液晶パネルの種類(TN・VA・IPS)・特徴・選び方まで徹底解説
目次
現在主流の液晶パネルはTFT液晶で、液晶分子の駆動方式によってTN方式・VA方式・IPS方式の3種類に分類できます。それぞれに強みや弱みが異なるため、用途に応じて最適な駆動方式のものを選ぶことが大切です。
液晶パネルにはどのような種類があるのか知り、購入・運用の指針としたい方もいるでしょう。そこでこの記事では、液晶パネルの種類や特徴、比較検討のポイントについて紹介します。
液晶パネルは「TFT液晶」が主流
液晶パネルはガラス内に封入された液晶分子を活用して色表現をします。液晶パネルは高性能化を続けており、現在は「TFT液晶」と呼ばれる方式が主流です。TFT液晶は液晶分子の駆動方式によって3種類に分類されます。まずは液晶パネルやTFT液晶とは何かを見ていきましょう。
液晶パネルとは?
液晶とは、液体でありながら固体(結晶)の性質を併せ持つ、液体・固体の中間的な状態です。細長い棒状の液晶分子は、分子の向きの規則性を保ちつつ液体の流動性があり、方向性によって光の屈折率や誘電率などの物理的な特性が変わります。
液晶パネルはこの液晶分子が無数に封入された層を、2組の偏光フィルタ(偏向板)・ガラス基盤(透明電極付きガラス)で挟み込んだ構造をしています。ただし、液晶分子自体は発光しないため、これだけではディスプレイとして機能しません。
そこで、ガラス基盤の背面からバックライトを当てます。基盤を通じて電圧を加えて液晶の並び方を変え、偏光フィルタのスリットから通る光の透過・遮断(透過量)を調整します。
TFT液晶とは?
現在流通する液晶パネルは、「TFT液晶」と呼ばれる方式が主流です。TFT液晶は、各画素に「TFT(Thin Film Transistor/薄膜トランジスタ)」でできたアクティブ素子を配置する、アクティブマトリクス方式を採用しています。
画素は赤・緑・青の3色(RGB/光の三原色)によるサブ画素(カラーフィルタ)からなり、各サブ画素に配置されたTFTが適切な電圧制御をして、RGBの組み合わせによる正確な色表現を実現する仕組みです。
無数のTFTが電圧のスイッチとして機能し、極小の各画素に対応する液晶層の透過率を変えることで、ディスプレイ全体として多彩な色を表現します。
TFT液晶はTN方式・VA方式・IPS方式の3種類
TFT液晶は液晶分子の制御方式の違いにより、「TN方式」「VA方式」「IPS方式」の3種類に大別できます。これら3方式については詳しく後述するとして、ここではざっと特徴をまとめます。
TN(Twisted-Nematic/ねじれネマティック) | 電圧オフで液晶分子の層が段階的にねじれた状態。垂直・水平方向の傾き(ねじれの垂直方向への整列)で光量を制御 |
VA(Vertical Alignment) | 電圧オフで液晶分子の層がガラスに対し垂直に整列した状態。垂直方向の傾きで光量を制御 |
IPS(In-Plane Switching) | 電圧オフで液晶分子の層がガラスに対し水平に整列した状態。水平方向の傾きで光量を制御 |
また、IPSの派生型として以下の方式も実用化されています。
AH-IPS(Advanced High Performance IPS) | LGエレクトロニクス開発による方式。高い透過率や高コントラスト比、低消費電力を実現した |
AHVA(Advanced Hyper-Viewing Angle) | AU Optronics開発による方式。応答速度が速い |
ADS(Advanced super Dimension Switch) | BOE開発による方式。上下・左右178°の広視野角が特徴。見る位置や角度が変わっても映像の変化が少ない |
TN方式の特徴とメリット・デメリット
TN方式は1970年に実用化され、1990年代まで主流の駆動方式でした。電圧オフで白く、電圧オンで黒くなる、「ノーマリーホワイト」のTFT液晶パネルです。ここでは、TN方式の仕組みやメリット・デメリットを解説します。
TN方式の仕組み
TN方式は、電圧の強さで液晶層のねじれの状態を制御して、バックライトから透過する光の強さを調整する駆動方式です。互いに90°角度をずらした偏光フィルタで、水平方向に並ぶ液晶層を挟み込みます。
電圧オフだと、液晶分子はそれぞれの偏光フィルタの近くでは同じ方向を向き、層の中で段階的にねじれている状態です。ねじれに沿ってバックライト光の偏光も回転するため、電圧オフの状態で光を透過します。
電圧を加えると、画素に対応する液晶層が垂直に立ち上がっていき、ねじれ構造が崩れる仕組みです。最大電圧の状態で偏光が回転しなくなり、バックライト光を遮断します。
TN方式のメリット
TN方式には以下のようなメリットがあります。
・構造が単純でコストが安い
・電力効率が高く、少ない電力で高輝度を得られる
・立ち下がり(白→黒)の応答速度が非常に速い
・リフレッシュレートは240Hz(1秒間に240回描画)までサポート
つまり、「安価にリフレッシュレートの高い液晶パネルが手に入る」のがTN方式の強みです。
TN方式のデメリット
TN方式の大きなデメリットは、視野角による色変化や輝度変化が大きいことです。液晶分子のねじれの状態で透過率を調整するため、斜めから画面を見ると、「正面から見たときと色・明るさが違い過ぎる」ということが起こります。
また、ガラスに対して水平方向にねじれた液晶分子を垂直に立ち上がらせると、分子の並びはある程度不均一になります。結果、完全な遮光はできません。画面が白っぽくなりやすく、コントラスト比を高くできないこともデメリットです。
VA方式の特徴とメリット・デメリット
VA方式は、電圧オフで黒く電圧オンで白くなる、「ノーマリーブラック」のTFT液晶パネルです。TN方式は水平方向から垂直方向へねじれを調整しますが、VA方式は垂直方向から水平方向へ傾きを調整します。液晶分子の駆動方式の違いにより、「黒」の表現力に優れるのが最大の特徴です。
VA方式の仕組み
VA方式は、液晶分子に電圧をかけて垂直方向から水平方向に回転させ、傾き具合を制御してバックライト光の透過率を調整する駆動方式です。
電源オフの状態で、液晶分子はガラス面に対して垂直方向に並んでおり、バックライト光をほぼ完全に遮断します。
電圧をかけると液晶分子は水平方向に倒れていき、最大電圧で完全な水平となり、バックライト光を最もよく透過する仕組みです。
VA方式のメリット
VA方式には以下のようなメリットがあります。
・遮光性が非常に高く、深く締まった黒を表現できる
・コントラスト比が非常に高い
・環境光が暗くても画面の白っぽさは気にならない
つまりVA方式は、かなり純粋な「黒」を表現できることが強みです。
VA方式のデメリット
VA方式のデメリットは、他の駆動方式に比べて応答速度が遅いことです。高速に切り替わる映像をスムーズに描画することには長けていません。
また、液晶分子の垂直方向の角度で光量を調整するため、見る角度によって透過する光量が変わります。TN方式ほどではないにせよ、視野角による色変化や輝度変化が大きい傾向にあることはデメリットです。
ただし、エリアによって液晶分子の傾き方向を制御する製品などは、高い視野角を実現しています。
IPS方式の特徴とメリット・デメリット
IPS方式はVA方式と同じく、電圧オフで黒く電圧オンで白くなる、「ノーマリーブラック」のTFT液晶パネルです。TN方式やVA方式とは異なり、液晶分子の垂直方向の傾きがありません。全体的に高性能で、圧倒的な視野角を確保できることが利点です。
IPS方式の仕組み
IPS方式は、液晶分子に電圧をかけて水平方向に回転させ、回転具合を制御して光の透過度を調整する駆動方式です。
電圧オフの状態で、液晶分子はガラス面に対して水平に、偏光フィルタのスリットに対して90°傾いて並んでいることでバックライト光を遮断します。
電圧を加えると液晶分子は水平方向に回転し、最大電圧で90°回転してスリットの向きとそろい、バックライト光を最もよく透過する仕組みです。
IPS方式のメリット
IPS方式のメリットは以下の通りです。
・上下左右で178°もの優れた視野角を誇る製品が多い
・視野角による色変化・輝度変化が少ない
・その他の性能も平均的に高い
IPS方式は液晶分子に垂直方向の傾きがないため、「視野角が極めて広い」ことが最大の強みです。画面をほぼ真横・真上・真下から見ても色の再現が崩れず、TN方式やVA方式が対応しにくいシーンでも便利に活用できます。
IPS方式のデメリット
IPS方式に目立った弱点はありませんが、TN方式やVA方式の強みと比較するなら、以下のような点がデメリットといえます。
・応答時間がやや長いため、動きの速い映像は苦手
・光を遮断した状態でもバックライト光がやや漏れるため、コントラスト比を上げにくい
・高性能な分、製造コストがかかり、販売価格も高め
TFT液晶パネルの選び方
TN方式・VA方式・IPS方式はそれぞれ強みが異なり、用途によって最適な駆動方式も変わります。TN方式はリフレッシュレートの高さや価格の低さが強みです。「黒」の表現力はVA方式の強みですが、「どこから見ても美しい映像」の表現力という意味ではIPS方式に軍配が上がります。
比較検討時に見るべきポイント
液晶パネルを比較する際に見るべき性能は以下の5点です。
1.視野角
水平方向・垂直方向から、画面を正しく見られる角度。液晶分子が垂直方向に動く方式だと視野角を確保しにくい
2.色ずれ
画素の位置ずれにより色再現が不正確になること。液晶分子が垂直方向に動く方式だと、色ずれが起こりやすい
3.透過率
ディスプレイ光を透過する割合。液晶分子で光をさえぎらない方式は透過率が高く、画面が明るい
4.コントラスト比
画面で表示できる白黒の両極端の比率。より明るい白、より暗い黒を表現できる製品ほど高数値
5.応答速度
画面の色が「黒→白→黒」と変化するときに要する時間。短時間だと、動きの速い映像をシャープに見せられる
TN方式・VA方式・IPS方式の強み弱み比較
TN方式・VA方式・IPS方式の強みと弱みを表にしてまとめました。
方式 | 強み | 弱み |
TN方式 | ・応答速度の速さや透過率の高さ | ・視野角は狭く、色ずれも多い |
VA方式 | ・コントラスト比が圧倒的に高い ・製品によっては視野角も広い | ・応答速度が比較的遅い |
IPS方式 | ・視野角が圧倒的に広く、色ずれも非常に少ない | ・目立った弱点はない |
用途による向き不向き比較
液晶パネルは駆動方式による性能差から、用途の向き不向きがあります。
TN方式が向いている用途は限定的です。汎用性で見ると総合的に高性能なIPSに軍配が上がります。同じく、それぞれの向き・不向きを表にまとめました。
方式 | 向き | 不向き |
TN方式 | ・(応答速度が速く高リフレッシュレートのため)1人用のゲーミングモニターやスポーツ観戦など | ・精細な色表現や広い視野角が求められる用途 |
VA方式 | ・(ハイコントラストのため)高画質ゲーム用や映画鑑賞 ・リビング用なら視野角の狭さもあまり問題にならない | ・動きの速い映像 |
IPS方式 | ・デザインをはじめとするあらゆる用途 ・視野角の広さを生かし、デジタルサイネージとしての活用も得意 | ・高精細な色表現ができ、性能のバランスに優れるため、不向きな用途はない |
デジタルサイネージ用なら輝度・耐久性・防熱仕様もチェック
液晶パネルをデジタルサイネージとして使う場合、常時オンにして問題なく使い続けられる性能が求められます。特に屋外用の場合、以下のような性能に注意しましょう。
・輝度(明るさ):環境光を受けても画面をはっきり見せられるだけの明るさがあること。屋外用なら少なくとも700カンデラ以上
・耐久性:強化ガラスを使っていることや風雨にさらされて故障しないこと。屋外使用に耐えられる防塵・防水性能はIP55やIP66相当
・防熱仕様:クーラーやファンを搭載し、熱による故障を避けられること
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まとめ
液晶パネルの主流であるTFT液晶にはTN方式・VA方式・IPS方式の3種類があります。応答速度の速いTN方式は1人用のゲーミングモニター、「黒」の表現力に優れたVA方式は映画鑑賞用に最適です。IPS方式は全体的にハイスペックで、視野角も圧倒的に広く、デジタルサイネージとしての活用にも向いています。
液晶パネルをデジタルサイネージとして活用する場合、輝度・耐久性・防熱仕様なども重要です。デジタルサイネージの導入をお求めなら、企画から運用保守までトータルサポートできるイッツコムにご相談ください。