アウトソーシングとは?人材派遣との違いや活用のポイントを解説
目次
人材不足や働き方改革・DXに伴う組織再編の加速を受け、アウトソーシング(BPO)を活用する企業が増えています。アウトソーシングはコア業務への集中や収益性の改善に役立ちますが、アウトソース先との協力体制構築にはICTツールを整備することが重要です。
自社でアウトソーシングを有効活用するにはどうすべきか知りたい方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、アウトソーシングの意味や人材派遣との違い、メリット・デメリット・ポイントについて紹介します。
アウトソーシングの意味や種類とは
アウトソーシングは古くから活用されてきたビジネススタイルですが、近年はオンショア・ニアショア・オフショアと区別したり、専門分野の異なるさまざまなBPO事業者が登場したりしています。まずはアウトソーシングの大枠を理解するために、意味や種類を見ていきましょう。
アウトソーシングとは
「アウトソーシング(Outsourcing)」とは、企業が業務の一部を外部の専門業者に委託することです。Out(外部)とSourcing(資源調達)を組み合わせた語で、人材・ノウハウ・情報システムといった外部資源を調達し、自社の業務に適用することを指します。
アウトソーシングは米国で20世紀半ばから導入されたビジネススタイルで、国内では経理・総務・人事などの間接部門だけでなく、専門性の高い法務・情報システムなどの部門にも活用が進んでいる状況です。
オンショア・ニアショア・オフショアの違い
アウトソーシングは委託先との地理的な距離によって3種類に分類されます。
・オンショアアウトソーシング(Onshore outsourcing):自国内の(近い距離の)事業者へ外部委託すること
・ニアショアアウトソーシング(Nearshore outsourcing):自国内の(地方)または近隣国の事業者へ外部委託すること
・オフショアアウトソーシング(Offshore outsourcing):遠い他国の事業者へ外部委託すること
日本の場合、東京などの大都市圏から見た北海道や沖縄をニアショア、中国やベトナムなどをオフショアとする場合があります。
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは
アウトソーシングのうち、企画・設計から実施までの業務プロセスを一括して外部委託することを「BPO(Business Process Outsourcing)」と呼びます。
案件ごとの委託とは異なり、BPOベンダーは事業部門の一部のように機能するため、通常のアウトソーシングよりも委託先の自由度が高い形態です。国内ではIT系企業によるコールセンター業務や事務作業、Web開発などのBPOが人気を博しています。
BPOは委託業務によってITOやKPOなど多種多様
BPOはさまざまな分野で活用されており、外部委託する業務プロセスによって以下のように分類される場合もあります。
・EPO(Engineering Process Outsourcing):設計・生産など
・ITO(Information Technology Outsourcing):ITシステム関連業務
・KPO(Knowledge Process Outsourcing):データ分析を中心とした知的生産活動
・LPO(Legal Process Outsourcing):法的手続き
・RPO(Recruitment Process Outsourcing):採用活動
人材派遣とアウトソーシングは何が違う?
アウトソーシングと人材派遣は「業務遂行に社外リソースを活用する」という点では同じですが、契約形態は明確に異なります。アウトソーシングは「業務単位」の発注であるのに対し、人材派遣は「人員単位」の発注です。指揮系統や対価の基準など、さまざまな違いがあります。
労働者派遣契約と業務委託契約の違い
人材派遣は派遣先企業と人材派遣会社が「労働者派遣契約」を締結します。派遣会社が雇用する労働者を、派遣先企業で一定期間労働させる契約です。
アウトソーシングは発注者とアウトソース先が「業務委託契約(請負契約、委任契約または準委任契約)」を締結します。委託する業務内容や条件、問題が発生した場合の対処方法などに関する契約です。
派遣社員には労働基準法と労働派遣法が適用されますが、業務委託の受託者には、原則として労働基準法は適用されません。
指揮命令権や業務遂行する場所の違い
人材派遣の場合、派遣先企業は派遣された労働者に対して指揮命令権を持ちます。例えば自社社員が育休・産休などで稼働できない期間の補充要員として、人材派遣会社から1人を半年間派遣する契約を締結し、自社組織の一員のように使用できる仕組みです。
一方アウトソーシングの場合、発注者は指揮命令権を持ちません。何人をいつどこで使用しどのように業務を遂行するかはアウトソース先が随時調整します。コールセンター業務やIT系業務のBPOのように、アウトソース先が自前のリソースを活用して業務遂行することが一般的です。
ただし契約内容によっては、アウトソース先社員や個人事業主(フリーランサー)本人が、自社オフィス内で業務遂行するケースもあります。
報酬は人日・人月ベースか成果・案件ベースか
発注者が「何に対して報酬を支払うか」も人材派遣とアウトソーシングの違いの1つです。人材派遣の場合、労働者(派遣社員)が派遣先で稼働した時間に応じた報酬を支払います。つまり人日・人月ベースの報酬となりますが、アウトソーシング(業務委託契約)の場合は成果・案件ベースの報酬です。
【業務委託契約】
・請負契約:受託者による成果物の納品(仕事の完成)を目的とし、成果物に対して報酬を支払う
・委任契約:受託者(弁護士・司法書士など)が法律行為を遂行することに対して報酬を支払う
・準委任契約:受託者(医師・エンジニア・コンサルタントなど)が法律以外の分野の業務を遂行することに対して報酬を支払う
アウトソーシング(BPO)が多数の企業に求められる背景
アウトソーシング(BPO)の活用はさまざまな業界で一般化しており、BPOサービスの市場規模は今後も拡大を続ける見通しです。市場拡大の背景として考えられるのは、貴重な人材をコア業務に集中させるニーズの高まりや、働き方改革やDXに伴う組織再編の加速です。
コロナ禍以降も市場拡大が続くBPO
矢野経済研究所が2022年に発表したレポートによると、2021年度のBPOサービス全体(IT系BPOと非IT系BPOの合算値)の市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比3.0%増の4兆5,636億9,000万円に上ります。
民間企業に加えて官公庁のアウトソーシング機運も高まっていると見られ、2026年には5兆円台まで市場拡大する見込みです。
(参考: 『BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2022年)|矢野経済研究所』)
慢性的な人材不足によりコア業務重視の傾向
BPO市場が成長を続ける大きな原因の1つは、慢性的な人材不足です。超高齢社会に突入している日本では若手人材が不足しがちで、新卒・中途ともにさまざまな業界で人材獲得競争が過熱しています。
そこでノンコア業務は外部委託し、貴重な人材をコア業務へ集中することで、生産性向上・業務効率化を図るニーズが高まっている状況です。従来は自社で行っていたコールセンター系業務や間接部門系業務のBPO、コア部門の単純作業代行などの需要が伸びています。
働き方改革やDXに伴う組織再編の加速
新型コロナウイルス感染症により経済活動がストップした2020年以降、外出自粛に伴いリモートワークが急速に普及・拡大しました。この変化と連動し、働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じた業務変革に取り組む企業も増えています。
業務変革に伴い、社内人員の再配置を含めた業務オペレーションの抜本的な見直しが必要となる中、BPOを取り入れた組織再編を目指す企業が増え、市場拡大を後押ししている状況です。
アウトソーシングに適したノンコア業務の例
アウトソーシングにはマニュアル対応の可能な業務や利益に直結しないノンコア業務が向いています。また、自社リソースでは対応しにくい専門的な業務に対応するBPO事業者も増えている状況です。一般的には以下のような業務を外部委託します。
・経理や総務
・荷物の梱包や配送
・店舗運営管理
・入力・印刷などの定型業務
・コールセンター業務
・ITシステムの監視・運用・保守
・法務(顧問弁護士)
・採用活動
アウトソーシングのメリット
アウトソーシングには以下のようなメリットがあります。
・選択と集中によるコア・コンピタンス強化
・安価な外部資源の活用によるコスト削減
・固定費の変動費化による収益性の改善やリスクヘッジ
・提供価値を高めることによるCXの向上
さまざまな経営課題を解決するアウトソーシングの魅力を見ていきましょう。
選択と集中によるコア・コンピタンス強化
人材不足の影響もあって、多くの企業にとって「選択と集中」がキーワードとなっています。アウトソーシングを活用することで、不採算部門を整理し、収益部門へ重点的に資源を投入できることは大きなメリットです。
これにより競争優位性の源泉となる他社にまねできない強み、つまり「コア・コンピタンス」の強化につながります。
安価な外部資源の活用によるコスト削減
アウトソーシングはコスト削減効果を期待できるのもメリットです。特にオフショアアウトソーシングは、人件費が安い国の労働力を活用できるため、ITシステム関連業務の外部委託に重宝されています。
また、自社で専門性の高い人材や高価な設備を抱える必要がなくなるのもポイントです。必要なときに必要なだけ外部資源を調達できるので、業務量のピーク時に合わせて資源を維持する必要もありません。
固定費の変動費化による収益性の改善やリスクヘッジ
経費は固定費と変動費に大別できますが、アウトソーシングは人件費や光熱費などの固定費を変動費化できるのもメリットです。変動費を削減するよりも固定費を削減するほうが損益分岐点は下がりやすく、製造原価を抑えつつ収益を確保しやすくなります。
アウトソーシングによって人件費や光熱費の一部を変動費化することにより、収益性を改善できるだけでなく、人材流動や不確実性リスクに強い組織になれることもポイントです。
提供価値を高めることによるCXの向上
自社が不得意な業務を専門性の高い委託先に外部委託すると、CX(顧客体験)の向上につながることもメリットです。
消費者のITリテラシー向上やWebサービスの乱立などに伴い、顧客と良好な関係を築いてLTV(顧客生涯価値)を高めることが重要となっています。アウトソーシングにより業務品質を改善し、顧客への提供価値を高めることで、CXの向上やLTVの最大化を目指しやすくなることもポイントです。
アウトソーシングのデメリット
アウトソーシングにはさまざまなメリットがある一方で、以下のような注意点もあります。
・ノウハウが蓄積できなくなる
・情報漏えいのリスクが高まる
・業務実態が不透明になる
中長期的な視点で外部委託を検討することや、信用できる事業者に外部委託すること、アウトソース先との情報共有体制を構築することが大切です。
ノウハウが蓄積できなくなる
アウトソーシングのデメリットとして挙げられるのは、外部委託した業務におけるノウハウが蓄積できなくなることです。例えばコールセンター業務を外部委託すると、顧客対応に関する人材や設備が不在となるため、インソーシング(社内に業務を戻すこと)の際に大きな困難やコストを伴います。
情報漏えいのリスクが高まる
アウトソーシングは自社で行っていた業務を外部委託するため、業務遂行に必要な顧客情報などを外部企業と共有します。ここで問題となるのは情報漏えいリスクです。自社で十分なセキュリティ対策を講じていても、委託先から情報漏えいが起こる恐れもあります。
業務実態が不透明になる
委託した業務の実態が不透明になりがちなことも、アウトソーシングを取り入れるデメリットの1つです。人材派遣に比べてアウトソーシングは受託者の裁量が大きく、また発注者側に指揮命令権がありません。
特にBPOは業務を遂行する場所が社外となることも多く、社内外で業務関連情報が分断されがちです。発注者側の監督不足により業務品質が低下したり、重大なミスに気付くのが遅れたりする懸念もあります。
こういったリスクを防止するには、業務フローの共有や進捗状況の可視化・報告などの取り組みが重要です。
アウトソーシングの目的を達成するためのポイント
アウトソーシングはコア業務への集中やコア・コンピタンスの強化、コスト削減・収益性改善やCXの向上が主な目的です。これらの目的を達成するためには、どの業務プロセスを内製化・外部委託するかを見極め、コア業務を効率化することが求められます。ここでは、アウトソーシングの目的を達成するためのポイントを見ていきましょう。
外部委託すべき業務プロセスの検討
アウトソーシングを考える際には、まず自社の業務プロセスを棚卸しします。その上で競争優位性を確保するために内製化すべきコア業務かどうか、自社に強みのある業務プロセスかどうかを分析することが大切です。外部委託すべき業務プロセスは何かを戦略的に検討しましょう。
営業のノンコア業務にはSFAを活用
営業は売上に直結する重要な活動ですが、営業活動の中には営業報告などのノンコア業務も含まれます。一貫した活動の一部分を外部委託するのは困難ですが、これは「SFA(営業支援システム)」を導入すれば解決できます。
SFAは営業部門全体で顧客情報や営業履歴などの情報を共有し、組織的な営業活動を支援するシステムです。これにより営業活動のノンコア業務を自動化または簡略化し、商談などのコア業務に集中できます。
【関連記事:SFAとCRMの違いとは?役割・想定ユーザーや機能差を易しく解説】
名刺情報のデータベース化を外部委託
営業活動のノンコア業務に名刺管理を挙げられます。名刺情報はデータベース化が煩雑で属人化しがちですが、名刺管理ツールによってはネットワーク経由でスキャンデータをやり取りし、サービス事業者側で名刺情報のデータベース化を実施します。
これにより手間をかけず社内人脈を可視化し、SFAとのシームレスな連携による営業コア業務への集中が可能です。
【関連記事:名刺の整理方法をアナログ・デジタル別で解説!名刺管理ツールの必要性とは?】
MAでマーケティング活動を自動化
マーケティングは顧客との関係構築やCXの向上にとって重要な活動ですが、優秀なマーケティング専任者を確保するのは困難です。
MA(マーケティングオートメーション)を導入すれば、見込み顧客の育成や確度の高い見込み顧客の発掘を自動化できます。これによりマーケティングと営業をシームレスに連携させ、マーケティングを売上に直結する活動へと変えられるのがポイントです。
【関連記事:マーケティングオートメーション(MA)とは?機能・メリットと導入のコツ】
情報管理の選択と集中にはクラウドストレージ
スマホ・インターネットの利用拡大やサブスクリプション型サービスの台頭など、社会・ビジネスのデジタル化が進行し続けている状況です。この変化に伴い、企業には日々多くのデータが蓄積されていきます。ストレージの肥大化やファイルサーバの管理は懸念点ですが、この問題はクラウドストレージの導入で解決可能です。
クラウドストレージはサービス事業者側がサーバを保守管理するため、自社でサーバ資産を調達・維持したり専任の管理者を常駐させたりする必要がありません。サーバ関連のセキュリティ対策もサービス事業者側が実施するため、情報管理における選択と集中に効果的です。
【関連記事:データ共有の方法を徹底解説!クラウドストレージがおすすめの理由とは?】
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まとめ
アウトソーシング(BPO)は受託者と案件・成果ベースの業務委託契約を締結するものです。委託業務によってITOやKPOなどと呼び分けられます。慢性的な人材不足や働き方改革・DXに伴う組織再編の加速などを受け、BPOの需要は今後も高まっていく見通しです。
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