メールサーバの仕組みを知ろう!種類や運用形態をわかりやすく解説
目次
自社ドメインのメールアドレスは企業の信用獲得のために重要です。自社でメールサーバを運用することを検討しており、仕組みや運用イメージを理解したい企業担当の方もいるのではないでしょうか。
メールを送受信する仕組みや2種類のメール受信サーバの違い、メールサーバの管理方法を知ることで、自社にとって最適なメールサーバの運用方法を把握できます。ハウジングサービスやホスティングサービスの魅力も知り、手間やコストを抑えて快適にメールサーバを運用しましょう。
そこでこの記事では、メールサーバの種類や役割、メール受信サーバの特徴やメールサーバの運用形態についてご紹介します。
メールサーバの種類とDNSサーバの役割
メールサーバはメール送信サーバとメール受信サーバの2種類があり、メール送信にはインターネット接続全般で利用されるDNSサーバも関わります。まずはメールサーバの種類とDNSサーバの役割を見ていきましょう。
メール送信サーバとメール受信サーバ
メールサーバとは、電子メールを送受信するためにネットワークに接続され常時稼働するサーバ、またはメール送受信機能を備えたサーバソフトウェアです。
メールサーバは「SMTPサーバ」に代表されるメール送信サーバと、「POP3サーバ」や「IMAP4サーバ」に代表されるメール受信サーバに分かれます。2台のサーバでメール送信・メール受信の機能を分ける場合もありますが、1台のサーバで送受信兼用とすることも可能です。
メール送信を担う「SMTPサーバ」
「SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)」はインターネットなどのIPネットワークで用いられる標準的なメール送信プロトコル(通信規約)で、SMTPに準拠するSMTPサーバは最も一般的なメール送信サーバです。
SMTPサーバはひとつまたは複数の「ドメイン(メールアドレスの@以降)」を管理しており、メール送信者は自身のドメインを管理するSMTPサーバを経由してメールを送信します。
オフライン閲覧が前提の「POP3サーバ」
「POP3(Post Office Protocol version 3)」はIPネットワークで用いられる標準的なメール受信プロトコルのひとつで、POP3に準拠するPOP3サーバは代表的なメール受信サーバのひとつです。
POP3サーバは受信メールを一時的に保存する役割を果たし、受信者はメーラーを使って受信メールを一括ダウンロードします。つまり「受信メールをオフラインで読む」ことを前提としたメール受信サーバです。
オンライン閲覧が前提の「IMAP4サーバ」
「IMAP4(Internet Mail Access Protocol version 4)」もPOP3と同じく標準的なメール受信プロトコルで、IMAP4に準拠するIMAP4サーバは、もうひとつの代表的なメール受信サーバです。
IMAP4サーバ上にはメールアドレスごとに受信ボックスがあるため、受信者はIMAP4サーバにアクセスして受信メールを閲覧でき、ダウンロードする必要がありません。つまり「受信メールをオンラインで読む」ことを前提としたメール受信サーバです。
ドメイン名・IPアドレスを変換する「DNSサーバ」
メールの送受信はメールサーバだけでは成り立ちません。メール送信サーバは「DNS サーバ」にメール受信サーバの住所(IPアドレス)を問い合わせることで、正しい宛先へメール送信できます。
DNSサーバはドメイン名の管理と、ドメイン名・IPアドレスの変換をするサーバです。受信側のメールアドレスだけではメール受信サーバのIPアドレスが分からないため、受信側のドメインを管理するDNSサーバにIPアドレスを問い合わせ、宛先を確認してからメール受信サーバへメールを送信します。
メールを送受信する仕組み
メールサーバの組み合わせはSMTPサーバとPOP3サーバ、またはSMTPサーバとIMAP4サーバが一般的です。どちらもメール受信サーバにメールが到達するまでの流れは同様ですが、メールの管理やダウンロードの仕組みに違いがあります。ここでは、メール送受信の流れを解説します。
SMTPサーバとPOP3サーバの場合
メール送信サーバをSMTPサーバ、メール受信サーバをPOP3サーバとした場合、メール送受信の流れは以下の通りです。
1.メーラーで送信したメールが、送信側のドメインを管理するSMTPサーバに届く
2.SMTPサーバが、受信側のドメインを管理するDNSサーバに、受信側のPOP3サーバのIPアドレスを問い合わせる
3.SMTPサーバから目的のPOP3サーバにメールを送信する
4.受信メールはPOP3サーバに一時保存される
5.受信側がメーラーを使い、POP3サーバに一時保存された受信メールをまとめてダウンロードする
SMTPサーバとIMAP4サーバの場合
メール送信サーバをSMTPサーバ、メール受信サーバをIMAP4サーバとした場合、メール送受信の流れは以下の通りです。
1.メーラーで送信したメールが、送信側のドメインを管理するSMTPサーバに届く
2.SMTPサーバが、受信側のドメインを管理するDNSサーバに、受信側のIMAP4サーバのIPアドレスを問い合わせる
3.SMTPサーバから目的のIMAP4サーバにメールを送信する
4.受信メールはIMAP4サーバ上のメールボックスに保存される
5.受信側がメーラーを使い、IMAP4サーバにアクセスして受信メールを閲覧し、必要に応じてダウンロードする
POP3サーバとIMAP4サーバのメリット・デメリットと適性
POP3サーバはメール受信サーバが低スペックでも運用しやすく、IMAP4サーバはよりハイスペックなサーバ環境が求められます。モバイルデバイスはIMAP4サーバのほうが使いやすい場合も多く、ネットワークインフラの強化に伴い採用例が増えている状況です。
POP3サーバとIMAP4サーバのメリット・デメリット・向いている利用ケースをまとめると、以下のようになります。
POP3サーバ | IMAP4サーバ | |
---|---|---|
メリット | ・メールをダウンロードすると基本的にメール受信サーバから削除されるため、メール受信サーバが低容量で済む ・ダウンロード時のみメール受信 サーバにアクセスするため、ネットワーク負荷が小さい ・ダウンロードしたメールを素早く移動・削除できる | ・メール受信サーバでメールを集中管理するため、バックアップやセキュリティ上のメリットが大きい ・複数デバイスでメールボックスを共有できる ・デバイスの処理性能やストレージ容量が貧弱でも利用しやすい |
デメリット | ・メールをダウンロードすると基本的にメール受信サーバから削除されるため、複数デバイスでの共有が困難 ・メールのダウンロード時にデバイス側の処理能力やストレージ容量を圧迫する | ・メール受信サーバ上に複数のメールボックスを作成するため、メール受信サーバ側の処理能力やストレージ容量を圧迫する ・メールの移動・削除などの操作にはサーバへのアクセスが必要なため、狭帯域のインターネット回線では処理が遅い |
向いている利用ケース | ・メール受信サーバの処理性能やストレージ容量に余裕がない(運用コストを抑えたい)場合 ・1台だけのデバイスでメールを受信する場合 ・デバイスの処理性能やストレージ容量に余裕がある場合 | ・メール受信サーバの処理性能やストレージ容量に余裕がある(機能を重視したい)場合 ・複数デバイスでメールボックスを共有したい場合 ・スマホから出先でメールを確認したい場合 |
メールサーバの安定性や安全性を高める技術
メールサーバはシンプルな構成では負荷や情報漏えいリスクに懸念があります。そこでロードバランスや通信内容の暗号化が重要です。ここでは、メールサーバの安定性や安全性を高める代表的な技術について解説します。
冗長化とサーバ監視によるロードバランス
メール受信サーバは1台では負荷に耐えられない場合があります。特に負荷が大きいIMAP4サーバは複数サーバによる負荷分散、つまり冗長化によるロードバランスが重要です。
インターネットとメール受信サーバの間に「ロードバランサー」を設置し、複数のサーバの状態を監視することで、常に適切なサーバでリクエストを処理できます。
SSL/TLSによる通信内容の暗号化
SMTP・POP3・IMAP4は標準的なプロトコルですが、それ自体には通信内容を暗号化する機能がありません。そこで以下の通信方式を用い、それぞれのプロトコルにSSL/TLSを組み合わせることが重要です。
・SMTPS(SMTP over SSL/TLS):SMTPとSSL/TLSの組み合わせ
・POP3S(POP3 over SSL/TLS):POP3とSSL/TLSの組み合わせ
・IMAP4S(IMAP4 over SSL/TLS):IMAP4とSSL/TLSの組み合わせ
メールサーバを構築する3つの運用形態
メールサーバは以下3種類の方法で運用できます。
・オンプレミス
・ハウジングサービス
・ホスティングサービス
ハウジングサービスやホスティングサービスを利用することで、手間やコストを抑えて快適にメールサーバを運用できます。
オンプレミス
メールサーバの運用形態としてまず考えられるのが、自社内にサーバを設置すること、つまりオンプレミスで運用することです。オンプレミスはサーバ本体だけでなく空調やUPS(無停電電源設備)などの設備も自前で整備する必要があり、セキュリティ対策費もかかります。
ハウジングサービス
ハウジングサービス(コロケーションサービス)とは、サービス事業者のデータセンター内に自前のサーバを設置し、リッチな環境でサーバ運用できるサービスです。
サーバ運用に最適化された空調・冷却・電源・耐震・免震・セキュリティ設備を利用できる他、サーバ監視やバックアップなどのサービスも利用できます。メールサーバは自前ですが、低コストで快適な運用環境を利用できるのが魅力です。
ホスティングサービス
ホスティングサービス(レンタルサーバ)とは、サービス事業者のデータセンター内のサーバを、インターネット経由でレンタル(ホスティング)できるサービスです。
ハウジングサービスと同様にリッチな環境を利用できる上、自前のメールサーバを持ち込む必要もありません。サーバ構成の拡張性はハウジングサービスに劣りますが、簡単かつ安全にサーバ運用できるのが魅力です。
メールサーバをスマートに運用するならイッツコム!
メールサーバをオンプレミスで運用する場合、専門スタッフによる常時監視体制の構築やセキュリティ設備の調達・運用など、さまざまなコストがかかります。イッツコムの「ハウジングサービス」や「ホスティングサービス」なら、コストを抑えて快適なネットワーク環境や充実したセキュリティ設備を利用できるのが魅力です。
自前のメールサーバを運用するなら「ハウジングサービス」
イッツコムの「ハウジングサービス」は、利用者が用意したハードウェアをラックに収容し、データセンター内で保管・管理するサービスです。ネットワーク帯域や安全性に優れており、メールサーバのハウジングに最適です。
ネットワーク環境は合計200Gbps以上の高速回線を利用でき、24時間365日のサーバ監視とSMTPやPOP3のプロトコル監視に対応します。外部からキャビネットまでは4重にロックし、ハロンガスによる自動消火設備などの防災設備も万全です。
レンタルサーバを運用するなら「ホスティングサービス」
イッツコムの「ホスティングサービス」は、Webサーバ・メールサーバを単一もしくはセットでホスティングできるサービスです。Webサーバは新会社立ち上げに伴う自社サイトの開設、メールサーバはGmailなどのフリーメールから独自ドメインのメールへ移行する場合などに活用できます。
メールサーバはSMTPSやPOP3S、ウイルススキャン・迷惑メールスキャンに標準で対応します。オプションでメーリングリストサーバのホスティングや誤送信防止機能も利用可能です。Webサーバとのセットメニューなら、ロードバランサーで負荷分散された快適なWebサーバも利用できます。
ホスティングサービスには無料ドメイン取得が標準で付帯するため、独自ドメインの利用に別途料金は発生しません。
メールサーバ容量増加を防ぐ「Box」
メール添付によるメールサーバ容量増加への対策には、世界最高峰のセキュリティレベルを誇るクラウドストレージサービス「Box」がおすすめです。自社の共有フォルダに顧客がアクセスできる権限を付与することで、双方向のファイル共有ができるため、メールの添付ファイルでのやりとりが不要となります。
また、ファイルごとに共有ユーザー間でコメント付与やタスク設定もできるため、それらを伝達するためのメールも必要ないでしょう。また、セキュリティの懸念もある重要書類のメール添付も避けられるなどのメリットもあります。
まとめ
メールサーバの運用にはさまざまなコストがかかり、24時間365時間の安定稼働を保証する運用保守体制も必要です。ハウジングサービスやホスティングサービスを利用すれば、自社リソースで対応すべき部分を縮小化でき、低コストで快適に運用できます。
イッツコムなら法人向けのハウジングサービス・ホスティングサービス両方を提供しており、ニーズに合わせて機能追加も可能です。メールサーバの安定稼働をお求めなら、ネットワーク環境やセキュリティ設備に強みのあるイッツコムにご相談ください。