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AI活用で建設業の課題解決!大手活用事例と要注目のスタートアップ

建設業界では、多くの企業が深刻な人手不足という課題を抱えています。解決の鍵となるAIやロボットの導入は大手企業を中心に進み、スタートアップ企業もサービス開発に参入し始めています。「大手はAIでどのような取り組みをしているのか」「中小企業でも実践できる活用法はあるのか」と疑問を抱く方も多いでしょう。

この記事では、建設業界におけるAI活用の必要性を整理し、大手企業の事例や注目すべきスタートアップを紹介します。通信環境の整備を進めながら、自社のニーズに合ったソリューションを取り入れ、課題解決につなげていきましょう。

建設業界でAIを活用する重要性

人手不足が深刻化する建設業界では、省人化・省力化や生産性向上が喫緊の課題となっています。その解決策として、AIやロボットによる自動化技術の活用が注目されています。さらに、産学官が連携する「i-Construction 2.0」により、BIM/CIMやネットワークカメラ、ロボット、ドローン、AIといった技術の導入が推進されています。

深刻化する人手不足で省力化・生産性向上が課題

建設業は他産業に比べて労働時間が長く、重層下請け構造による低賃金など構造的な問題を抱えています。過酷な労働環境による業界離れが進む中、2024年4月からは時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」にも直面しています加えて、高齢化が顕著で若手人材の減少も続くと予想され、中長期的な担い手の確保と育成、省人化・省力化や生産性向上が急務となっています。

建設現場の課題解決にはAI・ロボットの活用が鍵

課題解決には賃上げなどの処遇改善による人材確保に加え、AIやロボットによる自動化技術の活用が欠かせません。大手からスタートアップまで業界向けAIソリューションの開発が進み、企画設計から解体まで各フェーズで活用が広がっています。

国土交通省も「i-Construction 2.0」により、施工・データ連携・施工管理の自動化を進め、省力化と生産性向上を図っています。主な取り組みは以下の通りです。

  • BIM/CIMによる生産プロセス全体のデータ連携で、積算・設計変更や施工段階の負担を軽減
  • BIM/CIMによる4Dモデル構築で施工を事前シミュレーションし、作業を効率化
  • ネットワークカメラ活用で、現場に出ずにリモート監督検査を実現
  • ロボットの自動・遠隔操作による設備点検で、災害・障害時の迅速対応を可能に
  • ドローンやAI活用で、働き方改革や施工管理の屋外作業リモート化を推進

(参考:『i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~|国土交通省』

建設業大手3社のAI活用事例10選

建設業におけるAIの活用方法は多岐にわたります。自社でどのように活用すべきかイメージしづらいかもしれません。建設業界の大手企業は各社の成長戦略に基づき、建設プロジェクトのさまざまな場面で独自のAIサービスを活用しています。ここでは建設業大手3社のAI活用事例10選を、各社の成長戦略とともに紹介します。

鹿島建設株式会社

鹿島建設株式会社は「デジタル化の推進による生産性向上・業務効率化」を重要テーマに掲げ、建設現場での自動化・ロボット化や生成AI活用を強力に進めています。蓄積した技術を基に多彩なシステムを開発・運用し、企画・設計・施工・運用・メンテナンスの各フェーズでAIを適用しています。主な技術は以下の通りです。

  • A4CSEL(クワッドアクセル):バックホウ・ダンプトラック・ブルドーザ・振動ローラなどの建設機械を自律運転し、ダムや造成工事での積込み・運搬・敷均し・転圧を自動化
  • AI×ドローン資材管理:空撮動画からAIが資機材名と位置を検出して3Dモデルに可視化。管理作業時間を約75%削減
  • コンクリート構造物の表層品質評価アプリ:「コンクリート・アイ」の要素技術として開発。建設現場で適用後、コンクリート構造物の表面品質を大幅に向上

大成建設株式会社

大成建設株式会社は「生産プロセスのDX」に向け、先進的なデジタル技術を多数開発・運用しています。これらをBIMにひも付けたパッケージとして導入し、現場全体での情報共有を通じて段取り改善、省力化、生産性向上を実現しています。AI活用事例は以下の通りです。

  • 建築施工技術探索システム:信頼性の高い社内技術資料と生成AIを組み合わせたRAG技術を活用し、若手でも専門技術情報を的確かつ効率的に収集可能。施工技術の確実な継承を支援する
  • AI設計部長の機能拡張:新設計ツールにより、最適な設計パターンから顧客条件に合致する案を短時間で選択・提示可能。BIMデータ出力にも対応し、設計の高度化・効率化を実現する
  • 工事進捗確認システムの機能拡張:専用アプリを必要とせず、360度動画とセンシングデータからAIが工事進捗や資機材位置を自動図面化。独自のデジタル情報標準基盤と連携し、現場確認や合意形成を効率化する

株式会社竹中工務店

株式会社竹中工務店は「竹中グループ環境戦略2050」に基づき、持続可能な建築・まちづくりと「未来につづく魅力ある建設業」の実現を目指しています。企画設計から運用・解体までのサイクルを総合的に支援し、業界の課題解決に取り組んでいます。AI活用事例は以下の通りです。

  • 構造設計AIシステム:自社開発の構造設計システム「BRAINNX」をAIで機能拡張。蓄積データを学習した3機能(AI建物リサーチ・AI断面推定・AI部材設計)を搭載し、設計時間を大幅に短縮する
  • 建設ロボットプラットフォーム:センシンロボティクス社のAIアプリ開発プラットフォーム「SENSYN CORE」を基盤に、屋内ドローン自動飛行「BIM×Drone」や遠隔操作「RemoteBase」を開発。クラウド一括管理で現場の生産性を高める
  • Z-CARBO(ジカーボ):AI分析により、設計・施工・竣工後までのCO2排出量を定量的に評価し、ホールライフカーボン(建物生涯CO2)を可視化。脱炭素目標の達成を支援する

建設業界向けAIソリューションを提供するスタートアップ4選

大手企業ではAIシステムを内製する事例が多く見られますが、中小企業でも建設業界向けのさまざまなAIソリューションを活用できます。例えば、建設業に特化したAIエージェントやopenBIMソリューション、AIによる積算自動化やプレゼン効率化のソリューションなどです。

ここでは、そうしたAIソリューションを提供するスタートアップ4社を紹介します。

燈株式会社:「AIコンストシェルジュ 光/Hikari」

燈株式会社は、建設業界向け業務支援AIチャット「AIコンストシェルジュ 光/Hikari」を提供しています。人手不足や技術継承といった業界の深刻な課題を解決するために開発されたサービスで、建築・土木・設備・住宅などの業界知識や500以上の書籍データ(標準仕様書・法令など)を学習済みです。光は一級建築士(学科)試験で合格基準点を達成した実績があり、工法検討や施工計画書の作成など実務に即した高精度な回答を瞬時に提示できます。

さらにAIエージェント機能も実装済みです。「施工計画書を作成して」といった大まかな指示を与えるだけで、資料参照や法令調査、工法考案など必要なタスクを自律的に実行します。その結果、事務作業時間の大幅削減やヒューマンエラーの減少に貢献します。

ONESTRUCTION株式会社:「OpenAEC」シリーズ

ONESTRUCTION株式会社は、openBIMを中心とした建設分野のソリューションを開発しています。「openBIMにおけるBIM情報要件の生成基盤モデルの研究開発」として、経済産業省とNEDOが推進する国内生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」の第3期に採択された実績もあります。

代表的なサービスが「OpenAEC」シリーズです。BIMデータの平準化・標準化や情報のサイロ化解消を実現し、IFCデータを読み込むだけで瞬時にBIMダッシュボードを作成できます。これにより建設データの可視化・分析が容易となり、国際規格に準拠した高品質なIFCデータを提出できるため、審査や申請業務時間の短縮にも貢献します。

株式会社KK Generation:「積算AI」など

株式会社KK Generationは、独自の図面認識AI技術を用いて、内装工事に特化した「積算AI」「検図照査AI」「図面生成AI」「図面/資料検索AIチャット」などを提供しています。「建設図面×AIによる現場効率化」は、東京都のスタートアップ支援事業「Global CityTech Bridge」2025年度採択プロジェクト第一弾に選定された実績もあります。

中心となる「積算AI」は、建設業の人手不足や高齢化を背景に開発されたソリューションです。図面をアップロードするだけで数量拾いと見積書作成を自動化でき、間取り図・構造図・建具表などからAIが部屋面積や内装材の必要数量を自動積算します。従来ソフトと比べると、数量拾いや見積書作成にかかる時間を約70%削減できると見込まれています。

株式会社mign:「urvue(アービュー)」など

株式会社mignは、建設・不動産業界向けに独自開発した生成AIソリューションを提供しています。例えば、以下のようなサービスは設計段階でのプレゼンテーション効率化や成約率向上に役立ちます。

  • urvue(アービュー):インテリア画像を1枚アップロードするだけで、生成AIがウォークスルー動画を自動生成する
  • morphix(モーフィクス):建築画像を2枚アップロードすると、AIがその間の動きを推定・補完し、昼夜の見え方の変化などを表現したショート動画を自動生成する
  • voxta(ヴォクスタ):建築・インテリアの設計打ち合わせ時に会話音声をリアルタイムで認識・要約し、内容に基づいたイメージ画像を自動生成する

さらに、統合型AIクラウドサービス「mign(マイン)」も展開しています。提案書作成、図面チェック、見積妥当性評価、ナレッジ継承、パース生成といった業界特有で属人化しやすい業務を総合的にAIが支援し、業務効率化と品質の平準化を実現します。

建設業のAI活用推進の基盤となる通信環境整備ならイッツコム!

中小企業でも利用しやすい建設業向けAIソリューションは、基本的にクラウド型で提供されるため、利用にはインターネット接続が欠かせません。イッツコムなら「かんたんWi-Fi」や「モバイル閉域接続」により、事務所から建設現場まで快適でセキュアな通信環境を整備できます。

「かんたんWi-Fi」で事務所などの快適・セキュアなWi-Fi環境整備

事務所でAIサービスの利用が増えると、通信環境の不備が問題になることがあります。全ての従業員が有線接続できるわけではなく、Wi-Fiルーター1台では提供エリアや同時接続台数に限界があります。

こうした課題に最適なのが、イッツコムの「かんたんWi-Fi」です。高性能な業務用Wi-Fiアクセスポイント(AP)を初期費用無料でレンタルでき、届いたAPをケーブル接続するだけですぐに利用を開始できます。

「ハイエンド6」プランのAPは、高速かつ高セキュアなWi-Fi6に対応し、1APで最大100台まで快適に接続可能です。業務用とゲスト用のネットワークを分けられるゲストWi-Fi機能も搭載されているため、協力会社やクライアントの出入りが多い事務所でも、全てのユーザーに安全なWi-Fi環境を提供できます。

【関連記事:アクセスポイントとは?LANの仕組みや機器の機能も一挙解説

「モバイル閉域接続」で事務所と現場のデータ連携を快適・セキュアに

建設現場からAIサービスにアクセスするケースもあるでしょう。さらに、省力化や生産性向上を進めるには、事務所と現場の間でデータをスムーズにやりとりできる環境が欠かせません。

このニーズに応えるのが、法人データSIMと閉域網接続を組み合わせた「モバイル閉域接続」です。専用SIMカードを挿入したデバイスは、事務所のLANに接続する際はインターネットから隔離された閉域網を経由し、クラウド上のAIサービスなどにアクセスする際はLANや閉域網を経由します。

対応するのは、スマホ・タブレット・PCに加えてネットワークカメラなどSIMカード対応のIoT機器も含まれます。これにより現場と事務所を結ぶセキュアなネットワークを構築できます。専用SIMカードで経路を判別する仕組みのため、面倒な設定や管理は不要です。さらに通信ログも取得でき、現場でのセキュリティポリシー維持にも役立ちます。

AIに関連する他のトピックが気になる方はこちら!イッツコムが詳しく解説

「AI翻訳」とは建設現場で果たす役割

建設現場では、多国籍スタッフや協力会社との連携が欠かせません。AI翻訳を導入すれば、図面やマニュアル、安全指示などを多言語化でき、言語の壁による誤解や作業遅延を防げます。特にNMTを採用したAI翻訳は自然で高精度な訳文を生成するため、専門用語の多い現場でも正確に情報共有が可能です。結果として、現場の安全性向上・作業効率化・コスト削減に貢献し、スムーズな現場築くことができます。以下の記事では、AI翻訳についても詳しく解説しています。

【関連記事:AI翻訳とは?RBMT・SMT・NMTの違いやサービスの選び方

まとめ

建設業におけるAI活用は、深刻化する人材不足などの課題を解決するために重要な取り組みです。建設業向けのAIソリューションは、大手企業だけでなくスタートアップも開発を進めています。独自システムの内製が難しい中小企業でも、建設プロジェクトのさまざまな場面で特化型のAIサービスを活用できます。

ただし、クラウド型AIサービスの安定運用には通信環境の整備が必須です。AI活用による課題解決をお考えなら、事務所にも建設現場にも快適・セキュアな通信環境を整備できるイッツコムにご相談ください。