クラウドサーバ選定のポイントと失敗しない移行手順
目次
企業のITインフラとして、クラウドサーバを導入するケースが増えています。クラウドサーバとは、インターネットを通じてサーバのCPUやストレージなどのリソースを利用できる仕組みのことで、自社で物理サーバを保有せずにシステムを運用できるのが特徴です。
柔軟な拡張性やコスト効率の高さから注目されていますが、サービスの種類が多く、選定や移行方法を誤るとコスト増や運用トラブルにつながる可能性もあります。
この記事では、クラウドサーバを選ぶ際のポイントを整理しつつ、失敗しないための移行手順を解説します。
他方式と比較して分かるクラウドサーバのメリット

クラウドサーバとは、インターネット経由でサーバのリソースを利用できる仕組みのことで、物理的なサーバを自社で保有せずに運用できる点が特徴です。必要な分だけCPUやメモリ、ストレージを利用できるため、コストや運用負担の面で柔軟性が高いインフラといえます。
ただし、サーバの利用方法にはクラウド以外にも「オンプレミス」「レンタルサーバ」「VPS」など複数の選択肢があり、それぞれに強みがあります。以下で、クラウドサーバのメリットを軸に据えながら、他方式との違いを整理していきましょう。
オンプレミスとの違い
オンプレミスは、自社内に物理サーバを設置し、ハードウェアやネットワークを自社で管理・運用する方式です。
サーバ機器の購入や設置環境の整備が必要で、初期投資として数十万円から数百万円の設備費用がかかる場合があります。また、設計や調達の工程があるため、導入までに数か月かかることも珍しくありません。さらに、トラブル対応やアップデートなどの運用も自社で行う必要があります。
ただし、オンプレミスには自社要件に合わせた細かなカスタマイズや、独自のセキュリティポリシーを徹底できるという強みがあります。
一方、クラウドサーバはインターネット経由でサーバ環境を利用でき、物理機器の準備が不要で、短期間で導入できる点が大きなメリットです。必要なリソースを柔軟に追加できるため、事業の成長やアクセス増加にも対応しやすいでしょう。
レンタルサーバとの違い
レンタルサーバは、複数のユーザーで1台の物理サーバを共有する「共用サーバ」が主流のサービスです。多くは月額固定料金制で、毎月の費用変動がなく予算管理がしやすい点がメリットです。
また、初期設定が整っていることが多く、専門的な知識がなくても比較的簡単にWebサイトやブログを公開できることから、個人サイトや小規模な企業サイトで広く利用されています。
一方、クラウドサーバは基本的に従量課金制で、利用したリソースに応じて料金が発生します。アクセス数の増加に応じてCPUやメモリを即座に増強でき、トラフィックの変動が大きいサービスでも柔軟に対応できるのが特徴です。
アクセス数が安定しているサイトにはレンタルサーバが適している場合もありますが、キャンペーンやセールなどで急激なアクセス増が見込まれるサービスでは、クラウドサーバの拡張性が大きなメリットとなるでしょう。
【関連記事:クラウドサーバとは?レンタルサーバとの違いや導入のコツを徹底解説】
VPSとの違い
VPS(Virtual Private Server)は、1台の物理サーバを仮想化技術で複数の仮想サーバに分割し、それぞれを独立したサーバとして利用できるサービスです。
各VPSには専用のCPUやメモリ、ストレージが割り当てられ、共用サーバよりも安定したパフォーマンスで運用できる点が特徴です。専用サーバに近い自由度を持ちながら、比較的低コストで利用できます。
クラウドサーバとの大きな違いは、拡張性と柔軟性です。クラウドサーバは複数の物理サーバをまたいでリソースを管理しているため、アクセス状況に応じてCPUやメモリを柔軟にスケールアップ・ダウンが可能です。
一方、VPSは割り当てられた物理リソースの範囲内で運用するケースが多く、大幅なリソース増強にはプラン変更が必要になる場合があります。VPSは、アクセス数が比較的安定しているWebサイトやメールサーバなどに適しています。
クラウドサーバの種類

クラウドサーバは、サービスモデルや利用環境、管理形態によっていくつかの種類に分けられます。それぞれの違いを理解しておくことで、自社のシステムや運用体制に適したクラウドサービスを選びやすくなります。以下で、クラウドサーバの種類を確認していきましょう。
サービスモデル
クラウドサービスは、提供される機能の範囲によって「IaaS」「PaaS」の2つのサービスモデルに分類されます。どこまでをクラウド事業者が提供し、どこからを利用者が管理するのかという点が大きな違いです。
| サービスモデル | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| IaaS | サーバやストレージなどインフラを提供 | OSやミドルウェアは利用者が管理 |
| PaaS | アプリケーション開発環境まで提供 | インフラ管理が不要で開発に集中できる |
システム構築の自由度を重視するのか、運用負担の軽さを重視するのかによって最適なモデルは変わります。用途に応じて選択してみてください。
利用環境
クラウドサーバの利用環境は、主に「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」に分類されます。どちらもクラウド技術を利用した環境ですが、インフラの共有範囲やセキュリティ管理の考え方が異なります。
| 種類 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| パブリッククラウド | 事業者が提供するインフラを複数ユーザーで共有 | 低コスト、迅速な導入 |
| プライベートクラウド | 1つの企業・組織専用のクラウド環境 | セキュリティとカスタマイズ性が高い |
パブリッククラウドは、クラウド事業者が用意したインフラを複数の企業やユーザーで共有して利用する形態で、初期費用を抑えながらスピーディに導入できる点が特徴です。
一方、プライベートクラウドは特定の企業専用に構築された環境であり、自社データセンターやホスティングサービス上に構築されることが多く、セキュリティやカスタマイズ性が高い点が魅力です。
管理形態
クラウドサーバは、運用管理の担当範囲によって「マネージド型」と「セルフマネージド型」に分けられます。
マネージド型では、サーバの基本的な運用や監視、セキュリティアップデートなどをサービス提供事業者が担当します。そのため、専門知識が少ない企業でも、比較的安心してクラウド環境を運用できるのが特徴です。運用負担を大きく軽減できる一方で、サポートや管理サービスが含まれるぶん、月額料金はやや高めになる傾向があります。
一方、セルフマネージド型では、インフラ環境のみが提供され、OSやミドルウェアの設定、セキュリティ対策、運用管理は利用者自身が行う必要があります。月額料金は比較的安価な場合が多いものの、エンジニアの人件費や運用コストが別途発生するため、総合的なコストを踏まえて判断することが重要です。
クラウドサーバのデメリットも把握

クラウドサーバではさまざまな恩恵を受けられることが魅力ですが、デメリットもあります。把握しないまま導入してしまうとその後の業務に支障を来しかねません。そこでここでは、クラウドサーバのデメリットを紹介します。
情報セキュリティのリスクがある
クラウドサーバはその性質上、常にインターネットに接続しています。このような環境下では、常に外部からの攻撃の可能性を秘めており、いかなる場合も安全とは言い切れません。
情報漏えいリスクは企業にとって回避すべきものです。クラウドサーバを利用する際には、できる限り信頼性のあるセキュリティを有したサービスの利用をおすすめします。
従量課金制によるコスト変動のリスクがある
クラウドサーバの多くは従量課金制を採用しており、利用したリソース量に応じて料金が変動します。必要な分だけ支払う仕組みは無駄なコストを抑えられる一方で、毎月の支出が一定ではないため、予算管理が難しくなる場合があります。
特にアクセス数やデータ処理量が急増し、想定以上の料金が発生する「クラウド破産」に陥るリスクがあります。対策としては、利用上限の設定や監視ツールの導入などにより、リソース使用量を常に把握しておきましょう。
通信障害のリスクがある
インターネットを通じて利用するサービスである以上、通信環境に依存する側面があります。社内ネットワークやインターネット回線に障害が発生した場合、クラウドサーバへのアクセスが不安定になり、データの閲覧や業務システムの利用が難しくなるでしょう。
また、クラウドサービス提供事業者側で大規模な障害が発生し、業務が一時的に停止してしまう可能性も考えられます。こうしたリスクを軽減するためには、回線の冗長化やバックアップ環境の準備など、障害発生時の対策をあらかじめ検討しておくことが重要です。
クラウド導入を成功させる5つのポイント

クラウドサーバは設定や運用方法を誤ると、想定以上のコスト増やセキュリティリスクにつながる可能性があります。とはいえ、前章で紹介したデメリットの多くは、事前の設計や運用ルールを整えることで十分に回避可能です。
ここでは、クラウド導入を成功させるために押さえておきたいポイントを5つ解説します。
1.コストの上振れを抑える
クラウドサーバでは従量課金制が一般的で、利用状況によっては想定以上の料金が発生する可能性があります。そのため、自社の予算管理の方法に合った料金体系を選ぶことが重要です。
例えば、アクセス量が安定している場合は固定料金型のプランが向いていることもあり、逆にアクセス変動が大きい場合は従量課金の柔軟性がメリットになります。
また、料金の上振れを防ぐためには、クラウドサービス側に備わっているコスト管理機能も確認しておきましょう。利用料金が一定額を超えた際に通知するアラート機能や、リソース使用量を可視化できるダッシュボードなどがあれば、想定外のコスト増を早期に把握できます。
2.要件は数値化して比較可能にする
クラウドサービスを比較する際、CPUやメモリなどのスペック表だけを見ても最適な選択ができるとは限りません。機能が豊富な分、単純な「○×比較表」では決め手に欠けることも多いためです。
そこで重要になるのが、自社独自の評価軸を明確にすることです。例えば「BCP対策を重視する」「コスト削減を最優先する」「運用負担を減らしたい」など、
導入目的を整理した上で、運用体制やガバナンス、将来の拡張性といった観点から評価基準を設定します。
さらに、それぞれの項目に重要度(重み付け)を付けることで、比較の精度が高まります。要件を数値化して客観的に比較できるようにすると、自社にとって最も合理的なクラウドサービスが見えてくるでしょう。
3.責任範囲を明確にして設定ミスを防ぐ
クラウド環境では、セキュリティや運用管理の責任がサービス提供事業者と利用者の間で分担される「責任共有モデル」が採用されています。つまり、全てをクラウド事業者に任せられるわけではなく、利用者側にも管理責任がある点を理解しておくことが大切です。
一般的には、データセンターや物理サーバなどのインフラ部分は事業者側が管理し、OSやアプリケーション、アクセス権限の管理などは利用者側が担当します。この責任範囲を正しく理解していないと、設定ミスや管理漏れが発生し、結果として情報漏えいやセキュリティ事故につながるリスクがあります。
導入前の段階で、どこまでが事業者の責任で、どこからが自社の責任なのかを明確にしておきましょう。
4.通信経路を分離して障害時の影響範囲を限定する
クラウドサーバはインターネット経由で利用するケースが一般的ですが、通信経路が1つしかない場合、回線障害が発生すると業務への影響が大きくなる可能性があります。そのため、重要なシステムでは通信経路の冗長化や分離を検討することが重要です。
例えば、通常のインターネット接続だけでなく、閉域網接続(専用線)などのセキュアな接続方式を利用することで、通信の安定性やセキュリティを高められます。特に業務システムや機密データを扱う場合は、自社のセキュリティポリシーに合った接続方法が提供されているかを事前に確認しておくと安心です。
5.契約前にサポート体制を見極める
システム障害や設定トラブルが発生した場合、迅速に相談できるサポート窓口があるかどうかは、運用の安心感に大きく関わります。
例えば、日本語でのサポートに対応しているか、問い合わせ対応の時間帯はいつまでか、電話やチャットといった連絡手段が用意されているかなどを確認しておくとよいでしょう。特に社内にクラウド専門のエンジニアが少ない場合、サポート体制の充実度は要チェックポイントです。
失敗しないクラウド移行手順

クラウド導入を成功させるには、計画的な移行プロセスが欠かせません。既存システムをそのままクラウドに移すだけでは、コスト増や運用トラブルにつながる可能性があります。重要なのは、現状のシステム環境を整理し、目的に合わせた設計を行った上で段階的に移行することです。
ここでは、クラウド移行をスムーズに進めるための基本的な手順を紹介します。
1.現状棚卸しと移行対象の確定
全てのデータやシステムをそのままクラウドへ移行しようとすると、想定以上の時間がかかる可能性があります。また、ネットワーク帯域を圧迫したり、移行作業費が高額になったりするケースも少なくありません。
そのため、まずは現在利用しているデータやシステムを整理し、「日常的に利用しているアクティブデータ」「アーカイブデータ」「不要なデータ」の3つに仕分けるのがおすすめです。移行対象を最小限に整理することで、検索性アップやコスト圧縮につながります。
2.方式選定と要件固定
クラウド移行を成功させるために、目的と要件を明確に定義しておきましょう。例えば、コスト削減を目的とするのか、BCP対策や可用性向上を重視するのかによって、最適なクラウド構成は変わります。対象となるシステムの範囲や移行期限、監査ルールなども含めて、具体的な要件を整理してみてください。
さらに、アカウント管理やアクセス権限、ネットワーク構成、監視体制、バックアップ方法などの標準設計をあらかじめ決めておくことも重要です。ルールを先に固定しておくことで、運用開始後に管理方法が曖昧になったり、システムがブラックボックス化したりするリスクを防げます。
3.小さく検証して実測
クラウド移行において、営業担当者の説明を受けてすぐに本契約・全移行を進めるのは危険です。「既存システムと合わない」「パフォーマンスが想定より低い」など、実際の運用環境で思わぬ問題が発生する可能性があります。
そこで、業務への影響が小さいシステムを対象にPoC(概念実証)を実施し、実際のパフォーマンスや移行作業の難易度、月次コストなどを検証しましょう。
実際に運用してみることで、ネットワークの遅延や想定外のコスト増など、導入前には見えにくかった課題が明らかになります。この段階で問題点を洗い出しておくことで、本番移行時のトラブルを大幅に減らせるでしょう。
4.本番切替とロールバック設計
クラウドへ本番環境を移行する際には、単にシステムの場所を移すだけでなく、運用設計まで含めて準備しましょう。例えば、バックアップ方法や監視体制、障害発生時の復旧手順(RTO・RPO)などを事前に定めておくことが大切です。
また、切替作業中に予期しないトラブルが発生する可能性も考慮し、元の環境に戻すためのロールバック手順を準備しておくことも重要です。万が一問題が起きた場合でも、迅速に安全な状態へ戻せるようにしておくことで、業務への影響を最小限に抑えられます。
5.運用定着と改善
クラウド移行は、単にシステムを移して終わりではありません。その後の運用体制をどのように整えるかが、クラウド活用の成果を左右します。特定の担当者や開発会社に運用を任せきりにすると、ノウハウが属人化してしまい、担当者が変わった際に管理が難しくなることがあります。
そのため、運用手順書を整備し、誰が担当しても同じように管理できる仕組みを作ることが大切です。また、稼働後は実際の通信量やリソース使用状況を定期的に確認し、コスト増の原因を分析しながら設定を見直していきましょう。
高セキュアな「通信経路」や「ファイル管理」を実現するならイッツコム

どれだけ高性能なクラウド環境を導入しても、通信が不安定だったり、ファイル管理の仕組みが不十分だったりすると、情報漏えいや業務停止といったリスクが高まります。特にテレワークや外出先からのアクセスが増えている企業では、安全な接続環境と信頼性の高いクラウドストレージの両方を整備することが欠かせません。
イッツコムでは、通信インフラからクラウド活用まで幅広くサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。
社内のネットワーク環境の強化に「モバイル閉域接続」
外部からインターネットを通じてサーバにアクセスする際、気を付けたいのが「情報漏えいリスク」です。特に脆弱性の高いWi-Fiを経由してサーバへ接続する際には、第三者から介入される可能性があり、注意が必要です。
そのようなときには、イッツコムの「モバイル閉域接続」をご利用ください。モバイル閉域接続では、第三者から認知されない専用回線を使うため、外部からの攻撃を受けることがありません。専用のSIMを差し込むだけで利用でき、登録していないデバイスからのアクセスを遮断できます。
高セキュアな通信が可能で、クラウドサーバにも安心して接続できるでしょう。モバイル閉域接続は外部から安全に通信を行いたい方に、おすすめのサービスです。
法人向けのクラウドストレージなら「Box」
クラウドサービスはその性質上、常にインターネットに接続しており、外部から攻撃を受ける可能性が捨てきれません。そのため、重要なデータをクラウドに置いておくことをためらう方がいらっしゃるのも無理はないでしょう。
そこでおすすめなのが「Box」です。Boxは、社内外にセキュリティ対策を徹底していることを証明できる「ISO27001」の国際規格に準拠しています。米国政府機関が公式文書の共有に利用することを承認しているほど、信頼性の高いセキュリティを備えている点も特徴です。
また、世界8万社以上の企業で採用され、高いセキュリティレベルが要求される金融・医療業界でも多く利用されています。セキュリティ面の不安を抱える方にはおすすめのクラウドサービスでしょう。
イッツコムのライセンスであれば、日本語環境で使用でき、日本語のサポートも受けられます。
まとめ

クラウドサーバの構築の際には、メリットとデメリットをしっかりと理解し、導入の目的を明確にした上で運用することが大切です。要件とうまくマッチするように運用できれば、今までの自社サーバでは得られなかった効果が期待できるでしょう。
イッツコムでは、高いセキュリティを有する「Box」や、安全な通信を実現した「モバイル閉域接続」などの高いセキュリティを備えたサービスを多数ご用意しています。クラウドサービスのセキュリティに不安を感じていて、導入に踏み出せなかった方はぜひイッツコムにお気軽にご相談ください。