カスハラ対応マニュアルの作り方|初動対応・社内体制・記録方法を解説
目次
カスタマーハラスメントへの対応は、現場担当者の判断だけに任せると、対応のばらつきや従業員の負担につながりがちです。暴言や威圧的な言動、不当な要求が起きたときに備え、対応者・判断基準・引き継ぎ先を事前に決めておきましょう。
そのために必要なのが、カスハラ対応マニュアルです。本記事では、政府の公式資料をもとに、カスハラ対応マニュアルの作り方を実務目線で解説します。初動対応、記録方法、社内体制、研修、法改正対応も、現場で使う順に取り上げます。
厚生労働省の公式マニュアルと自社対応マニュアルの全体像

カスハラ対応マニュアルを作るにあたって、最初に厚生労働省の公式資料を参照しましょう。国が示している考え方を土台にし、自社の業種や顧客接点に応じて調整すると、判断基準をそろえやすくなります。
厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを参照する
厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』では、カスハラの考え方や企業の事前準備、発生時対応、従業員への配慮が整理されています。自社マニュアルは、この内容を土台に作成するのが基本です。
(参考:厚生労働省『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』)
マニュアル全体をそのまま写すのではなく、自社で使う場面に置き換えて読み解きましょう。店舗や受付などの対面接点、電話、メール、SNSに分けて、現場で使う対応を整理します。
特に見る点は、次の通りです。
- どのような行為をカスハラと考えるか
- 従業員を一人で対応させないために何を決めるか
- 発生時に誰へ報告するか
- 記録をどのように残すか
- 従業員の心身の負担にどう対応するか
自社マニュアルに落とし込む前に決めること
実際に自社マニュアルを作る前に、まず目的を明確にします。目的が曖昧なまま作ると、「現場で使えないルール集」になりやすいためです。
最初に以下の3つを決めましょう。
- 従業員を守るためのマニュアルなのか
- 顧客対応の品質をそろえるためのマニュアルなのか
- 法改正や条例対応を見据えた社内整備なのか
マニュアル整備で現場担当者を守る理由
カスハラ対応で最も避けたいのは、現場担当者が「どこまで我慢すべきか」を一人で判断する状態です。担当者が謝り続けたり、長時間対応を続けたりすると、心理的負担が大きくなります。
したがって、次のような基準を事前に決めておくとよいでしょう。
- 暴言が続く場合は責任者へ引き継ぐ
- 同じ主張が長時間繰り返される場合は対応を区切る
- 脅迫や暴力がある場合は安全確保を優先する
- SNSでの晒し行為を示唆された場合は記録を残して責任者へ報告する
このように判断基準を明文化することで、現場担当者の精神的な負担を減らし、組織として一貫した対応がしやすくなります。
カスハラと正当なクレームの違い

カスハラ対応マニュアルでは、必ず「正当な意見や苦情」と「カスハラ」を分けて考えなければなりません。全ての苦情をカスハラ扱いすると、顧客の正当な申し出まで拒否している印象を与えます。
厚生労働省が示すカスハラの定義
厚生労働省の『あかるい職場応援団』では、カスハラの判断について、要求内容の妥当性と手段・態様の相当性を見る考え方を示しています。要求自体が不当な場合だけでなく、伝え方が社会通念上許容される範囲を超える場合も、カスハラに該当し得ます。
正当な意見・苦情との判断基準
正当な意見や苦情とカスハラを分けるときは、要求内容と手段を分けて判断します。要求内容を見るときは、次の点を押さえます。
- 商品やサービスに実際の不備があるか
- 契約内容や説明内容と照らして妥当な申し出か
- 通常の補償や対応の範囲に収まっているか
- 事実を裏付けられる内容か
手段や態様については、次の行為が該当し得ます。
- 人格を否定する発言や暴言
- 大声で怒鳴る、机をたたく、詰め寄る
- 長時間にわたり同じ要求を繰り返す
- 担当者個人への謝罪や土下座を求める
- 業務範囲を超えた特別対応を強要する
- 不当な金銭補償や過剰な値引きを求める
- 無断撮影や録音を行い、SNS投稿をほのめかす
- 退去を求めても居座る
マニュアルには、要求内容と手段を分けて判断する表を入れると、現場で使いやすくなります。
ただし、「これに当てはまれば必ずカスハラ」と断定しすぎないほうが安全です。言動の経緯、頻度、継続性、業種の特性、従業員の心身の状況などを総合的に見る必要があります。
カスハラ対応マニュアルに盛り込む必須項目

カスハラ対応マニュアルには、組織の基本方針と対象行為を明記します。さらに、現場担当者が使う対応フロー、記録シート、外部機関へ相談する基準を入れ、トラブル発生時に参照できる実務資料として整えましょう。
基本方針・対象行為・適用範囲
まず、組織としての基本方針を示します。
- 顧客や利用者の正当な意見は真摯に受け止める
- 一方で、従業員の人格や安全を害する言動には組織として対応する
- 担当者個人に過度な負担を負わせない
- 必要に応じて対応を中止し、外部機関へ相談する
対象行為には、暴言や威圧、長時間拘束、不当要求、無断撮影、SNSでの脅しなど、自社で起こり得る行為を分類して記載します。
適用範囲も明確にします。店舗や訪問先などの対面対応に加え、電話、メール、チャット、SNS、口コミサイトを含めるか決めておきます。
現場担当者向けの対応フロー
マニュアルには、現場担当者がすぐ使える対応フローを入れます。細かな解説よりも、迷ったときに次の行動が分かる流れにすることが大切です。
対応フローは、次の順番で作ると整理しやすくなります。
- 事実の把握
- 安全確保
- 一次対応
- 責任者への報告
- 対応継続または終了の判断
- 記録作成
- 再発防止の確認
フローチャート形式にするのも一案です。例えば、暴言が発生した場合は「注意喚起」から始め、改善しない場合は「責任者へ引き継ぎ」、さらに継続する場合は「対応中止を伝える」という流れにします。
記録シート・報告書テンプレート
記録シートは、事案発生後の振り返りだけでなく、対応の一貫性を保つ役割もあります。記録が残っていなければ、後から事実関係をたどることや社内判断が難しくなります。
記録シートの一例は以下の通りです。
- 発生日時
- 発生場所
- 対応チャネル
- 相手の氏名や属性
- 相手の要求内容
- 相手の言動
- 対応した従業員
- 同席者や引き継ぎ先
- 対応内容
- 対応時間
- 録音やメールなどの有無
- 責任者判断の内容
- 再発防止のために必要な対応
記入時は、担当者の感想や推測を混ぜず、把握できた事実を時系列で残します。相手の発言は要約しすぎず、可能な範囲で実際の表現に近い形で記録すると、後から経緯を追いやすくなります。
外部機関へ相談する基準
暴力・脅迫・退去拒否など、社内対応だけでは従業員の安全を確保しにくい事案は、外部機関への相談対象にします。警察、弁護士、産業医、行政の相談窓口のどこにつなぐかも、マニュアル上で分けておきます。
外部機関への相談を検討する基準として、次のような例を記載します。
- 暴力や器物損壊がある
- 脅迫と受け取れる発言がある
- 退去を求めても応じない
- 従業員個人へのつきまといや執拗な連絡がある
- SNSや口コミサイトでの晒し行為をほのめかす
- 金銭や特別対応を繰り返し要求する
- 従業員の心身に明らかな影響が出ている
相談先の分類を決めておけば、責任者が判断を先送りしにくくなります。重大化する前に、社内で対応する範囲と外部へつなぐ範囲を切り分けます。
現場で使える初動対応のフレーズ

カスハラが疑われる言動が起きたら、現場担当者は事実関係の把握から始めます。安全を確保した上で、責任者への引き継ぎや対応終了の判断に進みます。ここで、事前にフレーズを決めておくと、担当者ごとの対応のばらつきを防げます。
発生直後に把握する事実と安全確保
カスハラの可能性がある言動が起きたら、すぐに反論したり、相手をカスハラと決めつけたりせず、状況を落ち着いて見ましょう。
マニュアルに基づき、カスハラの可能性が高いと判断したら、対応場所の変更や責任者への引き継ぎを行います。ここで使えるフレーズ例は、次の通りです。
- 状況をお調べいたしますので、少々お時間をいただきます
- 内容を整理するため、担当者を交代いたします
- 大きな声での発言が続く場合、このままの対応は難しくなります
- 安全確保のため、責任者が対応いたします
責任者引き継ぎの判断
担当者が一人で対応を続けると、相手の要求がエスカレートしたり、担当者が萎縮したりすることがあります。一定の基準に達したら、責任者への引き継ぎを行います。その際のフレーズは、責任を逃れる印象にならないようにするのがポイントです。
- 内容を整理するため、責任者に引き継ぎます
- ここからは責任者が対応いたします
- 担当者個人への発言が続いているため、対応者を交代いたします
- これ以上は現場判断では対応できないため、責任者からご説明します
対応を中止・終了する場合の伝え方
暴言や威圧が続き、対応を中止・終了するときは、条件と理由を簡潔に示すのがコツです。
- 大声での発言が続いているため、このままの対応はできません
- 同じ内容のご説明はすでに完了しているため、本日の対応は終了いたします
- 他のお客様への対応に支障が出ているため、ここで対応を終了いたします
- 安全確保のため、これ以上の対応は控えさせていただきます
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避けるべきNG対応
カスハラ対応では、担当者の言動が二次トラブルにつながることもあります。マニュアルには、避けるべき対応も明記しておきます。
- 相手の発言に感情的に反論する
- できないことをその場しのぎで約束する
- 担当者個人の判断で過剰な補償を提示する
- 相手をすぐにカスハラ扱いする
- 周囲の従業員に共有せず、一人で抱え込む
- 記録を残さず口頭だけで処理する
- SNS投稿をほのめかされた場合でも、事実関係を把握せずに不当な要求へ応じる
特に注意したいのは、安易な謝罪です。事実関係を把握する前に全面的な非を認めるような表現をすると、後から対応範囲が広がる可能性があります。
使う場合は、「ご不快な思いをさせた点についてはお詫びします」「事実関係をお調べいたします」といった、範囲を限定した表現にしましょう。
チャネル別のカスハラ対応

カスハラ対応は、接点ごとに注意点が変わります。対面では安全確保と退去要請、電話では通話時間と切電基準を整理します。メールやSNSでは、返信文面の保存と拡散リスクへの備えが欠かせません。
対面対応の退去要請と現場記録
対面対応では、周囲の安全確保と現場記録を優先します。店舗や病院、窓口などでは、他の利用者がいる前でトラブルが起きることもあります。
対面対応では、次の点をマニュアルに入れます。
- 対応場所を移す基準
- 退去を求める基準
- 周囲の利用者への配慮
- 対応時間の記録
- 相手の言動の記録
- 防犯カメラや入退館記録の扱い
退去要請を行う場合は、感情的な言い方を避けます。
- これ以上の対応はできませんので、ご退去をお願いします
- 退去に応じていただけない場合は、関係機関へ相談します
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電話対応の通話記録・切電基準
電話対応では、相手の顔が見えない分、暴言や長時間通話が起こりやすくなります。通話時間と発言内容を記録し、切電基準を事前に決めます。
マニュアルに入れる項目は、次の通りです。
- 通話開始時刻と終了時刻
- 相手の要件
- 暴言や威圧的発言の有無
- 同じ内容の繰り返し回数
- 注意喚起した時刻
- 切電した理由
- 折り返し対応の有無
切電前には、いきなり電話を切るのではなく、注意喚起を挟みます。
- 恐れ入りますが、暴言が続く場合はお電話を終了いたします
- 同じご説明の繰り返しとなるため、これ以上の対応はできません
- これ以上お話を続けることが難しいため、お電話を終了いたします
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- 返信担当者
- 返信期限
- 事実関係の調査が必要な場合の定型文
- 回答できない内容の伝え方
- 同一内容が繰り返された場合の対応
- 保存するデータの範囲
SNS対応では、次の点も確認します。
- 公式アカウントで返信するか
- 個別対応へ誘導するか
- 誹謗中傷や個人情報投稿への対応
- スクリーンショットの保存方法
- 削除依頼や通報の判断基準
返信文面は、短く、事実ベースで作成します。
- ご連絡ありがとうございます。内容を確認のうえ、担当部署より回答いたします
- 個別の内容を含むため、詳細は指定の窓口へご連絡ください
- 同一内容への回答はすでに行っているため、追加の回答は控えさせていただきます
業種別にマニュアルをカスタマイズするポイント

カスハラ対応マニュアルは、業種ごとに重点を変えるのが基本です。厚生労働省の『あかるい職場応援団』では、宅配業・スーパーマーケット業向けの業種別マニュアルや研修動画が公開されています。
(参考:あかるい職場応援団『業種別カスタマーハラスメント対策の取組支援』)
医療・介護・保育での患者・利用者家族対応
医療・介護・保育では、本人に加えて家族や保護者とのやり取りも発生します。不安や不満が強く出る場面を想定し、「説明不足への対応」と「不当な要求への対応」を分けて整理します。
カスタマイズする項目は、次の通りです。
- 診療、介護、保育の範囲を超える要求への対応
- 家族や保護者からの長時間説明要求への対応
- 職員個人への攻撃があった場合の引き継ぎ
- 待ち時間や処遇への不満が出た場合の説明手順
- 他の患者、利用者、園児への影響がある場合の対応
医療や介護では、利用者との関係性が継続することも多いため、強い拒絶表現だけでなく、組織としての説明と記録を重視しましょう。
自治体・公共窓口での対応中止と記録保全
自治体や公共窓口では、住民対応の公平性が求められます。対応を中止する場合は、判断理由を後から説明できる記録を残します。
マニュアルでは、次の点を明確にします。
- 窓口対応を継続する基準
- 別室対応に切り替える基準
- 対応中止を伝える基準
- 庁内での報告ルート
- 同一人物からの繰り返し要求の記録方法
- 他部署と共有する情報の範囲
公共窓口では、対応の公平性と従業員保護を両立させます。個別判断に偏らないよう、事例ごとに記録を残し、組織で判断する仕組みにします。
小売・飲食・コールセンターでの件数管理と仕組み化
小売、飲食、コールセンターでは、日々の顧客対応件数が多く、個別事案が埋もれやすい傾向があります。マニュアルでは、件数管理と共有方法を重視しましょう。
カスタマイズする項目は、次の通りです。
- 返品、返金、交換の上限ルール
- 予約、配席、提供時間への苦情対応
- 長時間電話や繰り返し入電の記録
- 店舗責任者やSVへの引き継ぎ基準
- 同一顧客からの複数店舗への問い合わせ共有
- クレーム内容の分類と月次レビュー
現場の件数が多い業種では、1件ごとの判断に加え、類似事案の増加も追います。
マニュアルを機能させる社内体制

マニュアルを実際に動かすには、社内で相談を受け、判断し、記録を共有する流れを決めることが大切です。権限分担や従業員ケアも、体制づくりの段階で設計します。
相談窓口とエスカレーションルートを設計する
相談窓口は、現場から最初に情報が上がる入口です。エスカレーションルートでは、一次相談から責任者判断、人事・総務や法務への共有までの流れを決めます。
相談窓口を設計するときは、次の点を決めます。
- 一次相談を受ける部署
- 緊急時の連絡先
- 夜間や休日の対応
- 匿名相談の可否
- 相談後に誰が判断するか
- 相談内容をどこまで共有するか
エスカレーションルートでは、現場担当者、現場責任者、人事・総務、法務、経営層のどこまで上げるかを決めます。
例えば、軽微な苦情は現場責任者まで、暴言や脅迫を伴う事案は人事・総務や法務へ共有、従業員の安全に関わる事案は経営層へ報告する、といった基準を作ります。
人事・総務・法務・現場責任者の権限を分ける
カスハラ対応では、誰が何を決められるのかを明確にします。権限が曖昧だと、現場が過剰に謝罪したり、責任者が判断を先送りしたりする原因になります。
役割分担は、次のように整理できます。
- 現場担当者は一次対応と事実確認を行う
- 現場責任者は対応継続、終了、担当者交代を判断する
- 人事・総務は従業員保護、相談対応、社内記録を管理する
- 法務は法的リスクや外部専門家への相談を判断する
- 経営層は組織方針や重大事案への対応を決める
権限分担を決めることで、現場担当者が「自分の判断で断ってよいのか」と迷う状態を避けられます。
被害従業員のメンタルケアとアフターフォロー
カスハラ対応では、事案後の従業員ケアも欠かせません。被害を受けた従業員が同じ窓口や顧客対応を続けると、精神的な負担が残る場合があります。
アフターフォローでは、次の仕組みを用意します。
- 対応直後の上司面談
- 必要に応じた一時的な担当変更
- 人事や産業保健担当への相談
- 休養や勤務配慮の検討
- 再発防止策の共有
- 同じ担当者に負担が集中しない配置調整
カスハラ被害を受けた従業員は、対応直後に問題がないように見えても、後から不安や出勤への抵抗感が出る場合があります。一定期間を置き、改めて面談する仕組みにしておくとよいでしょう。
(参考:都庁総合ホームページ『カスハラ総合相談窓口 専門相談員の相談開始』)
録音・録画・記録管理ツールを活用する
通話録音や防犯カメラ、問い合わせ管理システムを使うと、カスハラ発生時の記録を残しやすくなります。導入時は、必要な記録を後から探せるかを確認します。アクセス権限や個人情報管理、現場での入力しやすさも確認項目です。
以下は、活用できるツールの一例です。
- 通話録音システム
- 防犯カメラ
- 問い合わせ管理システム
- 顧客対応履歴管理ツール
- 社内通報システム
- インシデント管理システム
- チャットやフォームによる相談窓口
選定時は、次の点を確認します。
- 記録が後から検索できるか
- アクセス権限を設定できるか
- 個人情報の管理に対応できるか
- 現場担当者が簡単に入力できるか
- 既存の顧客管理や問い合わせ管理と連携できるか
録音・録画や記録管理ツールは、現場で無理なく使える設計にします。入力項目が多すぎる、検索しにくい、権限設定が複雑すぎる状態では運用が続きません。既存の問い合わせ管理や社内報告の流れに組み込めるかを見極めます。
研修・見直し・法改正対応でマニュアルを更新する

カスハラ対応マニュアルは、一度作って終わりではありません。研修で使い方を定着させ、相談件数や対応状況を見ながら更新します。
ロールプレイングと管理職研修を行う
マニュアルを配布するだけでは、現場では使えません。実際の場面を想定したロールプレイングを行い、言い回しや引き継ぎのタイミングを練習します。
現場担当者向け研修では、次の内容を扱います。
- カスハラと正当な苦情の違い
- 初動対応の手順
- 対応を区切るフレーズ
- 責任者へ引き継ぐタイミング
- 記録シートの書き方
管理職向け研修では、次の内容を扱います。
- 対応継続と終了の判断
- 従業員への声かけ
- 重大事案の報告基準
- 外部機関への相談判断
- 再発防止策の検討
相談件数・対応時間・従業員アンケートで実効性を見直す
マニュアルが機能しているかを見るには、定期的に数値と現場の声を集めます。
見る指標は、次の通りです。
- カスハラ相談件数
- トラブル発生件数
- 対応にかかった時間
- 責任者への引き継ぎ件数
- 対応中止件数
- 従業員アンケートの結果
- 休職や離職につながり得る兆候
- 研修後の理解度
件数の増減だけで評価しないようにします。マニュアル整備後に相談件数が増える場合もありますが、それは従業員が相談しやすくなった結果とも考えられます。数値を見るときは、相談しやすさ、対応の一貫性、従業員の安心感も確認しましょう。
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2026年10月1日の義務化に向けて見直す
厚生労働省は、2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されると案内しています。関係通知やリーフレットも公表されています。
義務化に向けて、マニュアルでは次の点を見直します。
- 基本方針を明文化しているか
- 相談窓口を設置しているか
- 発生時の対応フローがあるか
- 従業員への周知や研修を行っているか
- 記録と再発防止の仕組みがあるか
- 被害従業員への配慮を定めているか
ポスター掲示や注意喚起だけでは、カスハラ対応マニュアルとしては不十分です。現場が使える手順、社内で判断する体制、従業員を守る仕組みまで整えておきましょう。
(参考:厚生労働省『令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!』)
東京都条例など自治体の動向を確認する
東京都では、2025年4月1日から『東京都カスタマー・ハラスメント防止条例』が施行されています。また、東京都は条例施行後、マニュアル作成や研修などに関する支援事業も実施しています。
東京都の事業者は、国の法改正だけでなく、東京都の条例や支援策も押さえておきましょう。東京都以外の事業者も、自社所在地の都道府県や労働局が公開する資料・相談窓口を見ておくことをおすすめします。
マニュアルを更新するタイミングは、次のように決めておくと運用しやすくなります。
- 年1回の定期見直し
- 法改正や条例施行時
- 重大なカスハラ事案が発生した後
- 新しいチャネルを導入したとき
- 従業員アンケートで課題が見つかったとき
- 研修内容を変更したとき
(参考:東京都例規集データベース『東京都カスタマー・ハラスメント防止条例』)
まとめ

カスハラ対応マニュアルは、従業員を一人で悩ませないための実務ツールです。まずは厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』を確認し、自社の業種や顧客接点に応じて整備します。
マニュアルには、カスハラの定義、正当なクレームとの違い、対象行為、初動対応フロー、記録シート、外部機関へ相談する基準を入れます。相談窓口とエスカレーションルートを整え、役割分担、従業員ケア、記録管理の仕組みまで決めておくと、現場で使える体制に近づきます。
2026年10月1日からはカスハラ対策が義務化されます。法改正や自治体の動向を確認しながら、研修と見直しを続け、現場で使える状態に更新していきましょう。