IT導入補助金2024とは?申請枠5種の諸条件や申請フローを解説
目次
IT導入補助金2024は、中小企業・小規模事業者のITツール活用による経営課題解決をサポートする補助金制度です。申請枠が複数あり、2023年度から変更点もあるため、「何に活用できるのか」「申請を検討すべきか」といった疑問もあるでしょう。
この記事では、IT導入補助金2024の概要や申請枠5種の諸条件、交付を受けるまでの流れを解説します。補助対象となるITツールが自社にとって最適なソリューションではない場合、登録外のサービスを導入することも検討しましょう。
2024年に条件変更のあったIT導入補助金とは
IT導入補助金は、「インボイス制度に対応した受発注システムを導入したい」「システムを導入して、業務を効率化したい」「セキュリティを強化したい」といったニーズがあれば申請を検討したい補助金制度です。認定されたITベンダーのサポートが前提となるため、ユーザー企業だけでなくITベンダーにもメリットがあります。
中小企業・小規模事業者のITツール導入に対する補助金制度
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者の経営課題を解決することを目的に、業務効率化・生産性向上やDXなどに向けたITツールの導入を支援するための補助金です。2024年の制度では、以下5つの枠の中で、自社の目的に合致するものに申請できます。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入枠
それぞれの枠で補助対象となるITツールや補助額・補助率などの条件が異なります(この点に関しては詳しく後述)。また、全ての枠で、事務局の認定する「IT導入支援事業者」と共同で交付申請などを進めることが必要です。信頼性の高いベンダーのサポートを受けながら、中小企業・小規模事業者がITツールを導入し、その経費の一部を政府が補助します。
IT導入補助金2024年の主な変更点
IT導入補助金2024のIT導入補助金2023からの主な変更点は、デジタル化基盤導入枠が廃止され、インボイス枠が新設されたことです。これに伴い、インボイス関連の補助金制度に以下のような変化が生じています。
- デジタル化基盤導入類型は「インボイス対応類型」に、商流一括インボイス対応類型は「電子取引類型」に変更された
- 複数社連携IT導入類型は枠として独立した
- デジタル化基盤導入枠で補助対象だったEC機能のあるITツールは、インボイス枠で補助対象外となった
- インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフトの導入について、小規模事業者の補助率が最大4/5へ拡大した
小規模事業者もチャレンジする価値がある
IT導入補助金は5つの枠それぞれで公募を行っており、枠によっては毎月のように新しい回が公募されるなど、高頻度に実施されています。枠によって採択率の高さは異なりますが、通常枠は75%程度、インボイス枠(インボイス対応類型)は94%程度です。
採択率が高い上、不採択となっても別の回で再度申請できます。ITツール関連の経費が少額でも申請できるため、小規模事業者でもチャレンジする価値があるでしょう。
IT導入補助金2024の交付を受けるための基本的な条件
IT導入補助金2024は補助対象者として中小企業と小規模事業者を定義しており、どちらに区分されるかで補助額の上限が変わる場合もあります。申請要件や加点項目、補助対象となるITツールも細かく設定されています。基本的な条件を把握しておきましょう。
IT導入補助金2024の補助対象者
IT導入補助金の補助率・補助額は、枠によっては自社が中小企業・小規模事業者どちらに区分されるかで変わります。
【中小企業】
業種や組織形態ごとに資本金や従業員数の規模に上限が定められており、どちらか一方がその値以下であれば、中小企業に区分されます(小規模事業者に当たる規模を除く)。例えば小売業の場合、資本金5,000万円以下または従業員50人以下であれば、IT導入補助金制度における中小企業です。
【小規模事業者】
小規模事業者に区分されるのは、常時使用する従業員数が以下の組織です。
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く):5人以下
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20人以下
- 製造業その他:20人以下
従業員数0人の個人事業主も、この枠組みに入ります。なお医療法人・社会福祉法人・学校法人などの組織は、従業員数が少なくても小規模事業者に当たらず、従業員数300人以下なら中小企業として区分されます。
IT導入補助金2024の申請要件や加点項目
IT導入補助金2024において全ての枠で申請要件となっている施策は以下2点です。
- 「gBizIDプライム」アカウントの取得
- 「SECURITY ACTION」宣言の実施
複数社連携IT導入枠の「参画事業者」のみ、gBizIDプライムアカウントの取得は不要です。また通常枠の場合、「みらデジ経営チェック」の実施も申請要件となります。
加点項目は枠によって異なりますが、以下のようなものを挙げられます。
- クラウドを利用したITツール導入の検討
- SECURITY ACTIONの「★★二つ星」の宣言を行っていること
- 国の推進するセキュリティサービスを選定していること
- 事業継続力強化計画の認定を取得していること
IT導入補助金2024の補助対象となるITツール
IT導入補助金の対象となるITツールは、IT導入支援事業者がサポートするものに限られます。枠によって対象となるITツールは異なりますが、事業のデジタル化を目的として導入する以下のようなソフトウェア・クラウドサービス・ハードウェアが補助対象です。
- 受発注システム
- 決済システム
- 会計システム
- セキュリティソリューション
- POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機
- PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機
IT導入補助金2024の申請枠5種それぞれの条件
IT導入補助金2024には、新設されたインボイス枠(インボイス対応類型)・インボイス枠(電子取引類型)を含む5種類の申請枠があります。原則として中小企業・小規模事業者を対象としますが、インボイス枠(電子取引類型)は大企業も対象です。
通常枠の条件
通常枠は中小企業・小規模事業者を対象に、事業のデジタル化のために導入するソフトウェア・クラウドサービス関連の経費の一部を補助し、業務効率化や売上アップをサポートするものです。
以下7種類の業務プロセスのうち、1種類以上のプロセスに対応するソフトウェアの購入費やクラウド利用料(最大2年分)が補助対象となっています。付随する導入コンサルティングや機能拡張などにかかる費用も補助対象です。
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収管理
- 供給・在庫・物流
- 会計・財務・経営
- 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
- その他業務固有のプロセス
- 汎用・自動化・分析ツール(単体での使用は不可)
通常枠の補助率は1/2以内です。補助額は業務プロセスが1つ以上なら5万円以上150万円未満、4つ以上なら150万円以上450万円以下となっています。
インボイス枠(インボイス対応類型)の条件
インボイス枠(インボイス対応類型)の補助対象となるITツールは、会計・受発注・決済の機能を1種類以上有するインボイス制度対応ソフトウェアです。それらソフトウェアの使用に資するPC・複合機・POSレジなどのハードウェアも補助対象ですが、ハードウェアのみの申請はできません。
ソフトウェアの場合、補助額50万円以下だと、補助率は3/4以内(中小企業)または4/5以内(小規模事業者)です。補助額50万円超~350万円以下の分については、会計・受発注・決済のうち2機能以上を有することが機能要件で、補助率2/3以内となっています。
関連するハードウェアの補助額は、PC・タブレットなどは10万円以下、レジ・券売機などは20万円以下です。どちらも補助率は1/2以内となっています。
インボイス枠(電子取引類型)の条件
インボイス枠(電子取引類型)は、インボイス制度に対応した受発注システムを商流単位で導入する事業者を支援する補助金で、中小企業・小規模事業者と受発注の取引を行っている事業者(大企業含む)が対象です。
発注側の事業者がインボイス制度対応の受発注機能を有するクラウド型ソフトウェアを導入し、受注側の中小企業・小規模事業者に対してアカウントを無償で発行するとき、そのクラウド利用料(最大2年分)の経費を補助します。
補助額は、下限がなく、350万円以下です。補助率は、受発注システムを導入するのが中小企業・小規模事業者の場合は2/3以内、大企業の場合は1/2以内となっています。
セキュリティ対策推進枠の条件
セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃が原因で起こる事業の停滞や供給の制約、価格の上昇といったリスクに対応するための補助金です。サイバーインシデントから企業を守るための取り組みを支援します。
この枠では、IPA(情報処理推進機構)が発表した「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に載っているサービスが対象です。さらに、それらのサービスはIT導入支援事業者が提供し、事前に事務局に登録されている必要があります。具体例として、ネットワーク全体を監視するUTM(統合脅威管理)や、端末ごとの保護を行うEDR(エンドポイント検知・対応)などが挙げられます。
補助率は中小企業・小規模事業者ともに1/2以内で、補助額は5万円から100万円までが対象です。
複数社連携IT導入枠の条件
複数社連携IT導入枠は、サプライチェーンや商業集積地に属する複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールを導入し、生産性向上を図る取り組みを支援するための補助金です。この枠はやや特殊で、他の枠とは申請フローや交付決定後の手続きなどに違いがあります。
補助対象者は、複数の中小企業・小規模事業者により形成されるコンソーシアムの他、商店街振興組合・商工会議所・観光地域づくり法人(DMO)などです。具体的な取り組みとして、地域全体でAIカメラやPOSデータ分析システムを導入し、来街者の回遊データ・購買データの情報連携を行うような取り組みが想定されています。
補助対象となる経費や補助率・補助額も複雑なため、申請時にはIT導入補助金2024の公式Webサイトをよく確認しましょう。
IT導入補助金2024の交付を受ける流れ
IT導入補助金2024の申請フローのうち、事前準備は中小企業・小規模事業者のみで行いますが、交付申請以降のステップはIT導入支援事業者と共同で行います。ITツールを実際に導入するのは交付決定を受けた後、補助金額が確定・交付されるのは支払い後の事業実績報告が完了した後です。
STEP1:公募要領などの確認
まずはIT導入補助金2024の公式Webサイトや交付規程・公募要領を読み、補助事業について理解を深めましょう。各枠の公募要領(PDFファイル)は、IT導入補助金2024の公式Webサイト内の「資料ダウンロード」からダウンロードできます。公募回によって内容が異なる可能性もあるため、最新情報をしっかりチェックしましょう。
STEP2:「gBizIDプライム」アカウントの取得と「SECURITY ACTION」宣言の実施
IT導入補助金の交付申請を行う前に、「gBizIDプライム」アカウントの取得と、「SECURITY ACTION」宣言の実施を行います。
デジタル庁によるgBizID(GビズID)は、1つのID・パスワードで複数の行政サービスにログインできる、法人・個人事業主向け共通認証システムです。交付申請時に必要となるgBizIDプライムアカウントID発行まで、おおむね2週間かかるため、早めに申請手続きをしましょう。
IPAが実施するSECURITY ACTIONは、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。交付申請時に宣言済アカウントIDの入力が求められるため、「★一つ星」「★★二つ星」どちらを宣言するか取得目標を決め、自己宣言の申し込みを行いましょう。
STEP3:「みらデジ経営チェック」の実施
導入するITツールを選定する前に、「みらデジ」公式Webサイトにて「みらデジ経営チェック」を行い、取り組むべき経営課題を把握しましょう。通常枠において、みらデジ経営チェックを交付申請前に行うことは必須要件であり、実施しなければ不採択となります。インボイス枠やセキュリティ対策推進枠においては加点項目です。
「gBizIDプライム」アカウントのID・パスワードを使って事業者登録を行い、チェック結果に基づき以降のステップを進めましょう。
STEP4:IT導入支援事業者とITツールの選定
IT導入補助金の交付申請を行うための事前準備として、自社の業種・事業規模や経営課題に沿って、IT導入支援事業者および導入したいITツールを選定することが必要です。補助対象となるITツールは、IT導入支援事業者が登録するものに限られるため、登録外のITツールも含め自由に選べるわけではありません。
IT導入補助金2024の公式Webサイト内「ITツール・IT導入支援事業者検索(コンソーシアム含む)」ページから、要件や目的に合ったIT導入支援事業者・ITツールを選定しましょう。
STEP5~STEP10:交付申請から事業実施効果報告まで
以降は選定したIT導入支援事業者がサポートしつつ、交付申請から事業実施効果報告までを行います。
・STEP5:交付申請:IT導入支援事業者との間で商談を進め、交付申請の事業計画を策定する。その後IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け、必要事項の入力や書類添付を行い、IT導入支援事業者が入力したITツール情報などを最終確認して事務局へ提出する
・STEP6:交付決定:審査が完了し交付決定通知を受けると、申請者は補助事業者となり、補助事業を開始できる
・STEP7:ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施):交付決定前に発注・契約・支払いなどを行うと補助金の交付を受けられないため、補助事業は必ず交付決定通知を受けた後に実施する
・STEP8:事業実績報告:補助事業の完了後、実際にITツールの発注・契約・納品・支払いなどを行ったことが分かる証憑を提出する
・STEP9:事業実績報告の完了後、補助金額が確定する。「申請マイページ」で補助金額を確認した後に、補助金が交付される
・STEP10:事業実施効果報告:定められた期限内に補助事業者が「申請マイページ」より必要な情報を入力し、IT導入支援事業者の確認を経て、事業実施効果報告を提出する
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【関連記事:アクセスポイントとは?LANの仕組みや機器の機能も一挙解説】
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まとめ
IT導入補助金2024は、中小企業や小規模事業者がITツール活用による経営課題解決に取り組む際、申請を検討したい補助金制度です。ただし、補助対象となるITツールや導入サポートをする事業者は、事務局に事前登録されたものに限られます。ニーズに合う申請枠やITツールが見つからない場合、登録外のサービスを利用することも検討しましょう。
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