1. コラム
  2. コラム
  3. テレワークの失敗例は?失敗する原因と成功のポイント

テレワークの失敗例は?失敗する原因と成功のポイント

働き方の多様化にともない、会社から離れた場所で仕事を行う「テレワーク」を導入する企業が増加傾向にあります。柔軟な働き方ができるため社員のモチベーションアップにつながりますが、導入すれば必ずしも成功するとは限りません。失敗する可能性もあることから、導入に不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、テレワークの失敗例を紹介しつつ、失敗する原因と成功のポイントを解説していきます。事例を知り、正しい知識を身につけておけば、導入時の失敗リスクも最小限にできるでしょう。

テレワークの失敗例

テレワークの失敗例
テレワークは導入に成功すれば、会社の業績向上などさまざまな利益を生み出します。しかし、一歩間違えば生産性を下げてしまうリスクがあることを把握しておきましょう。実際の企業の失敗例を知ることで、導入時のリスクを下げられます。具体的な事例を詳しく見ていきましょう。

アメリカのI社の失敗例

アメリカの大手IT企業のI社は、以前はテレワークを推進する立場の企業でした。実際、2009年以降に173か国、38万6,000人もの社員の約40%がテレワークを活用していた事実があります。

しかし、2017年にテレワークを推進していた体制が一変し、上層部は社員に対して「会社での勤務に戻すか、それでなければ退職をするか」の二択を通告しました。以後、テレワークの禁止が定められ、現在ではオフィスでの勤務に切り替わっています。

テレワークを禁止した原因として、「コミュニケーション不足」や「一体感不足」が挙げられるといいます。テレワークの場合、テレビ電話で顔を見て話すことはできますが、会社で勤務するよりもほかの社員とのコミュニケーション時間は少なくなります。

プロジェクトをスムーズに遂行するために、密なコミュケーションは必要不可欠です。大きな会社で社員数も多いI社は、メンバーの仕事場所がバラバラになったことでコミュニケーションをとるのに手間や苦労が発生してしまった、という失敗につながってしまったようです。

アメリカのY社の失敗例

アメリカの大手IT企業のY社は、今まで社員の25%がテレワークで勤務していました。しかし、I社よりも早い2013年にテレワークを禁止しています。ITの大手企業であるY社が早々に禁止を定めたことで注目されました。

テレワークを禁止した理由として、在宅勤務している社員の生産性が落ちたことが挙げられます。在宅勤務の場合、ほかの社員や上司の目がないため自由に業務を行えます。短い時間であれば外出や睡眠をとることも可能です。

そのため、在宅勤務者が勤務中に副業や会社経営、下請けを雇うなどの行為が発覚したのです。いくら自由に働けるといっても、ルールを逸脱した働き方をする社員が存在したため、テレワーク禁止に踏み切ったという経緯があります。

テレワークに失敗する主な原因とは

テレワークに失敗する主な原因とは
特にIT系の企業ならば、テレワークのメリットを十分に活かせば業績も上がっていきそうなイメージをもつ方も多いでしょう。しかし、I社やY社など、大手のIT系企業でもテレワーク制度を廃止した事実があります。

テレワークは導入すれば確実に成功するとは限りません。失敗の原因を把握しておき、そのリスクを少しでも減らすことが重要です。ここからは失敗の原因を詳しく見ていきましょう。

無計画で導入する

働き方改革の流れを受けて、テレワークを導入する企業の増加が考えられます。しかし、「ほかの会社が導入したからなんとなく」「テレワークは先進的で時代を先取りするイメージだから」などの理由だけで導入すると、活用されないままで失敗するリスクが高まるでしょう。

無計画で導入すると経営側と現場側のビジョンにズレが生じることがあり、制度の利用が進まないことも考えられます。現場側で制度に不満があるのにも関わらず、経営側が無理に押し通した場合、社員のモチベーション低下になりかねません。

コストの削減やワークライフバランスの向上など、テレワークを導入する目的をしっかりと社員と共有することが重要です。その上で、目的を達成するための制度構築を行いましょう。

コミュニケーション不足になる

多くの企業が制度を廃止した理由として「コミュニケーション不足」を挙げているというように、テレワークを導入することにより、社員同士の関わりが減ることが失敗の原因にもなります。

離れた場所で作業を進めていると孤独感を生じ、モチベーションの低下を招いて業務が遅れるかもしれません。また、情報がしっかりと共有できず、プロジェクトの進行にも遅れが生じる恐れがあります。その結果、生産性の低下につながり、テレワーク導入の意義がなくなってしまうケースもあるでしょう。

テレワーカーがキャリアプラン・ビジョンを見失いやすい

テレワークを続けていると会社とのつながりが薄れてしまい、従業員が明確なキャリアプランやビジョンを描けなくなる恐れがあります。明確な将来が見えないと社員のモチベーションに影響しかねません。

在宅での勤務は、会社に属する社員でありながら「フリーランス」のような感覚です。所属する部署の存在感が薄くなることで、将来のプランが見えづらくなるという側面があることも把握しておきましょう。

従業員の働きを評価しにくい

テレワークの場合、従業員が出社しないために働きを評価しにくいという問題点もあります。テレビ電話をすることがあっても一時的であり、常に社員の様子を見られるわけではありません。

正当な評価を受けられないと「がんばって仕事をしても評価は変わらない」という思いから、社員のモチベーションは下がります。どのような成果を上げたら評価されるのかを明確にするなど、適切な対応をしないと離職につながる恐れもあるので注意しましょう。

生産性が落ちることがある

テレワークは、サテライトオフィスでの勤務という場合もありますが、自宅で勤務することが多い制度です。自宅での勤務の場合、自己管理ができない社員であれば生産性が大きく落ちることもあります。

ほかの社員や上司の目がないため、長時間の昼寝や外出などが可能です。サボり癖が付いてしまうと業務の進みが著しく落ちて生産性が低下し、結果的に会社の業績にも影響してしまいます。社員が主体性をもって仕事に取り組める環境作りが重要です。

従業員によっては働き過ぎてしまう

社員によっては、会社にいるときよりも多く働いてしまうこともあるようです。働き方改革によって、多くの会社で残業時間を減らす取り組みがなされています。出社して仕事をする場合は、上司の目があるため残業時間を増やしづらいこともあるでしょう。

一方、テレワークは上司の目が届きにくいため、残業申請をせずに働きすぎてしまう可能性があります。その結果、体調悪化で業務から離脱したり、離職につながったりする恐れがあるので注意が必要です。

監視ツールの導入が裏目に出る

社員の働きぶりを監視するためにWebカメラなどのツールを導入した場合、社員のストレスが増す恐れがあります。「会社から信頼されていない」と感じると、モチベーションの低下による生産性への悪影響が懸念されるでしょう。

監視の強化は、テレワークにおける自由度の高さを阻害することにもなります。それでは元も子もありません。監視ツールを使用した場合、テレワークを導入することの意義が薄れてしまうことも把握しておきましょう。

企業の風土に合わない

企業の風土や職種などによっては、テレワークの導入が合わずに失敗する可能性があります。紙の書類でのやり取りがメインで、上司の印鑑が必要となる場面が多い企業では向きません。その場合、会社に行く手間が増えて、逆に効率が下がる恐れもあるでしょう。

顧客対応が必要な職種の場合、自宅勤務だと対応しづらいことも考えられます。また、実労働時間が社員の評価を決める一因であると、実際の労働時間が把握しづらく正当な評価ができなくなる可能性も考慮しておきましょう。

テレワークの導入に失敗しないためのポイント

テレワークの導入に失敗しないためのポイント
テレワークを効果的に導入するためには、事前に失敗しないためのポイントを把握しておくことが重要です。

詳しくは後述しますが、テレワークが成功するとさまざまなメリットを享受できます。失敗しないためのポイントは大きく分けて5つあるので、これらをクリアしてから実際の導入へと移りましょう。

導入目的を明確にする

最初に、なぜテレワーク制度を導入するのかの目的を明確にすることが重要です。導入する目的の例には、「ワークライフバランスの向上」や「生産性の向上」などが挙げられるでしょう。目的を明確にすることで、その目的に向かって導入すべきルールやツールが判明し、スムーズに施策を進められます。

ワークライフバランスの向上を目的として、テレワークを導入する例を考えてみましょう。「未就学の子どもがいる」「親の介護が必要である」などの理由で、会社を退職したり休職したりする社員が多いようなケースです。

「出社している時間を短縮して、残りはテレワークで業務をする」「週4日はテレワーク勤務が可能」などのルールを定めれば、ライフイベントによって普通の勤務が困難な場合でも、柔軟に働きやすい環境をつくれるでしょう。社員が利用しやすいように制度を整えることで不満もなくなり、導入が有意義なものとなります。

業務の棚卸をする

導入する前に業務の棚卸をして、テレワークの対象業務を洗い出すことも必要です。ワークフローの見直しも行い、業務のランク付けやリスク管理も実施しましょう。

業務内容によっては、テレワークに適さないものもあります。たとえば、顧客とのやり取りが多い業務や、複数人がチームとなって行う業務などは適していません。こうした業務は、テレワーク制度からの除外を検討します。

重要度の高い業務についてはテレワーク制度を導入すべきかを慎重に議論しましょう。誤った選択をしてしまうと、業績の低下にもつながりかねません。また、会社の重要なデータや個人情報などを取り扱う業務は、リスク管理も重要なポイントです。

環境を整備する

テレワーク制度を導入する際は、環境整備を万全にしましょう。まずは、チャットやテレビ会議システム、ファイル共有ツールといったICTツールを導入し、社員が離れた場所にいても円滑な業務の遂行ができるようにします。

リスク管理の面では、「セキュリティツール」の導入も重要です。会社はしっかりと守られていても、自宅のセキュリティは手薄であることが考えられます。暗号化やアクセス制限、ウイルスソフトの導入などの対策を講じましょう。

また、パソコン本体のパスワードの設定や、資料を紙ではなくデータ化するなどの対策も重要です。社会的な責任から、情報の流出は避けるべき事態です。セキュリティ対策は入念に行いましょう。

従業員へ周知させる

テレワークを実際に始める際には、働き方のルールやセキュリティに関して、全社員への周知徹底が重要です。日本においては、テレワークはまだまだ浸透している業務形態とはいえません。初めてテレワークを行う社員も多いため、ルールや運用方法が分からないと不安になり、生産性の低下につながります。

周知する方法としては、研修や説明会の実施が効果的です。社員の疑問点や不安をできるだけ解消しましょう。また、実際に導入したあとに、社員から逐一フィードバックをしてもらうことも重要です。不満な点があった場合は適宜改善をすることで、より良い環境を作ることができます。

実際に業務を行うのは現場で働く社員であることを頭に入れ、不安を感じさせないようにしっかりと情報の周知をしましょう。

密なコミュニケーションを徹底する

テレワークを成功させるにあたって、密なコミュニケーションをとることは重要な要素です。テレワークを導入すると、どうしても社員同士のコミュニケーションが不足してしまいます。メンバー間のかかわりが希薄になると、「孤独感によるモチベーションの低下」や「報連相が上手くいかずプロジェクトの進行が遅れる」などの問題が発生します。

問題をそのまま放置すると、最終的には業績が悪化し、テレワーク制度自体の廃止につながりかねません。テレワーク導入を有意義なものとするために、コミュニケーション不足にならないような環境作りが重要です。

チャットやビデオ会議などのコミュニケーションツールを利用して、定期的に顔合わせをするなどのルールを定めましょう。「自宅勤務であっても会社にいるのと同じ感覚」で仕事ができるのが理想です。

テレワークを導入するメリットは?

テレワークを導入するメリットは?
まだまだテレワークが浸透しているとはいえない日本においては、テレワークを導入することのメリットが分かりにくいともいえます。制度を廃止している企業もあるため、「本当にメリットがあるのか」と考えてしまう経営者の方もいるのではないでしょうか。

ここでは、テレワークを導入することのメリットについて詳しく見ていきましょう。

人材を確保できる

テレワークを導入すると、優秀な人材を確保できる可能性が高くなります。会社に出勤しなくてもよいことで、多様性のある働き方ができます。そのため、高いスキルをもっていても事情があって働けない、という人材の確保が可能です。

たとえば、会社から遠方の地に住んでいる方であっても、存分にスキルを発揮してもらえます。また、子どもがまだ小さい、親の介護が必要などの理由で家を出られない方も、自宅での勤務が可能です。テレワークを導入すれば、日本全国で柔軟な働き方を求める優秀な人材と出会える可能性が高まるでしょう。

生産性が向上する

生産性の向上も大きなメリットです。自宅で仕事ができることで、通勤時間分を有効活用できます。

また、生産性の向上を妨げるストレスを防げるのも大きな魅力です。周囲の目を気にすることなく好きな場所で仕事を進められるので、リラックスした状態で業務ができ、効率がよくなることが期待できます。

テレワークの場合、業務に必要な資料は電子化するケースがほとんどです。結果として、面倒な書類管理の手間がかからなくなるのもメリットのひとつでしょう。

オフィスコストを削減できる

会社側にとって魅力的なのが、オフィスコストの削減です。社員の通勤が必要なくなるため、今まで支払っていた多額の通勤費を浮かせられます。オフィス内の事務用品が必要最低限の購入で済むのもポイントです。

電気代や光熱費などが抑えられることは、オフィスコストの削減に大きく寄与します。全社員がフルでテレワークをする場合、オフィスは小規模でよいため、家賃の削減も可能です。オフィスの省力化により、環境負荷の軽減にもつながります。

ワークライフバランスを実現できる

ワークライフバランスの実現は、さまざまなメリットをもたらしてくれます。「家族と過ごす時間が増える」「親の介護をしながら働ける」「まだ小さい子どもを見ながら働ける」などが実現するので、社員の満足度や幸福度のアップが期待できるでしょう。

会社側としては、社員の満足度が上がることでブランドイメージの向上につながるのがメリットです。ブランドイメージが良いと、優秀な人材が集まることも見込めます。ワークライフバランスの向上は、会社にも社員にもメリットをもたらします。

BCP対策ができる

テレワークは、BCP対策の点でも優れています。BCP対策とは、自然災害や火災などの緊急事態が発生した際、早期復旧を図るための対策です。テレワークの場合、社員や機能がオフィスに一極集中するわけではないので、災害時の事業継続や早期の復旧が見込めます。

自然災害だけでなく、パンデミックのリスク軽減も見込めるでしょう。身近なパンデミックはインフルエンザです。会社内でインフルエンザが発症すると、社員が次々に感染し、円滑に業務が進まない恐れもあります。テレワークであれば社員同士でインフルエンザが広がることもなく、業務が進まないといったリスクを回避できるでしょう。

まとめ

まとめ
働き方改革によって仕事の仕方に多様性が求められ、テレワークの導入を検討している企業も増加しています。テレワークが失敗に終わらないよう、成功のポイントを抑えて事前にしっかりと計画を立てることが重要です。

しかし、導入しようと思っても「何から始めたらよいのか」「どのような環境整備が必要か」などが分からず、なかなか導入に踏み切れないという現状もあるでしょう。

イッツコムでは、ブロードバンドネットワークを通じて、企業のテレワーク導入をサポートしています。長年培ってきた豊富なノウハウや知識を活かし、お客様の不安や悩みごとをトータルに解決できるのが強みです。テレワークの導入は、ぜひイッツコムにご相談ください。