでなく、中小企業にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。中小企業経営者のシステム老朽化への無関心や知識不足は、国全体の生産性や競争力の低下を招くリスクとなり得ます。

したがって、中小企業においてもレガシーシステムの課題を認識し、適切な対策を講じることが求められます。これにより、企業の競争力を維持・向上させ、国全体の経済成長にも寄与することが期待されます。

(参考:『8割の中小企業経営者が「2025年の崖」を認識せず…来年以降に迫る“経済損失12兆円”の危機【経営者アンケート】|THE GOLD ONLINE』

国全体としてスピード感のある対応が必要

2025年の崖の課題に対応するには、最新のITシステム・デジタル技術の迅速な導入を推進する必要があります。AI・クラウドサービス・IoTなどの先端技術の採用が不可欠ですが、大幅なシステム刷新は容易ではありません。

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が東証上場企業など4,500社のユーザー企業を対象に行ったアンケート調査によると、レガシーシステムからの脱却はわずかずつ進んでいますが、依然として多数の企業がITシステム刷新の阻害要因に悩まされています。

2025年は目前に迫っています。デジタル庁・経済産業省・IPA(情報処理推進機構)を事務局とする「レガシーシステムモダン化委員会」が発足し、課題分析や対応策の検討を進めるなど、国全体の重大事として対応が急がれている状況です。

(参考:『企業IT動向調査報告書 2024|一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)』
(参考:『企業IT動向調査報告書 2023|一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)』

「2025年の崖」でDX推進とレガシーシステム脱却が課題となる理由

レガシーシステムには、古いプログラミング言語COBOLによる改修・機能追加や過去の担当者によるマクロなど、現役世代では「触れられない」領域が多分に残されています。レガシーシステムに依存し続けた場合、デジタル競争力の低下や技術的負債の増大など、ますます問題が深刻化する恐れがあります。

データ活用の遅れが競争力低下を招くリスク

ICT(情報通信技術)の発達により、ビジネスでは多様なチャネルを通じて日々多くのデータが蓄積されています。しかし、レガシーシステムを使い続ける企業では、既存システムの設計や機能の理解が難しく、新規ビジネスに対応するための機能追加が困難です。

データを効率的に分析・活用できなければ、DXの実現が難しくなり、市場の変化に柔軟かつ迅速に対応できないリスクがあります。AIやクラウド、IoTを活用したサービスが次々に登場する中で、DXの遅れはデジタル競争で不利になる可能性を高めます。

技術的負債による既存システム管理の限界

基幹システムの改修や機能追加を長年繰り返してきた企業では、「既存システムの大半がレガシーシステムに依存している」という状況も珍しくありません。このような企業が直面する大きな課題の1つが、技術的負債の蓄積です。IT予算の多くがレガシーシステムの維持管理に消費され、貴重なIT人材もその対応に費やされてしまいます。

さらに、COBOLエンジニアやDX推進に必要な人材を新たに確保しようとしても、採用や教育に充てるリソースが不足し、レガシーシステム依存から抜け出すことが難しくなります。その結果、業務基盤の維持や次世代への継承が困難となり、システム維持がますます難しくなる悪循環に陥る可能性があります。このままでは、「崖」から転落するような深刻な事態を招きかねません。

システムの安定稼働やデータ保全を担保できなくなる

レガシーシステムを使い続けると、サイバー攻撃などセキュリティリスクへの適切な対策が難しくなり、システムトラブルやデータ滅失のリスクが高くなることも懸念点です。

2025年以降は、SAP ERPやWindows 10など、ビジネスの基盤を担うシステム・サービスのサポート終了が予定されています。サポート終了後は新規機能やセキュリティパッチの提供を受けられなくなり、重大なバグや脆弱性が発見されても修正されません。

また、ExcelやAccessを長年使用している場合、過去の担当者がマクロの設計書を残していなかったり、マクロ担当者が既に退職していて確認できないといったケースもあります。このような状況では、システムの安定稼働やデータ保全が保証できなくなるため、大幅なシステム更新が必要となります。

「2025年の崖」克服に必要なDX推進・システム刷新を阻害する要因

多くの企業がDX推進やシステム刷新に着手しつつも、何らかの阻害要因に悩まされています。例えば、既存システムのブラックボックス化により改修・機能追加が難しいことや、IT知識不足の経営者が方向性を見失ってしまうことです。ITエンジニアの人材不足が招く悪循環も、DX推進の足かせとなっています。

ブラックボックス化で進まない既存システムの改修・拡張

既存システムのブラックボックス化は、DX推進を妨げる大きな要因の1つです。システム導入から長い年月が経つ中で、度重なる改修や機能追加、さらには当時の担当者の離職などにより、システムの機能や構造が分からなくなっているケースは珍しくありません。

肥大化・複雑化した既存システムは、稼働こそ続けているものの、改修や機能追加に対応できる人材が限られていることが課題です。新たなビジネスニーズに応じた機能追加を検討しても、最適なアプローチが見えず、結果としてDX推進の大きな障害となる場合が多く見受けられます。

IT知識不足の経営者がDX推進の方向性を見失う

DX推進の旗振り役には、IT関連の十分な知識が必要です。しかしレガシーシステムを抱えている企業は、経営者も高齢となり、最新のIT事情に詳しくないケースも珍しくありません。

新規ビジネスの創出のために、社内でAIやクラウドなどの活用が議題として挙がることもあるでしょう。意思決定者のIT関連知識が乏しい場合、「具体的にどのように展開していくべきか方向性が定まらない」「明らかに成功しない方向へ舵取りをしてしまう」といった決着になりがちです。

ビジネス課題や変革をもたらしたいサービス・業務領域を整理し、確かな知識やデータに基づくDX戦略を立てることが求められます。

ITエンジニアの人材不足が悪循環を招いている

人材不足もレガシーシステムからの脱却やDX推進を阻害する要因です。

既存システムの改修・機能追加でDX推進を検討するとき、COBOLエンジニアの確保が必要になることもあります。しかしCOBOLはPythonやJavaのような主流のプログラミング言語に比べ市場価値が低く、学ぼうとする人材が多くありません。エンジニアの待遇改善やシニア人材の雇用などを考えることになるでしょう。

また、デジタル競争力の低迷は従業員の転職意識を高める要因になり得ます。レガシーシステムからの脱却やDX推進が遅れることで、システムの運用保守や改修に必要なエンジニアの流出を招くという悪循環を招き、営業パーソンが離職すると事業継続が困難になる恐れもあります。

「2025年の崖」克服を目指すポイント

テックタッチが2024年8月から9月にかけて行った実態調査のレポートによると、多くの企業がレガシーシステムの刷新時期を「1年以内」や「1~3年以内」に検討しています。SAP ERPの標準サポートが終了する2027年に合わせた刷新を検討していると考えられるでしょう。ここでは、「2025年の崖」克服を目指す際のDX推進・システム刷新のポイントを解説します。

(参考:『大企業における「2025年の崖」への対応に関する実態調査|テックタッチ株式会社』

DXの目的やビジョンを全社で共有する

レガシーシステムからの脱却やDX推進を達成するには、課題を放置した場合のリスクを理解した上で、経営層による攻めのIT投資の意思決定が必要です。「AIを使って何かできないか」などと明確なビジョンなしに指示を出すことや、現場の抵抗を無視して急激なシステム変更を強制することは避けましょう。

DX実現のためには、全社的な協力を得て、企業文化や組織マインドを根本的に変革することが必要です。DXの目的やビジョンについて、経営層やプロジェクトチームはもちろん、影響を受ける全ての人材と共有しましょう。

クラウドを活用したシステム移行を検討する

COBOLによるシステム開発を前提とするメインフレームは技術継承が難しく、将来的にまたレガシー化してしまう恐れもあります。レガシーシステムから脱却するために、既存システムから新規システムへの完全な移行を検討・予定している企業も多いでしょう。

移行先のシステムとして活用を検討したいのは、遠隔地のサーバをネットワーク経由で利用できるクラウド型のサービスです。クラウドサービスはシステムの改修や機能追加をベンダーが実施するため、運用保守にかかる費用を大幅に圧縮できます。ITエンジニア人材の不足感があっても運用を継続しやすく、AIを組み込んだサービスなら業務効率化にも役立ちます。

DX推進に向いた条件を満たすシステムを導入する

システムがレガシー化する問題を繰り返さないためには、持続可能な運用体制を構築することが必要です。現場の抵抗を抑えてスムーズに導入するためにも、新システムは以下の条件を満たすものを採用しましょう。

  • 他システムとの連携が容易であること
  • システム活用実態の可視化やデータ分析が容易に行えること
  • ガイドやマニュアルがあり、誰でも操作しやすいUIであること
  • 導入・定着までのコストを最小限に抑えて運用できること

DX推進に向いた、業務効率化・生産性向上につながるシステムであることは必須です。技術・業務の継承も容易で、将来的に想定される問題を払拭できるシステムを選びましょう。

DX推進やシステム活用をサポートできるパートナーを選ぶ

DX推進を前提としたシステム刷新には計画性が求められます。一方で、DX人材は多くのユーザー企業で不足しており、特に不足感が大きいのは「ビジネスアーキテクト」です。ビジネスアーキテクトは、DXの目的設定から効果検証までを、関係者をコーディネートしながら一貫して推進する役割を果たします。

DX推進の中核となる人材が不在、かつ確保も容易ではない企業は珍しくありません。DX推進やシステム活用をサポートできるパートナーを選ぶことで、内部リソースの不足を補い、課題解決につながるシステム刷新を進められるでしょう。

「2025年の崖」克服に最適なクラウドサービスの導入ならイッツコム!

イッツコムはDX推進に役立つ多彩なサービスを提供しており、クラウド環境へのスムーズな移行やシステム活用をサポートできます。「2025年の崖」克服を目指す企業に特におすすめなサービスは、基幹システムとして活用できるコンテンツクラウド「Box」や、チームワークの効率化・生産性向上に役立つ「Zoom Workplace」です。

基幹システムとして活用できるコンテンツクラウド「Box」

基幹システムの刷新は困難を伴うため、移行が容易なクラウドサービスを活用するのが有利です。

「Box」は1,500以上の業務アプリと連携できる、日経225銘柄の企業の75%が利用するコンテンツクラウドです。全ての法人向けプランで容量無制限のクラウドストレージを利用できます。オンプレミス環境のファイルサーバをクラウドに移行し、段階的に複数の業務アプリを連携させ、各種専用アプリの機能を統合した基幹システムとして運用できます。

連携したアプリのファイルはBox上で一元管理でき、140種類以上のファイル形式をオンラインでプレビューできるため、データ加工は不要です。Box公式アプリによるワークフロー自動化やAIを活用した高度なセキュリティ対策、独自アプリによりAPI経由でBoxの操作方法をカスタマイズすることなどもできます。

【関連記事:クラウドストレージ「Box」の魅力は?使い方やメリットを徹底解説

チームワークの効率化・生産性向上に役立つ「Zoom Workplace」

チームワークの効率化に役立つクラウドサービスとして、Boxと連携できる「Zoom Workplace」の導入もおすすめです。Web会議・チャット・アイデア共有・スケジュール管理など、複数のコミュニケーション・コラボレーション機能が一体化され、スムーズな社内コミュニケーションや営業活動に役立ちます。

有料プランにアップグレードすると、ミーティング時間が実質無制限(30時間/1回)になる他、追加料金不要でAIアシスタントによる要約・提案なども活用できます。

さらに「Zoomウェビナー」による大規模なオンラインセミナーの運営、「Zoom Rooms」による会議室とリモートワーカーをつなぐハイブリッド会議も活用でき、DX実現に向けた業務スタイルの変革に大いに役立つサービスです。

【関連記事:Zoomは年間契約すべき?無料・有料プランの違いや選び方を解説

まとめ

「2025年の崖」克服を目指すとき、レガシーシステムからの脱却を考える必要があります。既存システムの改修・機能追加が困難であれば、クラウドサービスの活用を検討しましょう。DX人材不足の問題は、DX推進やシステム活用をサポートできるパートナーを選ぶことで解消を目指せます。

イッツコムが提供する「Box」や「Zoom Workplace」は、基幹システムの段階的なクラウド移行や業務スタイルの変革に最適です。「2025年の崖」克服のためのシステム刷新をお考えなら、導入時・運用中の並走サポートに対応できるイッツコムにご相談ください。