社内インフラとは?構成要素それぞれの設計・構築のポイントを解説
目次
事業継続の基盤となる社内インフラで特に重視したいのは、情報システム活用の基盤となるITインフラです。業務用デバイスの多様化やクラウドサービスの利活用といったビジネス環境の変化に伴い、ITインフラの設計・構築を見直す企業も多いでしょう。
そこでこの記事では、ITインフラの構成要素と設計・構築のポイントを解説します。Wi-Fi環境の強化やインターネット回線の冗長化など、ネットワーク課題の解決にも着目しましょう。
社内インフラとは?
会社運営を円滑に進めるためには、社内インフラの整備が重要です。社内インフラの中でもITインフラの環境を整えることは、これからの時代において大きな課題だといえるでしょう。
ここでは社内インフラの必要性や目的、ITインフラの概要を解説します。業務をよりスピーディに行うために重要な役割を果たす、社内インフラ・ITインフラについて理解を深めましょう。
社内インフラの必要性と目的
インフラとは、「下支えするもの」、「基盤」という意味です。単にインフラという場合は、一般的に電気・水道・ガスなど生活の基盤となるものや、道路・鉄道など産業や生活の下部構造を指します。
企業が事業を進めるにあたって基盤となる仕組みが「社内インフラ」です。電気や水道をはじめ、電話・FAXといった通信インフラやPC・ネットワークなどのITインフラは、全て社内インフラといえます。社内インフラの整備は、事業活動を安全かつ効率よく進めていくために不可欠な要素でしょう。
重要なITインフラ
コンピュータやネットワークに関するインフラが「ITインフラ」です。PC・ネットワーク関連機器・サーバなどのハードウェアと、OS・アプリ・データベースなどのソフトウェアに大きく分けられます。
昨今のビジネスにおいてITインフラの重要性はますます高まってきており、働きやすい環境を実現するためにITインフラの整備は欠かせません。働き方改革の推進に合わせて、リモートワークなどの取り組みも多くの企業で進められています。業務の効率化を図るためにもITインフラの整備は企業にとって重要な課題です。
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社内インフラ(ITインフラ)の構成要素は?設計・構築のポイント
社内インフラの中で設計や構築が特に重要となるのは、基幹系システムなどの安定稼働に必要なITインフラです。アプリの動作環境となる各種ソフトウェア・ハードウェアの整備、それらを連携させるネットワークの構築により、情報システムを運用して事業を継続できます。ここではITインフラの構成要素を7項目に分け、設計・構築のポイントを解説します。
アプリ
ITインフラは情報システムの稼働・運用のために必要な要素の組み合わせであり、アプリ(アプリケーションソフト)の動作環境・利用環境です。ITインフラはオンプレミス型やクラウド型のアプリが求める要件を満たすように設計されます。
インターネット経由でアプリの機能をサービスとして提供する「SaaS(Software as a Service)」を業務利用している企業も多いでしょう。主なアプリは以下のようなものです。
- メーラーやスケジューラー
- ビジネスチャットツール
- グループウェア
- クラウドストレージ
- オフィススイート
- ERP(基幹システム)
- SFA(営業支援システム)
- CRM(顧客関係管理システム)
複数のアプリ機能を統合したものや、外部アプリと連携できるものも一般的です。SaaSは導入が容易であるため、事業部門が独自判断で導入し、情報システム部門が把握・管理しきれないケースもあります。ITインフラの適切な設計という意味でも、導入・運用するアプリの厳選は重要です。
【関連記事:SaaSとは?PaaS・IaaSとの違いも押さえ正しく導入しよう】
ミドルウェア
ミドルウェアとは、OSとアプリケーションの間に位置するソフトウェアのことです。業務で各種アプリを活用する従業員にはなじみが薄い存在ですが、プログラミング言語の実行環境やデータ連携機能などを提供し、特定のOS上で動作するアプリケーションの基盤を支えています。
代表的なミドルウェアとしては、Webサーバソフトウェア、Webアプリケーションサーバ、DBMS(データベース管理システム)などが挙げられます。これらはWebアプリケーションの役割を3つのシステムに分割する「3階層システム(Web3層アーキテクチャ)」を構成する要素として知られています。
ミドルウェアは社内の情報機器に導入することもできますが、インターネット経由でアプリの実行環境をサービスとして提供する「PaaS(Platform as a Service)」の利用も一般化しています。PaaSはOSより上の階層のミドルウェアやアプリを設定・操作でき、Webアプリの開発環境や実行環境として活用されます。
OS
OS(Operating System)とは、PCやサーバなど情報機器のシステム全体を管理する基本ソフトです。CPU・メモリ・ストレージ・入出力装置といったハードウェア資源の管理や、ネットワーク接続の制御、多くのアプリで使用する共通の機能などを提供します。PC向けのOSはWindowsやmacOS、サーバ向けのOSはLinuxやWindows Serverなどが著名です。
OSの種類やバージョンによって対応するアプリが異なり、同じアプリでも対象OSによってUIや使用できる機能が異なる場合もあるため、社内デバイスのOSの統一や一斉アップデートを計画する必要があります。
なお、Windows 10は2025年10月14日(米国時間)にサポート終了が予定されています。OSだけでなく対象OS上で動作するアプリも機能追加やセキュリティパッチなどのサポートが順次終了するため、OSおよびアプリの刷新を計画することが必要です。
デバイス
デバイスとは、コンピュータや周辺機器など情報機器の総称です。例えば以下のようなデバイスがITインフラとして活用されます。
- PC・タブレット・スマホ
- ディスプレイ・カメラ・マイク・スピーカー
- プリンターや複合機
- IPカメラや各種センサーなどIoTデバイス
業務で利用されるデバイスは多様化しており、リモートワーカーによるBYOD(私的デバイスの業務利用)が懸念される場合もあります。そのため、社内で導入・運用するデバイスを適切に管理することが重要です。
なお、Windows 11はシステム要件がやや厳しく、古いPCを買い替えなければアップグレードができない場合があります。デバイスの大量購入が必要な場合、仮想デスクトップ環境をサービスとして提供する「DaaS(Desktop as a Service)」の活用も考えられます。
サーバ
サーバとは、他のコンピュータ(クライアント)から要求や指示を受けて、機能やサービス、データを提供するコンピュータやソフトウェアのことを指します。ITインフラとして利用されるサーバには、ファイルサーバ、データベースサーバ、Webサーバ、VPNサーバなどが挙げられます。サーバ専用機の筐体には、タワー型やラックマウント型があり、高性能・省スペース・省電力を特徴とするブレード型も人気を集めています。
ただし、サーバ専用機の導入には高額な費用がかかる場合があります。コストを抑える選択肢として、インターネットを通じて仮想サーバ環境を提供する「IaaS(Infrastructure as a Service)」の利用が考えられます。IaaSでは仮想サーバのCPU、メモリ、ストレージ容量、ネットワーク帯域などを自由に設定できるため、クラウド移行を進める企業やDX推進に取り組む企業で広く採用されています。
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有線LANや無線LAN
オフィス内のデバイスやサーバはLANケーブルやWi-Fiで接続し、有線LANまたは無線LANで社内ネットワークを構築することになります。
安定したITインフラを実現するには、タブレット・スマホや各種IoTデバイスなど、Wi-Fiルーターや中継器などと無線接続をする機器も想定することが重要です。Wi-Fi機器はLANケーブルやネットワークスイッチを通じて有線LANに参加するため、負荷・障害発生や拡張性も想定してネットワークを設計しましょう。
また、「Wi-Fi接続ができるのは特定エリアのみ」とならないよう、複数台のWi-Fi親機を要所に設置し、エリアによって最適な接続先を利用できるようにすることも求められます。従業員用だけではなく来客向けにもWi-Fi接続を提供する場合、業務用Wi-Fiアクセスポイントなど、マルチSSID機能やタグVLAN機能のあるWi-Fi親機が必須です。
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インターネット回線
ITインフラとして、高速かつ安定した通信ができるインターネット回線は必須です。小規模事業者の場合は個人向け光回線も便利に活用できますが、ビジネスユースに向いた法人向けサービスを利用できません。
法人向け光回線はサーバ運用に必要な固定IPアドレスの払い出しに対応でき、法人専用のサポート窓口なども利用できます。また1拠点への複数回線の導入や、複数拠点の回線契約を1社にまとめることも可能です。
オフィスのインターネット回線が1回線のみだと、回線事業者やプロバイダの通信障害発生時やメンテナンス中、インターネット経由で利用する全てのサービスが利用不可となります。障害発生時を想定してバックアップ回線を用意したり、重要なサービスには専用回線を用いたりするなど、安定したITインフラを実現するにはインターネット回線の冗長化も重要な施策です。
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社内インフラ(ITインフラ)を設計・構築する流れ
社内インフラの設計・構築は、社内SEやインフラエンジニアが担当します。基本的な流れは以下の通りです。
1.計画:ビジネス環境の変化に応じて必要なITインフラの要件を明確化し、目的・課題・対策を定める
2.設計:ソフトウェア、ハードウェア、ネットワーク構成を具体的に設計し、最適なパートナー事業者を選定
3.構築:業務への影響を最小限に抑えながら新システムを導入し、不具合時のリカバリ手段も確保
4.動作確認:新システムの安定性を検証し、必要に応じて調整を行う
5.運用保守:システムの活用状況を監視しながら、メンテナンスや更新に対応していく
このプロセスを通じて、効率的で安定したITインフラの構築を実現します。
社内インフラ(ITインフラ)の設計・構築時に重視したいポイント
ITインフラの設計・構築時には、今後の事業展開の基盤として十分な条件を満たし、ビジネス環境の変化に耐え得るリスクマネジメントを検討することが求められます。特に重要な観点として、ネットワークセキュリティの強化や業務効率化につながるシステム刷新、BCP対策が挙げられます。
ネットワークセキュリティを強化する
ITインフラの設計・構築では、社内ネットワークのセキュリティ対策が重要です。不正アクセスやマルウェア感染、ヒューマンエラーによる情報漏えいなど、さまざまなリスクに対応する必要があります。以下のような異なる守備範囲を持つセキュリティソリューションを組み合わせることで、幅広い脅威に対応可能です。
1.ファイアウォール:ネットワーク境界で外部からの不正アクセスや内部の未許可通信を防止
2.WAF(Web Application Firewall):Webアプリの通信を監視し、不審なパケットを遮断
3.IDS(不正侵入検知システム):OSやミドルウェア層に対する通信を監視して管理者へ警告
4.IPS(不正侵入防止システム):異常通信を検知し、自動で遮断
また、コスト重視で安価なサービスを選ぶと、セキュリティ面で問題が生じる可能性があります。脆弱性の報告が多いサービスは避け、セキュリティパッチを頻繁に提供するものを選ぶことが重要です。
【関連記事:社内ネットワークの基礎知識や設計・構築のコツを初心者向けに解説】
快適に業務遂行ができるシステムに刷新する
必要な機能にアクセスしにくいシステムは、現場に混乱をもたらす可能性があるため、従業員が快適に利用できるシステムへの刷新が重要です。例えば、リモートワークを導入している企業の場合、従業員の視点から使いやすいクラウドサービスの選定や連携を優先することが求められます。また、AIを活用して業務効率化を図るサービスを導入することも効果的です。
さらに、通信障害のないネットワーク環境の整備は不可欠です。特にクラウド移行を進める企業にとって、インターネット接続やWi-Fi接続に問題があると、業務に大きな影響を及ぼす可能性があります。オフィス内のどこでもノートPCやタブレットで快適に業務を行える環境を整えることは、ITインフラの整備によって業務スタイルを変革する上で重要な要素となります。
BCP対策の観点で冗長化やクラウド移行を行う
ITインフラの設計・構築は、BCP(Business Continuity Plan)対策の一環としても重要です。BCP対策とは、自然災害やテロ・パンデミックなど不測の事態が発生した際に、重要な事業を継続できるように組織的に準備しておく取り組みを指します。
例えば、地震により契約中のインターネット回線の設備がダメージを受けると、復旧まで社内からのインターネット接続や社外からのサーバ接続ができなくなります。
こういった事態に陥っても事業を継続できるように、バックアップ回線を用意しておくことや、SaaSやIaaSなどクラウドサービスで業務システムを構築しておくことが重要です。また緊急事態の際の対応マニュアルを用意しておきましょう。
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社内ネットワーク環境を強化するWi-Fiサービスや回線冗長化ならイッツコム!
Wi-Fi接続デバイスの増加やクラウドサービス利活用の促進などに伴い、ITインフラに求められる条件が変化する中、社内ネットワーク環境の強化は重要な施策です。イッツコムは「かんたんWi-Fi」の高性能APや法人向け独自回線「イッツコム光接続サービス」により、ネットワーク課題の解決をサポートできます。
「かんたんWi-Fi」の高性能APでオフィスのどこからでも快適なWi-Fi接続
Wi-Fi機器には同時接続台数や通信距離などの制限があります。ITインフラを設計・構築する際、Wi-Fi環境の強化が必要になるケースも多いでしょう。多数のデバイスがオフィス内のどこからでも安定してWi-Fi接続できる環境を整備するには、Wi-Fi親機の増設が求められます。
イッツコムの「かんたんWi-Fi」は、高性能な業務用Wi-Fiアクセスポイント(AP)を、月額2,000円(税抜き)/台からの低コストでレンタルできるサービスです。設定済みのAPが届いたら電源コードとLANケーブルを挿すだけで使い始められ、プロによる年中無休のサポート窓口も標準付帯します。
「ハイエンド6」プランのAPは、高速・高セキュアなWi-Fi6に対応し、最大同時接続台数は1AP当たり100台です。ゲストWi-Fi機能も充実しており、ゲスト用・従業員用のWi-Fiネットワークを分離して、安全なフリーWi-Fiを提供することもできます。
回線冗長化に最適な法人向け独自回線「イッツコム光接続サービス」
Wi-Fi環境を強化しても、インターネット回線が障害を起こすと、Wi-Fi経由のインターネット接続はできなくなります。同時に、社内で運用するWebサーバなども通信不可となります。不測の事態でビジネスを停滞させないためには、インターネット回線の冗長化が重要です。
「イッツコム光接続サービス」は、イッツコム自前の光回線網による、法人向け独自回線です。フレッツ光などの障害発生時にも、下り最大2Gbpsの安定した高速回線を継続して利用できます。個人向け光回線並みの低コストで利用できるため、複数回線を併用しても、通信費の肥大化を抑えられることも強みです。
また、新しいインターネット接続方式「IPv6 IPoE」にも標準対応します。夜間や休日などトラフィック集中を起こしやすい時間帯にも安定した接続ができ、メイン回線としてもおすすめです。プロバイダ・光回線一体型のサービスのため、トラブルの際も1つの窓口でスピーディに解決できます。
【関連記事:Wi-Fi6とIPv6の違いとは?メリットや利用方法をわかりやすく解説】
まとめ
各種クラウドサービスを利活用するなどアプリの活用方法が変わると、その基盤となるITインフラの設計・構築も見直しが必要になります。SaaSの連携やOS・デバイスの更新なども重要ですが、ネットワーク接続ができなくなると、事業がストップしてしまう恐れがあります。
要所へのAP増設やインターネット回線の冗長化にも着手し、ビジネス環境の変化に耐え得るネットワークを構築しましょう。ネットワーク課題の解決をお考えなら、法人向けWi-Fiサービスや独自回線を1社でまとめて提供できるイッツコムにご相談ください。