ファイルサーバとは?NASやクラウド型との違いや選び方を一挙解説
目次
ファイルサーバは、組織のナレッジ蓄積やプロジェクト管理を適切に行うための基盤となるシステムです。汎用コンピュータを使って構築するタイプやNASなど、社内LAN内に設置されるものはオンプレミス型と呼ばれます。近年では、ファイル共有・管理の効率性や導入・運用コストの面から、クラウド環境への移行が注目されています。
この記事では、オンプレミス型ファイルサーバのメリット・デメリットに加え、クラウド化の考え方について解説します。自社にとって最適なクラウドサービスを選び、ファイル共有・管理に関する課題を解決しましょう。
ファイルサーバとは?
ファイルサーバは、ファイル共有・管理の機能を提供するシステムです。汎用コンピュータを用いて構築することも可能ですが、近年ではクラウド型のサービスが注目されています。まずは、ファイルサーバの概要とオンプレミス型・クラウド型の違いについて解説します。
ファイル共有に関する機能を提供
ファイルサーバとは、ネットワーク経由で特定の機能やサービスを提供するコンピュータ(サーバ)のうち、複数のデバイス間でファイルの共有・管理を可能にするものの総称です。
OSのファイル共有機能を活用することで、ネットワーク上のPC・スマホ・タブレットなどから同一ストレージにアクセスし、ファイルのアップロードやダウンロードが行えます。必要に応じて、アクセス権限の設定やバックアップ、バージョン管理などにも対応可能です。
オンプレミス型とクラウド型との違い
ファイルサーバは、オンプレミス型とクラウド型に大別されます。オンプレミス型は、社内LAN内に自前のサーバ機器を設置するものです。Windows Serverなどのサーバ用OSを活用して構築する方法の他、後述するNASを導入する方法などがあります。
クラウド型は、クラウドベンダーが提供するストレージサービスを、インターネットなどを経由して利用するものです。近年は導入コストや運用の柔軟性などの面から、クラウド型ファイルサーバへの移行が注目されています。
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オンプレミス型ファイルサーバのメリット・デメリット
オンプレミス型ファイルサーバの主なメリットは、組織内のナレッジや各ファイルへのアクセス権を一元的に管理できる点にあります。ファイルの共有・管理に関する複数の課題を解決できる一方で、物理的なサーバ資産に関するコストや、社内LAN外からのアクセスといった点は懸念材料となります。
オンプレミス型ファイルサーバの主な導入効果
オンプレミス型ファイルサーバを導入することで、以下のようなメリットを得られます。
- ファイル共有を効率化できる:同一ネットワーク内のPC・スマホ・タブレットなどから、集中管理されたファイルへアクセス可能。メンバー間での個別のファイル送信が不要となり、プロジェクト管理にも役立つ
- アクセス権限を柔軟に制御できる:ID・パスワードによるサーバアクセスの制限に加え、ファイルやフォルダ単位でのアクセス権設定が可能。Windows Serverなどのサーバ用OSを用いれば、Active Directoryによる詳細なユーザー管理も行える
- 耐障害性や書き込み速度を向上できる:RAID(複数ディスクを1つのドライブのように認識・表示させる技術)構成を活用することで、冗長性を確保できる。一部のディスクが故障してもデータを保持でき、書き込み速度の向上も図れる
オンプレミス型ファイルサーバが避けられない懸念点
ファイルサーバは、ファイル共有・管理の課題を解決する上で欠かせないシステムですが、オンプレミス型には特有のデメリットも存在します。
- 導入時のコストや手間がかかる:サーバ機器の購入費に加え、機器設置・システム構築・権限設定など多くの工数が必要。特にRAID構成を導入する場合は、冗長性を高めるほど導入コストが上昇する
- ランニングコストがかさむ:サーバ用OSのライセンス費用に加えて、メンテナンス費や機材の更新費など、運用中も継続的に費用が発生する
- リモート対応に追加のコストがかかる:社内LAN内にあるファイルサーバへ外部からアクセスするには、VPN環境の構築などネットワークセキュリティに関する追加投資が必要となる
通常のオンプレミス型ファイルサーバとNASの違い
NASは、あらかじめファイルサーバ機能を組み込んだストレージ製品であり、オンプレミス型ファイルサーバの一種です。汎用コンピュータを自社で構築してファイルサーバとして運用するのではなく、専用機器を購入し、社内LAN内に設置して使用します。
NASはすぐに使えるファイルサーバ専用機
NAS(Network-Attached Storage)は、社内LANなどのネットワーク上でファイル共有機能を提供する、ファイルサーバ専用機です。PCに直接USB接続を行う外付けHDDとは異なり、同一LAN内のPC・スマホ・タブレットなど、複数のデバイスからアクセスできます。
通常のファイルサーバでは、汎用的なコンピュータにWindows Serverなどのサーバ用OSをインストールし、ファイルサーバとして利用できるように各種設定を行う必要があります。
一方、NASは購入時点でファイルサーバとしての設定が完了しており、ユーザー登録など簡単な初期設定を済ませればすぐに使い始めることができます。専門知識がなくても導入しやすく、企業向けから個人向けまで、さまざまな製品が開発・提供されています。
機能や拡張性では従来型に軍配
NASの機能性や拡張性は通常のファイルサーバに劣ります。Windows Serverなどサーバ用OSをインストールしたコンピュータは、Webサイトやアプリのホスティング、データベース管理など、ファイルサーバ以外にもさまざまなサーバ機能を持たせられます。
一方、NASの機能はパッケージ化されています。追加でファイルサーバ以外のサーバ機能を持たせるなど、自由なカスタマイズには対応できません。製品によってはActive Directoryによるユーザー管理やRAID機能などにも対応しますが、「シンプルに操作・管理できるファイルサーバ専用機」といった製品が一般的です。
ファイルサーバをクラウド化する2つの方法
ファイルサーバをクラウド化する主な方法として、IaaSやPaaSを組み合わせてクラウドサーバを構築する方法と、ファイルサーバ機能がパッケージ化されたSaaS(クラウドストレージ)を利用する方法があります。
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複数サービスを組み合わせてクラウドサーバを構築する
手間がかかっても自由度の高いクラウド型ファイルサーバを導入したい場合、AWSやMicrosoft Azureなどのクラウド環境上にファイルサーバを構築する方法があります。
大手クラウドベンダーは、用途に応じた多様なクラウドサービスを提供しており、IaaS型やPaaS型の複数サービスを組み合わせることで、自社のニーズに応じたファイルサーバ(クラウドサーバ)を柔軟に構築・運用することが可能です。
例えばAWSでは、Amazon EC2・Amazon Elastic Block Store(EBS)・Amazon Virtual Private Cloud(VPC)などを組み合わせることで、インターネットVPN経由で任意のストレージ容量を持つWindowsファイルサーバを利用できます。
パッケージ化されたクラウドストレージを利用する
クラウドストレージは、ファイルの保存・共有・バックアップに特化した、インターネット経由で利用できるサービスです。有名なクラウドストレージには、iPhoneなどのApple製品ユーザーなら誰でも利用するiCloudや、世界最高峰のセキュリティレベルを誇るBoxを挙げられます。
こちらはSaaS型のサービス、つまりパッケージ化されたソフトウェアを提供するものです。サーバの構築や運用管理は必要なく、契約した当日からWebブラウザや専用アプリ経由でストレージサービスを利用できます。
ファイルサーバをクラウドストレージに移行するメリット
Boxなどのクラウドストレージを活用すると、インターネット経由で利便性と安全性に優れたコンテンツ管理ができるようになります。充実したセキュリティ機能や、複数のデータセンターを活用した自動バックアップなど、情報資産を保護する仕組みを定額制のプランにて利用できることも利点です。
初期費用・ランニングコストを抑えられる
オンプレミス型ファイルサーバはストレージ容量が大きくなるほど機器調達にかかる費用も大きくなり、運用管理に必要な人件費や電気代、メンテナンス費や更新費も高額になります。クラウドサーバはITインフラの管理費はかかりませんが、使用するリソース(CPUやHDD)によって費用が上下するので、ストレージの規模が大きくなるほど高額です。
その点クラウドストレージは無料プランから利用できるサービスが多い上、Boxであれば全ての有料プランで容量無制限となり、ストレージ容量に依存するコスト増加はありません。ユーザーは専用のアプリを利用するだけなので、運用管理にかかるコストを大幅削減できることも魅力です。
セキュリティ対策費を大幅に圧縮できる
オンプレミス型ファイルサーバは自社構築するため、情報漏えいや不正アクセスを防ぐために高額なセキュリティ対策費を要します。クラウドサーバもファイアウォールなどのセキュリティ関連のリソースを利用するなら、追加のコスト投下が必要です。
その点クラウドストレージであれば、セキュリティ関連の機能・仕組みは全てパッケージ化されています。サービス事業者にとってはサービスの信頼性が何より重要なので、サーバの分散管理やデータの暗号化など、セキュリティ対策にかける投資を惜しみません。充実したセキュリティ基盤を固定的な月額料金のみで利用できるのも、クラウドストレージの魅力です。
簡単・スピーディに導入できる
オンプレミス型ファイルサーバはネットワーク構成から検討する必要があり、機器の調達・設置や稼働テストなど、稼働開始までに手間・時間がかかります。クラウドサーバはサービスの組み合わせやシステム構成を検討する必要があり、オンプレミス環境とは異なる知識が必要とされることもネックです。
その点クラウドストレージは、サービスを契約してアプリをインストールするだけで使い始められます。サービス提供に必要な仕組みはすでに完成されているので、フォルダ構造の決定やアクセス権限の設定などをするだけで稼働開始できることもメリットです。
24時間365日どこからでもアクセスできる
オンプレミス型ファイルサーバは、社内LAN内のサーバが稼働していなければ中身のファイルにアクセスできません。稼働中は基本的に専任のエンジニアを常駐させる必要があり、機器の故障時やメンテナンス時などにアクセス不可になるケースもあります。またアカウント制御やセキュリティ対策の不備によって、外部ネットワークからのアクセスが遮断されるケースも珍しくありません。
クラウドサーバは24時間365日アクセスできますが、データ通信の量や時間に依存する従量課金制であることが多く、大容量ファイルをやりとりするとコストが肥大化することはネックです。
その点クラウドストレージは、コストを気にすることなく、いつでもどこからでもアクセスできます。まれにサービス障害による遅延が発生することを除いては、アクセスが非常に安定していることも魅力です。
利用するだけでBCP対策になる
オンプレミス型ファイルサーバの弱点の1つは、データを保存しているサーバが自社内にあることです。オフィスが災害の被害に遭った場合、データが破損したり外部ネットワークからアクセスできなくなったりします。あるいは感染症やテロなどの影響で出社制限がかかると、運用管理も難しくなることがネックです。
その点クラウドストレージであれば、サーバは遠隔地で運用管理され、サービスによっては地理的に離れた複数拠点で分散管理されます。特にオプション購入などは必要なく、サービスを利用するだけでBCP(事業継続計画)対策になることも、クラウドストレージを利用するメリットです。
ファイルサーバのクラウド化に最適なサービスの選び方
自社にとって最適なクラウド型ファイルサーバを選ぶには、まず運用中にどのような機能が求められるかを定義することが重要です。必要なストレージ容量の見込みをつけ、容量とコストのバランスを検討した上で、自社のセキュリティ要件を満たすサービス・プランを選択しましょう。
導入目的や利用シーンを明確化する
クラウド型ファイルサーバは、ファイルの保存・共有の他にもさまざまな機能を提供します。サービスによって標準機能・オプション機能は異なり、ライセンス数に応じた費用感などにも違いがあります。
最適なサービスを選ぶために、パートナー企業や取引先とのファイル共有にも利用するのか、他の業務アプリとの連携機能も重視するかなど、誰がどのような目的・用途で活用するのかを明確化しましょう。要件を定義した上で、機能性や費用感に納得できるサービスを絞り込みます。
必要なストレージ容量の見込みをつける
どの程度のストレージ容量を自由に使えるかは、クラウド型ファイルサーバの使用感に大きく影響します。
サービスによってプラン構成は異なりますが、基本的にストレージ容量が大きいほど、利用料金は高額になります。運用中の必要に応じて追加のストレージ容量を購入することもできますが、想定外のコスト肥大化は避けたいところです。サービスを利用するチームや部署などで、どの程度のストレージ容量が必要かをあらかじめ検討しておきましょう。
なお、サービスによっては容量無制限のプランを選択できます。例えばBoxなら、全ての法人向け有料プランで容量無制限です。容量不足の懸念がないサービスなら、プラン比較の際は利用できる機能に注目しましょう。
セキュリティ要件を満たすサービスを選ぶ
自社で利用するクラウド型ファイルサーバは、漏えいや喪失が許されない情報資産を管理する役割も担うため、セキュリティ機能は重要です。
著名なクラウドベンダーはセキュリティを重視してストレージサービスを開発・提供しますが、サービスによって標準対応するセキュリティ機能は異なります。ユーザー認証の仕組みやアクセス権限設定の詳細さ、バージョン管理ができる世代数など、比較検討したいポイントは多岐にわたります。オプションで利用できる機能も調べ、自社のセキュリティ要件を満たすサービス・プランを選びましょう。
ファイルサーバのクラウド化には「Box」が最適
ファイルサーバのクラウド化に際し、自社の要件を満たすサービス・プランを選択できれば、ファイル共有・管理の効率化や高コスト構造の是正を目指せます。
各国の政府機関やリーダー企業も採用する「Box」であれば、容量無制限のストレージであらゆるファイルを安全に一元管理でき、どれだけファイルをアップロード・ダウンロードしても一定の料金で利用できます。7段階のアクセス権限設定や50世代以上のバージョン管理など、ファイルを安全に共有・管理するための仕組みが完備されていることも魅力です。
また1,500以上のアプリと連携可能で、他の業務アプリで使用するファイルもBox上で管理したり、複数アプリをまたぐワークフローを自動化したりすることもでき、業務効率化・生産性向上にも大きく貢献します。
【関連記事:クラウドストレージ「Box」の魅力は?使い方やメリットを徹底解説】
まとめ
ファイルサーバは組織内のナレッジ蓄積やプロジェクト管理のために重要ですが、オンプレミス型は導入・運用コストがかさみやすく、社外とのやりとりにも懸念があります。リモートワークなど柔軟な働き方を採用する企業には、クラウド型のファイルサーバがおすすめです。
IaaSやPaaSを組み合わせて独自のサーバ環境を構築・運用することもできますが、担当者に十分な専門知識がなければ、セキュリティ上の問題やコストの肥大化を招くこともあります。この点、機能がパッケージ化されたクラウドストレージは、誰でも直感的に操作・活用できます。
Boxのような容量無制限かつセキュリティ機能や外部アプリとの連携機能にも優れたサービスなら、企業規模にかかわらず、コンテンツ管理の安全性や効率性を大幅に向上できます。Boxの活用をお考えなら、運用中の安全なデータ移行にも対応できるイッツコムにご相談ください。