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インターネット回線の冗長化とは?仕組みや具体的な構成例を一挙解説

ネットワーク時代のビジネスには、インターネット回線を安定して使い続けられることが必要です。通信経路が1つだけだと、トラフィック増加に対応しにくい他、障害発生時にビジネスがストップする恐れもあります。この課題を解決するために、インターネット回線の冗長化について理解を深めたい方もいるのではないでしょうか。

インターネット回線の冗長化とは何か、どのような方法があり具体的にどのように構成するものかを知ることで、自社にとって最適な方法を検討できます。冗長化に最適な光回線サービスやモバイルデータ通信サービス、ハウジングサービスによる冗長化にも目を向け、柔軟なネットワーク構成で自社のビジネスを守りましょう。

そこでこの記事では、インターネット回線の冗長化の方法について詳しく紹介します。

インターネット回線の冗長化とは?


冗長化はさまざまなシステムの負荷分散や耐障害性の向上を目的に実施されます。ネットワーク時代のビジネスにはインターネット回線の冗長化も重要です。まずはインターネット回線の冗長化とは何か、その概要や必要性を見ていきましょう。

インターネット回線の可用性を高める冗長化構成

冗長化とは、障害に備えて機材や回線などを複数用意し、並列使用したり一部をバックアップとして待機させておいたりすることを指します。

インターネット回線の冗長化とは、光回線などのネットワーク回線やインターネット接続の窓口となるプロバイダ(ISP/インターネットサービスプロバイダ)、LANからインターネットへの出口に当たるONU(光回線終端装置)やルーターを複数用意して使用することです。

通信経路を複数系統用意することにより、一部の構成要素が障害を受けてもネットワーク全体が停止することを避け、インターネット回線の可用性(使用し続けられること)を高めます。

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インターネット回線の冗長化が必要な理由

ネットワーク社会では多くの企業がインターネット回線を通じて多種多様なクラウドサービスを利用している他、自社独自のサービスも提供しています。一瞬のネットワーク遅延や通信障害が大きな損失につながるケースは大いにあるでしょう。

インターネット回線の可用性を脅かす要因は、急激なトラフィック増加やネットワーク機器の故障 、プロバイダの障害などさまざまです。共有型のインターネット回線(特に通信速度を保証しないベストエフォート型の回線)は、他の契約ユーザーの影響を受けて通信速度が低下するだけでなく、ネットワークの構成要素が障害を受けるとサービスの停止を招きます。

そこで、インターネット回線の冗長化構成よる、負荷分散や帯域向上、耐障害性(障害に対する強さ)の向上が重要です。

インターネット回線の主な冗長化方法


インターネット回線の冗長化方法を大別すると、1社のプロバイダと契約する「NICチーミング」と、2社以上のプロバイダと契約する「マルチホーミング」の2種類があります。NICチーミングは、「リンクアグリゲーション」と「フォールトトラレンス」に分かれます。ここでは、インターネット回線の主な冗長化方法を見ていきましょう。

1.NICチーミング

ネットワーク機器やコンピュータに内蔵された、ネットワーク接続機能を提供するアダプタ装置を、NIC(Network Interface Card/ネットワークインターフェース・カード)と呼びます。NICチーミングとは、複数のNICを束ねて論理的に1つのネットワーク中継システムとし、負荷分散・帯域向上や耐障害性の向上を図る技術です。

NICチーミングに対応したネットワーク機器は、複数の物理リンク(NIC同士をつなぐLANケーブルなどの物理的な回線)をグループ化し、単一の論理リンク(OSやソフトウェアから見える論理的な回線)にできます。

例えば、光回線のONU(光回線終端装置)とルーターは通常1本のLANケーブルで接続しますが、2本のLANケーブルを並列接続することも可能です。このNICチーミングの仕組みにより、帯域幅を2倍に拡張したり、メイン回線の障害時にバックアップ回線に切り替えたりできます。

2.リンクアグリゲーション(LAG)

リンクアグリゲーション(Link Aggregation/LAG)はNICチーミングの一種です。Aggregationは「集合体」や「集約(する)」などを意味する単語で、リンクアグリゲーションではネットワーク中継システムを1つの論理リンクとして統合し、複数の物理リンクを一体的に使用します。

全ての系統が通常時に使用する稼働系(アクティブ)で、待機系(スタンバイ)の系統を持ちません。言い換えれば、全ての系統を同時に稼働させる、「アクティブ/アクティブ構成」のNICチーミングです。

例えば1Gbpsの物理リンク(LANケーブル)を2本並行利用することで、2Gbpsの帯域幅で通信し、一方が障害を受けても1Gbpsで通信できます。

インターネット回線におけるリンクアグリゲーションでは、1社のプロバイダと2本以上の光回線を契約することで、通信速度や耐障害性の向上が可能です。

3.フォールトトレランス(FT)

フォールトトレランス(Fault Tolerance/FT) もNICチーミングの一種です。Fault Toleranceは「耐障害性」を意味し、1つの論理リンク内にある複数の物理リンクを、通常時に使用する稼働系(アクティブ)と通常時は使わず待機する待機系(スタンバイ)に分けます。つまり、「アクティブ/スタンバイ構成」のNICチーミングです。

インターネット回線におけるフォールトトレランスでは、1社のプロバイダと2本以上の光回線を契約し、メイン回線とバックアップ回線に分けます。これによりメイン回線が通信障害を起こしても、自動的にバックアップ回線に切り替えてインターネット接続を継続可能です。

4.マルチホーミング

マルチホーミング(Multihoming)とは、複数のプロバイダのインターネット回線を使用した冗長化構成です。マルチホーミング環境は2社以上のプロバイダと契約するため、A社のメイン回線が障害を受けても、B社のバックアップ回線でインターネット接続を継続できます。

なお、スマホやタブレットでWi-Fi経由による光回線をメイン回線とし、NTTドコモなどのモバイル回線をバックアップ回線とすることも、マルチホーミングの利用例です。

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インターネット回線の冗長化構成の例


インターネット回線の冗長化構成は多彩です。1社のプロバイダと契約するNICチーミング(リンクアグリゲーション/フォールトトレランス)と、2社以上のプロバイダと契約するマルチホーミングという違いがあり、それぞれにどこまでの構成要素を冗長化するかという違いもあります。

ここでは、NICチーミングとマルチホーミングそれぞれの場合で、冗長化構成の例を5つ見ていきましょう。

1.【NICチーミング】インターネット回線の完全二重化

NICチーミングによる、インターネット回線を完全に二重化する冗長化構成の例です。1社のプロバイダと2本の光回線を契約し、オフィスやデータセンター内にルーターとONUを2系統用意して、プロバイダが運用する1つのアクセスポイントに接続します。つまり、自社のルーターから特定のプロバイダ拠点まで、2本の通信経路を用意する冗長化構成です。

この冗長化構成では1つのアクセスポイントを通じ、以下のような運用ができます。

・メイン回線とバックアップ回線を分け、片方の通信経路が障害を受けてももう一方で通信を継続できるフォールトトレランス
・2本の回線を並行使用して2倍の通信速度を持たせ、一方が障害を受けても半分の通信速度で通信を継続できるリンクアグリゲーション

2.【NICチーミング】アクセスポイントの地理的冗長化

NICチーミングによる、2拠点のアクセスポイントで地理的に冗長化する構成例です。1社のプロバイダと2本の光回線を契約し、オフィスやデータセンター内にルーターとONUを2系統用意して、それぞれ別のアクセスポイントに接続します。つまり、自社の2つのルーターからそれぞれ別のアクセスポイントまで、1本ずつの回線を用意する冗長化構成です。

例えばメイン回線は東京のアクセスポイントと、バックアップ回線は大阪のアクセスポイントと接続し、1つのプロバイダで通信経路を分けたフォールトトレランスを構成できます。天災などで大阪のアクセスポイントが障害を受けても、東京のアクセスポイントで通信を継続できる仕組みです。

3.【マルチホーミング】プロバイダのみの冗長化

マルチホーミングにより、プロバイダのみを冗長化する構成例です。2社のプロバイダを契約し、光回線とルーターやONUは1系統のみ用意します。

プロバイダのみ二重化することで、A社のメイン回線が通信障害やメンテナンスで利用できなくなっても、自動的にB社のバックアップ回線に切り替えてインターネット接続を継続できる構成です。

4.【マルチホーミング】プロバイダ・光回線・ONUの冗長化

マルチホーミングにより、プロバイダ・光回線・ONUを冗長化する構成例です。2社のプロバイダとそれぞれに接続する光回線を契約し、2つ以上の相手と同時に通信できるルーターを用い、1台のルーターで2台のONUに接続します。

A社のメイン回線が通信障害やメンテナンスで利用できない状況に加え、ONUの故障や事故による光ファイバーケーブルの断線が起こっても、自動的にB社のバックアップ回線に切り替えられる構成です。ただしこの構成では、ルーターが障害を起こすと両方の回線が使えなくなります。

5.【マルチホーミング】インターネット回線の完全二重化

マルチホーミングにより、インターネット回線を完全に二重化する冗長化構成の例です。2社のプロバイダとそれぞれに接続する光回線を契約し、さらにONUもルーターも二重化します。

オフィスやデータセンターからインターネットまでの全ての経路を冗長化することで、プロバイダ・光回線・ONU・ルーターのどこで障害が起こっても、自動的にB社のバックアップ回線に切り替えられる構成です。

インターネット回線のアップグレードと冗長化はイッツコム!


複数社のネットワークに分散させての冗長化にメリットを感じているなら、イッツコムのサービスで解決できます。イッツコムは、マルチホーミングに最適な法人向け光回線「イッツコム光接続サービス」、社内外で柔軟にマルチホーミング環境を提供できる「法人データSIM」、自前のサーバを冗長化も容易なデータセンターで運用できる「ハウジングサービス」を提供しています。

インターネット回線のアップグレードや冗長化はイッツコムにお任せください。

高速・安定かつ障害発生時の対応もスピーディな「イッツコム光接続サービス」

高速かつ安定したインターネット回線はネットワーク時代のビジネスに必須です。ビジネスユースの光回線には、多数のユーザーと回線共有しても安定したパフォーマンスを発揮できることや、障害発生時の迅速な対応も求められます。

そこで導入したいのが、自前の光回線網により下り最大2Gbps・上り最大1Gbpsの高速回線を提供する「イッツコム光接続サービス」です。新しいインターネット接続方式「IPv6 IPoE」に標準対応するため、ユーザー認証による接続遅延を起こしません。トラフィックが増加しやすい夜間や休日の安定性も抜群です。

NTT東日本やKDDIなどとは別の、独自の回線網で提供する光回線サービスで、複数プロバイダ・光回線を契約するマルチホーミングに有効活用できます。イッツコム独自の光回線網とプロバイダサービスを一括提供するため、トラブルの際の窓口は1つで済みます。既にNTT東日本など他社回線を利用している場合でも、追加コストを抑えた運用が可能です。

社内外で柔軟にマルチホーミング環境を提供「法人データSIM」

イッツコム光接続サービスの他に、「法人データSIM」を活用したマルチホーミングも有効です。NTTドコモ回線を利用したデータSIMサービスで、NTTドコモのサービスエリア内ならどこからでも快適にインターネット接続できます。

SIMカードとモバイルWi-Fiルーターとのセット契約もでき、以下のようなケースのマルチホーミングに役立ちます。

・オフィス内でWi-Fi・光回線をメイン回線とし、法人データSIMをバックアップ回線として用意
・イベント会場などで現地のWi-Fi・光回線が接続不良時、法人データSIM(+モバイルWi-Fiルーター)でインターネット接続
・NTTドコモ以外のSIMカードを挿入したモバイル端末を社外利用する際、法人データSIM+モバイルWi-Fiルーターの回線と使い分け
・在宅勤務者が自宅回線と法人データSIM+モバイルWi-Fiルーターを使い分け

「シェアプラン」を選択すれば複数SIMカードで月間通信容量をシェアできるため、ユーザー間で月間使用量に大きな差があってもコストのムダを抑えられます。メイン回線・バックアップ回線の使い分けに向いた強みの1つです。

自前のサーバを冗長化も容易なデータセンターで運用するなら「ハウジングサービス」

インターネット回線の冗長化が特に重要となるのは、オンプレミス環境のサーバシステムでWebサービスを提供する場合です。サーバルーム内の可用性や安全性を確保するための冗長化構成や電子的・物理的なセキュリティ対策、保守管理体制には、多大なコスト投下が必要となります。

これらの課題解決は自社努力では難しいケースがあり、スペースやネットワークなどの拡張性も問題になるでしょう。そこで利用したいのが、自前のサーバをリッチな設備と保守管理体制の整ったデータセンター内で運用できる、イッツコムの「ハウジングサービス」です。

上位回線は合計200Gbps以上で接続し、トラフィックの増加にも柔軟に対応できます。ニーズに合わせて回線の引き込みもできるため、NTT東日本やKDDIの光回線を用いた冗長化構成も自由自在です。サーバルーム内に設置した自前のサーバとネットワークは、専任の監視技術者により24時間365日集中監視します。

外部からサーバラックまではICカードで4重にロックされ、耐震床構造を整えたサーバルームは床下吹出方式の専用空調機や監視カメラ・赤外線防災センサー・ガス消火設備も完備しています。物理的なセキュリティ対策は万全で、無停電電源設備や自家発電機も備えるため、大切なサーバ資産を安全に運用できます。

まとめ


ネットワーク時代のビジネスには、インターネット回線の可用性を担保することが必要です。通信経路が1つだけだと、トラフィック増加に対応しにくい他、障害発生時にビジネスがストップする恐れもあります。この課題を解決するには、マルチホーミングなどの構成を取り、インターネット回線を冗長化することが重要です。

イッツコムは独自回線による法人向け光回線「イッツコム光接続サービス」やモバイルWi-Fiルーターとセット導入できる「法人データSIM」、自前のサーバを冗長化も容易なデータセンターで運用できる「ハウジングサービス」を提供しています。インターネット回線の冗長化をお求めなら、多彩なニーズに柔軟に対応できるイッツコムにご相談ください。