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病院にWi-Fiを導入するメリットとは?実態と環境整備のポイントを解説

大多数の病院はWi-Fi導入済みです。入院中にフリーWi-Fiを利用したり、モバイルWi-Fiルーターの持ち込みができたりする病院もあります。これからWi-Fi環境を整備する病院は、患者・来訪者によるWi-Fi利用も想定し、電波干渉を起こさないネットワーク構築を検討することが重要です。

そこでこの記事では、病院ならではのWi-Fi環境整備のポイントを解説します。病院におけるWi-Fiの利用実態や、どのように利活用すべきかを詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

病院内でのWi-Fi・携帯電話の利用実態


Wi-Fiはすでに大多数の病院が利活用しており、患者・来訪者向けに提供しています。電波の利用に関してルールはあるものの、病院によってはモバイルWi-Fiルーターの持ち込みも許可しています。まずは、病院内でのWi-Fi・携帯電話の利用実態を解説します。

Wi-Fiは大多数の病院に導入済み

近年、病院での無線LAN(Wi-Fi)導入が急拡大しています。電波環境協議会が2020年度に実施したアンケート調査によると、88.7%の病院と、71.2%の有床診療所がWi-Fiを導入済みです。Wi-Fiは医療機関において、以下のような用途に用いられています。

・施設スタッフのインターネット接続
・電子カルテを含む医療情報システム
・医療機器のデータ伝送

また従来の特定小電力無線局(420MHz帯~440MHz帯)ではなく、Wi-Fi(2.4GHz帯や5GHz帯)を採用した医用テレメータも販売・運用されています。コロナ禍を受けて、Wi-Fi接続によるオンライン面会用端末やオンライン診療用無線端末などの利用も拡大しました。このようにWi-Fiは、医療機関の情報システムにおける通信インフラとして重要な位置を占めるようになっています。

(参考:『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(改定版)|電波環境協議会』

患者・来訪者向けのWi-Fi整備も拡大中

患者・来訪者のインターネット接続にもWi-Fiの利用が拡大しています。同じく電波環境協議会のアンケート調査によると、30%以上の病院・有床診療所にて患者・来訪者向けにWi-Fiを提供中です。2016年(平成28年度「病院における電波利用の状況及び電波環境に関する調査」)では15%程度だったことを考えると、「Wi-Fiが使える病院は拡大中」といえるでしょう。

地域差も大きいため一概にはいえませんが、2021年1月に発足した「病室WiFi協議会」の活動も奏功し、全病室Wi-Fi完備の病院や一部病室にWi-Fi環境を整備する病院は増えています。

(参考:『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(改定版)|電波環境協議会』

病院内でWi-Fi・携帯電話を使用できるエリア

病院によってWi-Fiや携帯電話の利用ルールはさまざまです。一例として、患者・来訪者による電波利用を部分的に許可する病院の場合、以下のようなルールを設定しています。

場所ルール
携帯電話使用コーナーなど利用可
食堂/待合室/廊下/エレベーターホールなど利用可
ただし歩きスマホなどのマナー違反や医療機器への影響がない場合
病室など利用可
ただし通話を制限し、医療機器への影響がない場合
診察室原則として利用不可(電源を切る必要はない)
手術室・集中治療室など利用不可

モバイルWi-Fiルーターを持ち込みできる病院もある

患者・来訪者向けに完全無料のフリーWi-Fiや、外部のWi-Fi提供会社と連携した有料Wi-Fiサービスを提供している病院もあります。こういった環境が整っていない場合、スマホによるテザリングや、モバイルWi-Fiルーターの持ち込みを考えることになるでしょう。

病院側が許可していれば、自前のモバイルWi-Fiルーターを持ち込み、パケット通信費を抑えたインターネット接続が可能です。モバイルWi-Fiルーターのレンタル事業者によっては、病室まで機器本体を届けてくれるサービスを提供しています。

ただし、モバイルWi-Fiルーターもスマホも携帯電話回線を使用してインターネットにアクセスするため、携帯電話が使用禁止のエリアでは使えません。

携帯電話はほぼ全ての病院で使える

病院での携帯電話の利用も一般化しています。現在は携帯電話の使用を全面的に禁止する病院はごく少数です。同じく電波環境協議会が2020年度に実施したアンケート調査によると、「全ての場所で使用可」とする医療機関は35.6%、「一部の場所で使用可」とする医療機関は62.6%に上ります。無回答を除くと、残りはわずか1.5%です。

「病院は携帯電話全面使用禁止が当然」という時代もありました。しかしこれは、送信電力の大きい2Gの携帯電話を前提とした、医療機器への影響を避けるための対策です。

3G以降の携帯電話は、医療機器に与える影響が大幅に小さくなっています。このため医療ICT化や患者のQOL(生活の質)向上を重視し、携帯電話の利用を部分的または全面的に認める病院が増えている状況です。

(参考:『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(改定版)|電波環境協議会』

病院でWi-Fiや携帯電話の利用が禁止される理由

携帯電話を全面使用禁止にする病院はごく少数ですが、禁止の理由としては以下のものを挙げられます。

・医療機器への影響
・呼び出し音や通話による他人への迷惑
・呼び出し音による診療・検査への影響

つまり、マナーや医療行為への影響を問題としています。Wi-Fiの利用禁止に関しては、「病院側が管理するネットワークとの電波干渉を避けるため」ということも大きな理由です。診察室・手術室やその近くでの電波利用を制限する病院は多いでしょう。

病院がWi-Fi環境を整備するメリット


病院のWi-Fi整備は一般化していますが、未導入の病院からすると「なぜ導入が必要なのか」という根拠は不明瞭かもしれません。Wi-Fi環境を整備するメリットは、医療業務の効率化や、患者・来訪者へのサービス向上につながることです。ここでは、病院側・患者側両面のメリットを解説します。

医療業務の効率化

Wi-Fi環境を整備すれば、医療業務を効率化できます。院内の携帯端末やPC・サーバを一元的に管理することで、最先端医療を効率的に提供できるようになるでしょう。具体的にできることの例は以下の通りです。

・センサー・インカムなどのICT機器の活用
・タブレット端末からの電子カルテの活用
・Wi-Fi対応の医用テレメータも一元管理
・各種書類を電子化して保存・共有

これらの変化がペーパーレス化の推進とコスト削減にも貢献します。業務プロセスそのものを変革し、「医療DX」の実現につなげることも考えられるでしょう。

患者・来訪者へのサービス向上

病院側がWi-Fi環境を整備することは、患者・来訪者にとってもさまざまなメリットにつながります。待合室や病室でフリーWi-Fiを利用できるようになれば、待ち時間のストレスを軽減でき、また入院患者は「孤独」を解消しやすくなるでしょう。

テザリングやモバイルWi-Fiルーターはルールが気になり使いにくい状況もありますが、病院側が提供するWi-Fiサービスなら安心して利用できます。結果的に「院内での管理外のWi-Fi利用をなくす」という病院側の目標も達成しやすくなるでしょう。

また、病院側がオンライン面会用端末やオンライン診療用無線端末などを導入しやすくなることで、患者は満足度の高い医療サービスを受けられることもうれしい点です。評判が上がれば、病院経営を改善しやすくなるといった好循環も期待できるでしょう。

病院へのWi-Fi導入の課題とトラブル


Wi-Fi環境の整備はさまざまなメリットがある一方で、多くの病院は不安や課題を抱えています。また、導入後のトラブルに見舞われるケースも珍しくありません。ここでは、Wi-Fi導入に当たって何を重視して検討すべきかを解説します。

Wi-Fi導入前の不安と課題

電波環境協議会の調査によると、医療機関はWi-Fi機器を導入する上での課題として以下のものを挙げています。

・セキュリティやプライバシーに関する不安(47.3%)
・機器を導入する予算がない(38.6%)
・通信容量や接続の安定性の不安(31.9%)
・他の機器との電波干渉(28.8%)
・どのような機器を導入すべきか分からない(20.7%)

またWi-Fi機器の管理・運用の課題として、多く挙げられているのは以下のようなものです。

・管理・運用する上で十分な知識を持った人材がいない(56.3%)
・どのような管理・運用ルールを設定すべきか分からない(41.0%)

総合して、「Wi-Fiサービスやネットワーク構築などの実態が不透明」という状況があると考えられます。

(参考:『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(改定版)|電波環境協議会』

Wi-Fi導入後のトラブル

同じく電波環境協議会の統計によると、Wi-Fiを導入する医療機関の50.4%が、電波に関するトラブルを経験しています。

・Wi-Fiにつながらない・つながりにくい(71.3%)
・特定の場所で電波が十分に届かない(56.2%)
・Wi-Fiの通信速度が遅い(36.3%)
・管理外のWi-Fiネットワーク機器が設置されている(11.4%)

Wi-Fiは同一周波数帯を多くの機器と共有していることもあって、電波干渉などによる通信トラブルが多く発生していると考えられます。とはいえ通信インフラの増設は、コスト・工期・技術面の問題もあり、即時の対応は困難な場合も多いでしょう。

電波やWi-Fi活用に関して理解を深め、院内の電波環境を調査し、ネットワークの設計・構築から対策することが重要です。

(参考:『医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(改定版)|電波環境協議会』

病院へのWi-Fi導入時に検討すべきポイント


病院がWi-Fiを導入するに当たっては、Wi-Fiの電波について正しく理解し、「電波干渉を起こさない設計・運用を計画すること」が重要です。ここでは、Wi-Fiネットワーク機器をどのように設置・設定すべきかを中心に、Wi-Fi導入前に検討すべきポイントを解説します。

【必須】Wi-Fiアクセスポイントを増設

Wi-Fiの電波は木やガラスなど電気を通しにくいものは透過し、水や金属には吸収されやすい性質があります。院内は壁・天井・床・扉に多くの金属が用いられるため、Wi-Fi機能に特化したWi-Fiアクセスポイント(AP)を複数設置し、電波の死角をなくすことが重要です。APは壁や天井にも設置できるため、医療機器などとの電波干渉も抑えられます。

ただし部門ごとにAPを独自調達すると、電波干渉による通信障害が発生しやすいことは注意点です。電波環境測定を実施した上で、APの配置やチャネル設計を計画し、APの調達・設計を院内で一元化することが求められます。

【関連記事:Wi-Fiのアクセスポイントとは?LANの仕組みや機器の機能も一挙解説

2.4GHz帯と5GHz帯の適切な使い分け

Wi-Fiが使用する電波の周波数帯は2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯の3種類です。2023年6月時点、多くのWi-Fi機器は2.4GHz帯または5GHz帯を利用します。

2.4GHz帯は、電子レンジ、Bluetooth機器、コードレス電話の他、マイクロ波メスやマイクロ波治療器などにも使われる周波数帯です。このため電波干渉を起こしやすく、特に電子レンジなど強力な電波を発する機器と電波干渉を起こすと通信障害の原因になります。院内での周波数帯の使い分けは、以下のように考えることができるでしょう。

・医療用は到達範囲が狭く干渉の少ない5GHz帯
・患者・来訪者のインターネット接続用は2.4GHz帯

医療用Wi-Fiのチャネル設計

Wi-Fiの電波は、APの設定によって複数のチャネルを使い分けられます。医療用で使用する5GHz帯は、W52規格・W53規格の各4チャネルと、W56規格の12チャネルです。ただし、W53とW56の16チャネルは、気象レーダーとの干渉を検出した際に通信の途絶が起こります。このため医療機関は、W52の4チャネルを使うことが一般的です。

また同じチャネルのAPを隣接させた場合、電波干渉を起こして通信が途絶する場合もあります。医療システムの不具合にも直結するため、チャネル設計は適切に行いましょう。例えば3種類や4種類のチャネルを使い分け、隣接するAPが相互に干渉し合わないように設計します。

電波強度の調整

チャネル設計をする際、APの電波強度も考える必要があります。よくある電波強度のトラブルは、電波の死角をなくすために最大出力のAPを過密に設置していまい、電波干渉による通信途絶を起こしやすくなっている状況です。

逆に、廊下に設置したAPの電波強度が弱いために、「ベッドサイドでWi-Fiがつながらない・つながりにくい」といった状況もあります。金属を多く含んだ壁・天井とは異なり、吹き抜けは電波が通りやすいため、フロアをまたいだ電波干渉も注意したい点です。

こういった病院ならではの事情から、APの位置関係も考え、適切な電波強度に出力を抑えることが求められます。院内の構造が複雑であるほど調整は難しくなりますが、APによってはチャネルや電波強度の自動調整が可能です。

用途ごとにネットワークを分離

Wi-Fiは病院内のさまざまなシステムに利用されます。トラフィック増加が他のシステムに影響を与えないよう、用途ごとにネットワークを分離することは重要です。またフリーWi-Fiを提供する場合、患者・来訪者向けのネットワークを分離することも求められます。

とはいえ院内のネットワークを物理的に分離してしまうと、AP間で電波干渉を起こしやすくなるなど他の問題が生じることは懸念点です。「VLAN(Virtual Local Area Network/仮想LAN)」に対応したAPなら、仮想的(論理的)にネットワークを分離できます。

VLANを設定した上でゲストWi-Fi用SSIDを設定すれば、患者・来訪者向けのWi-Fiにはインターネット接続だけを許可し、医療システムへのアクセスを禁止できる仕組みです。

テザリングやモバイルWi-Fiルーターの利用ルール設定

患者・来訪者は各自のスマホで電話し、病院側が提供するフリーWi-Fiを利用することもできます。ただし、患者・来訪者がテザリングをしたりモバイルWi-Fiルーターを持ち込んだりした場合、「院内に管理外のWi-Fiネットワークが生まれる」ことは懸念点です。

病院のネットワークで運用するAPと電波干渉を起こすため、使用場所や電波強度によっては医療システムへ悪影響を与えることも考えられます。テザリングやモバイルWi-Fiルーターは禁止とすることが望ましいものの、許可する場合は使用場所や端末の取り扱いなどに一定のルールを設けることが必要です。

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病院がWi-Fi環境を整備すると、Wi-Fi経由でインターネット接続をするデバイスの増加が考えられます。医療システムの遅延や停止を避けるには、トラフィック増加に対応できるインターネット回線が必要です。また障害時のバックアップ回線を整備することも重要といえます。APの増設に合わせ、インターネット回線の二重化(冗長化)も検討しましょう。

【関連記事:インターネット回線の冗長化とは?仕組みや具体的な構成例を一挙解説

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まとめ


Wi-Fi環境をスタッフ用や医療システム用に整備する病院は、2020年時点で約9割に上ります。患者・来訪者向けにもWi-Fiを提供し、入院中の「孤独」に対応する病院も増えている状況です。Wi-Fi環境を整備する際、複数台のAPを設置することになりますが、チャネル設計や電波強度の調整は悩ましい点といえます。

イッツコムはチャネルや電波強度の自動調整に対応する高性能APを提供しており、インターネット回線など関連サービスとのセット導入も可能です。院内のWi-Fi環境整備をお考えなら、並走サポートで安定運用を実現できるイッツコムにご相談ください。