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病院にWi-Fiを導入したい!課題とサービス・機器の選び方を整理

多くの病院は業務用・病室用にWi-Fiを導入しています。「電波干渉を極力起こさず快適・安全に利用できるのか?」といった課題もありますが、病院内業務の効率化や患者サービスの満足度向上につながるのは大きなメリットです。

一般的には、複数台の業務用Wi-Fiアクセスポイントをレンタルし、専門事業者の各種サポートを受けながら運用します。

病院におけるWi-Fi導入について、理解を深めたい担当者の方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、病院におけるWi-Fiの導入状況や課題とメリット、Wi-Fiサービスおよび機器の選び方について紹介します。

【2023年調べ】病院におけるWi-Fi導入状況

病院におけるWi-Fi導入率は2019年ごろから急速に伸びており、現在は大部分の病院がWi-Fi導入済みです。まずは電波環境協議会が2023年に発表したアンケート調査結果を元に、病院におけるWi-Fiの導入率や利用用途を解説します。

病院におけるWi-Fi導入率

総務省と電波環境協議会の「医療機関における電波利用推進委員会」が協力して実施するアンケート調査によると、Wi-Fiは2022年時点で91.6%もの病院に導入されています。

導入されているWi-Fi規格は旧来のWi-Fi5(IEEE 802.11ac)やWi-Fi4(IEEE 802.11n)以前が多いものの、一部の病院では通信の速度・安定性やセキュリティに優れたWi-Fi6(IEEE 802.11ax)も導入済みです。またWi-Fi導入済みの病院の70.5%は、2.4GHz帯と5GHz帯の周波数帯を使い分けています。

(参考:『2022年度医療機関における適正な電波利用推進に関する調査の結果|電波環境協議会 医療機関における電波利用推進委員会』

【関連記事:Wi-Fiとは?利用シーンや関連知識を初心者にも分かりやすく解説

病院におけるWi-Fiの利用用途

Wi-Fiは多くの病院において、施設スタッフのインターネット接続や医療システムの他、患者・外部訪問者向けのサービスにも活用されています。病院におけるWi-Fiの主な利用用途は以下の通りです。

(1)施設スタッフのインターネット接続用(74.1%)
(2)医療情報システム用(70.5%)
(3)オンライン面会用(52.7%)
(4)オンライン会議用(52.2%)
(5)患者・外部訪問者のインターネット接続用(41.7%)
(6)医療機器用(一般X線撮影装置、超音波画像診断装置、輸液ポンプ、生体情報モニターなど)(36.5%)

(2)の「医療情報システム」は、レセプト作成システム・電子カルテ・オーダリングシステムなど、医療事務や診療を支援するシステムを指します。

なお医用テレメータ(携帯型生体情報モニター)は89.1%の病院に導入されていますが、導入済み病院のうち62.8%が特定小電力無線局方式(400MHz帯)の製品のみを使用し、18.6%は新しいタイプのWi-Fi方式(2.4GHz帯または5GHz帯)の製品を導入済みです。

(参考:『2022年度医療機関における適正な電波利用推進に関する調査の結果|電波環境協議会 医療機関における電波利用推進委員会』

Wi-Fi導入済みの病院が挙げる課題

Wi-Fiは各種病院内業務用だけでなく、患者・外部訪問者向けにも活用されています。ただし導入に当たっては、適切なサービス・機器の選定や、業務用・病室用Wi-Fiを上手に両立できるかどうかが課題です。

Wi-Fiの規格や周波数帯の課題

Wi-Fi導入済みの病院の約半数は、「Wi-Fiの規格や周波数帯の選定において考慮していること」として以下3点を挙げています。

・電波干渉の有無(53.7%)
・通信速度(53.1%)
・導入コスト(52.4%)

Wi-Fi機器によって対応Wi-Fi規格や使用可能な周波数帯は異なります。Wi-Fi6は2.4GHz帯と5GHz帯を使い分けられ、多台数接続時にも電波干渉を避けやすく、Wi-Fi区間の通信速度も高速です。ただしWi-Fi6を使用するには、比較的新しいWi-Fiネットワーク機器の導入が求められます。

(参考:『2022年度医療機関における適正な電波利用推進に関する調査の結果|電波環境協議会 医療機関における電波利用推進委員会』

【関連記事:高速・安全なWi-Fi6接続の確認方法や魅力、Wi-Fi5との違いを解説

患者・外部訪問者用Wi-Fiの課題

病室用Wi-Fiを提供している病院は、「患者・外部訪問者のインターネット接続用に利用する際の課題」として以下の点を挙げています。

・セキュリティ・プライバシー(57.5%)
・無線カバーエリアの確保(51.2%)
・患者からの問い合わせへの対応(43.1%)
・患者の利用マナー(41.0%)
・トラフィック増による通信速度の低下(38.4%)
・導入・運用コスト(38.4%)
・適切な利用ルールや利用規約の策定(38.2%)
・施設の業務用ネットワークへの影響(35.8%)

スタッフ用や医療機器用に用いるWi-Fiと上手に両立できるかどうかは重要なポイントです。患者・外部訪問者用にも安全かつ快適に提供できるように、適切なネットワーク設計を行い、運用体制を整えることが求められます。

(参考:『2022年度医療機関における適正な電波利用推進に関する調査の結果|電波環境協議会 医療機関における電波利用推進委員会』

病院にWi-Fiを導入するメリット

病院に導入するWi-Fiは、業務用だけでなく病室用にも提供することが一般的です。導入時には病院ならではの課題はあるものの、院内ネットワーク環境を改善することで多大なメリットを享受できます。ICT(情報通信技術)活用が容易になると、病院内業務の効率化や患者サービスの満足度向上につながり、良好なブランディング効果も期待できるでしょう。

病院内業務を効率化できる

病院では医用テレメータや電子カルテなど、多種多様な機器・システムが院内ネットワークに接続されています。Wi-Fiを導入するとWi-Fi対応デバイス間でシームレスな連携ができ、業務効率化につなげられるのがメリットです。

各種医療機器・医療情報システムをWi-Fi経由で院内サーバと連携できる他、PCやタブレットなど医療スタッフの端末、無線ネットワークカメラや見守りセンサーなど各種ICT機器も1つのネットワークに統合できます。

医療業務に必要なデータの収集・管理・共有やシステム運用を効率化できる上、端末の種別・場所を問わないインターネット接続やオンライン会議も容易になり、医療サービスの効率化と質の向上が可能です。

患者サービスの満足度を向上できる

病院にWi-Fiを導入すると、待合室や入院患者用のフリーWi-Fiを提供できます。入院患者・外来患者だけでなく外部訪問者にもインターネット接続用のWi-Fiを提供でき、患者サービスの満足度向上が叶うでしょう。

病院側が患者・外部訪問者のインターネット利用をサポートすることで、コロナ禍で問題となった入院患者の「孤独」を和らげられます。また、入院中でもオンライン授業やリモートワークにより学業や仕事を継続できます。

さらに、オンライン面会やオンライン診療など、ICT活用による患者サービスを充実させることで、「医療DXに取り組む病院」としてブランディング効果を期待できるでしょう。

病院のWi-Fi導入には法人向けWi-Fiサービスがおすすめ

病院に業務用・病室用のWi-Fiを導入する際、事務室・手術室・面会室・病室・食堂など多数の場所をカバーできるように、複数のWi-Fiネットワーク機器(Wi-Fiの親機)を導入することが求められます。

必須となるのは業務用Wi-Fiアクセスポイント(AP)の増設です。Wi-Fi通信が必要なエリアにAPを設置し、ルーターとAPをLANケーブルで接続することで、Wi-Fiルーター1台では不可能な長距離・広範囲なエリアをカバーできます。

専門事業者によるAPの導入・運用サポートを利用すれば、複雑になりがちな院内Wi-Fiネットワークも低負担で構築・運用が可能です。

【関連記事:Wi-Fiのアクセスポイントとは?LANの仕組みや機器の機能も一挙解説

病院にWi-Fiを導入するポイント

業務用Wi-Fiアクセスポイント(AP)はメーカーから直接購入することもできますが、高性能な機種は高額です。Wi-Fiサービス事業者は高性能APをレンタルしつつ、各種サポートも提供します。Wi-Fi導入時には、レンタルするAPの機能性や配置・設定、事業者のサポート体制などが重要です。

APの配置や設定で電波干渉を抑える

院内Wi-Fiネットワークの構築に不備があると、隣接するAP間や同エリア内Wi-Fi接続機器間の電波干渉により、ネットワークトラブルを起こしかねません。業務用Wi-Fiと病室用Wi-Fiの電波干渉による、医療情報システム・医療機器の不具合やインターネット接続の遅延・切断を避けることは必須です。

そこで、APの配置と電波強度を最適化すること、Wi-Fiネットワークごとに利用する周波数帯やチャネルを分けることが求められます。運用を簡素化するなら、自動で電波干渉を抑えるなどの機能を備えた、高性能なAPを導入しましょう。

【関連記事:病院にWi-Fiを導入するメリットとは?実態と環境整備のポイントを解説

Wi-Fi6対応APで快適な通信速度を確保する

Wi-Fi通信の速度や安定性も重視したいポイントです。Wi-Fiは規格によってWi-Fi区間の最大通信速度に違いがあります。病院で比較的利用率の高いWi-Fi5は最大6.9Gbps、Wi-Fi4なら最大600Mbpsです。これらのWi-Fi規格は、同時接続時に通信の順番待ちが発生します。

Wi-Fi6は最大9.6Gbpsで、「OFDMA」という技術の採用により通信の順番待ちが発生しません。APの性能によりWi-Fi区間の最大通信速度は制限されますが、高性能なWi-Fi6対応APなら最大2.4Gbpsなどの高速通信にも対応します。多台数接続時の安定した高速通信を求めるなら、Wi-Fi6対応のAPを導入しましょう。

APレンタルで導入コストを抑える

Wi-Fiの導入には、APの調達および設置とLANケーブル・電源ケーブルの配線が必要です。APをメーカーなどから購入する場合、機器購入費や配線工事で導入コストが高額になることもあります。

Wi-Fiサービスを提供する専門事業者なら、高性能APも安価な月額利用料金でレンタルでき、導入コストの大幅削減が可能です。PoE(Power over Ethernet)対応のAPなら、LANケーブル経由で給電できるため、Wi-Fi導入に伴う電気工事のコストも削減できます。

事業者によっては事前の電波調査やネットワーク設計にも対応し、院内が複雑な構造でもAPの台数や配置を最適化できるため、運用コストも抑えられるでしょう。

サポートが充実した事業者を選ぶ

Wi-Fiサービスの専門事業者を利用するメリットとして、各種サポートを利用できることも挙げられます。ただし事業者によってサポート内容は異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。

運用中のサポートとして、ネットワークトラブルなどに即時対応できる遠隔管理体制やヘルプデスクは必須です。事業者によっては出張修理サービスも提供しており、機器の不具合や故障にも迅速に対応できます。

WPA3対応APでセキュリティを強化する

病院で安全なWi-Fiを提供するなら、APのセキュリティ機能も重視しましょう。懸念されるセキュリティリスクとして、エリア外からのタダ乗りや通信内容の傍受・解析、業務用Wi-Fiネットワークへの侵入などを挙げられます。

Wi-Fi通信の暗号化や認証の仕組みは重要です。現在最も安全なWi-Fiセキュリティ規格は「WPA3」で、強力な暗号化や認証の仕組みを採用し、辞書攻撃や総当たり攻撃による不正アクセスも防止します。

Wi-Fi6対応機器はWPA3標準対応であるため、セキュリティ対策という意味でもWi-Fi6対応APを導入することは大切です。

【関連記事:【テレワーク時代の新常識】Wi-Fiセキュリティの種類とセキュリティ高度を徹底解説

VLANで業務用Wi-Fiネットワークを分離する

APの機能により、業務用Wi-Fiと病室用Wi-Fiのネットワークを分離することも検討しましょう。5GHz帯と2.4GHz帯のSSIDを業務用・病室用で分けることもできますが、より安全な方法はゲストWi-Fi機能を利用することです。

VLAN(仮想LAN)に対応するAPなら、SSIDごとにVLANタグを設定し、接続先SSIDで論理的にネットワークを分離できます。ゲスト用のSSIDにはインターネット接続だけを提供し、同一ネットワーク内のデバイスや業務用ネットワークへのアクセスを禁止できる仕組みです。これによりフリーWi-Fiをより安全に提供できます。

APの管理機能でWi-Fi利用を制限する

高性能なAPは、Wi-Fiの利用制限などの管理機能も充実しています。例えばSSIDごとのスケジュール設定により、病室用Wi-Fiを利用できる曜日や時間帯を限定することが可能です。

SSIDごと・端末ごと・アプリごとに通信帯域を設定したり、ダッシュボードから通信量や使用アプリなどの履歴を確認したりできる機種もあります。これらの機能を組み合わせて、業務用・病室用のWi-Fi利用を管理し、業務用Wi-Fiの帯域確保やセキュリティ強化が可能です。

病院に高性能APを導入するならイッツコム!

病院にWi-Fiを導入するなら、業務用・病室用のWi-Fiエリア全域を漏れなくカバーできるように、複数台のAPを設置することが必要です。

イッツコムの「かんたんWi-Fi」なら、高性能APを初期費用無料・月額2,000円(税抜)からの低コストで導入できます。365日9:00~21:00のサポートデスクが標準で付帯し、遠隔でトラブル箇所を特定して迅速な対応が可能です。

「ハイエンド6」プランのAPならWi-Fi6対応のため、快適かつ安全なWi-Fi通信を提供できます。ゲストWi-Fi機能はもちろん、通信帯域設定機能や電波出力自動調整機能なども備え、効率的な運用が可能です。

事前の電波調査や詳細なネットワーク構築をお求めなら、APに関連した各種ニーズを提供できる「カスタムWi-Fi」をご利用ください。

まとめ

病院に業務用・病室用のWi-Fiを導入し、全てのエリアを漏れなくカバーするなら、複数APを適所に設置することが必要です。ただしAPを増やすほど電波干渉およびネットワークトラブルを起こしやすくなる懸念もあるため、APの機能性やWi-Fiサービス事業者の導入・運用サポートにも留意しましょう。

イッツコムの「かんたんWi-Fi」なら電波出力自動調整機能を備えた高性能APを安価に導入・運用できます。また、「カスタムWi-Fi」ならネットワーク設計・導入工事なども可能です。

病院へのWi-Fi導入をお考えなら、豊富な提案ができるイッツコムにご相談ください。